天地明察 蝕交問題#3

天地明察 蝕交問題 つづきである。

初版と第五版では問題が違うことが発覚した。
 
====以下「天地明察」初版P142より引用
『今有図如 大小方及日月円蝕交 大小方相除シテ七分ノ三十寸 問日月蝕ノ分』

『今、図の如く、大小の正方形と、日月の円が、互いに蝕交している。大の正方形の面積を、小の正方形の面積で割ると七分の三十寸になる。日月の蝕交している幅の長さを問う』
====以上引用
 
====以下「天地明察」第五版P142より引用
『今有図如 大小方及日月円蝕交 大小方相除シテ七分ノ三十寸 問日月蝕ノ分』

『今、図の如く、大小の正方形と、日月の円が、互いに蝕交している。大の正方形の対角線を、小の正方形の対角線で割ると七分の三十寸になる。日月の蝕交している幅の長さを問う』
====以上引用

『面積』割る『面積』は『長さ』ではなく、無次元の『比率』であることは、第五版と同様。対角線は、本来、『界斜』または『界弦』と表記すべきと思われるが、これらを省略した『界』という善意の解釈をしておこう。
 
初版の場合の、『無術』の証明は、
 
2 ≠ 30/7
∴無術
 
おしまい。
 
====以下「天地明察」初版P467より引用
 過ぎ去った日々、この世を去った者たちの存在に、ただただ感無量だった。
====以上引用
 
====以下「天地明察」第五版P467より引用
(勝った)
 感無量だった。
(勝ちましたよ)

 過ぎ去った日々、この世を去った者たちの存在に、ただただ感謝した。
====以上引用
 
====以下「天地明察」初版P468L15より引用
 春海のなした改暦ののち、将軍家綱は拙劣ながらも・・・・
====以上引用
 
====以下「天地明察」第五版P469L3より引用
 春海のなした改暦ののち、将軍綱吉は拙劣ながらも・・・・
====以上引用
 
他にもありそうだけど、「多元宇宙」なんだから、問題なし。

     

— posted by nitobe at 08:42 am   commentComment [2] 

この記事に対するコメント・トラックバック [2件]

CID1273850897 天文屋 — 2010/05/15@00:28:17

この「蝕交問題」が、とんでもない大ミスであることは、西行庵さんのおっしゃるとおりです。私は、大学で物理学を教えているものですが、「天地明察」(第8版)は非常に面白く読みました。
 特に「蝕交問題」は、渋川春海と関孝和が接触する作中の重大キーポイントですが、作者のひどい創作ミスです。ネットで多くの人がミスを指摘しているのではないかとGoogleで調べたら、目下、西行庵さんの批判しか見つけられませんでした。

ミスを整理すれば(すべて西行庵さんに重複しますが)、
1)大小の正方形の対角線の比(割り算)は無名数であり、7分の30寸などと、
  「寸」を付けてはいけない。
2)上記の対角線の比は sqrt(2)であることは 暗算で分かる。7分の30と設定
  することが間違い。
3)蝕交の幅は、小正方形の一辺の長さを1とすれば、1-[sqrt(2)/2] であること
  も暗算で分かる。
 (上記3件は、数学オンチの家人もすぐ理解した)。
  春海の解答 [sqrt(7)+sqrt(23)]/4 は間違い。どこから出た数字?

文中では「複数の解答が出る出題をしてしまった」として春海が悩んだようになっているが、そのような複雑(高級)な出題ではない。単純に、「(作者が創作した)出題文が間違い」なのである。

4月28日のヌルハチさんのコメントに
>それにしてもスタッフも編集の誰もがチェックしてないというのはひどいですね
とありますが、全くその通りです。この名作・快作の(重大ポイントでの)惜しい傷です。それにしても、本の中身は面白い。

CID1273925054 2&3=nitobe — 2010/05/15@21:04:14

天文屋さん いらっしゃいませ。

>それにしても、本の中身は面白い。
そうなんですよ。冲方先生のストーリーテーラーとしての才能は凄いと思います。
他の著作は、一応SFもどきですから、設定の破綻があっても、さほど気にならないのですが、さすがにこれは一般小説なので、小道具の誤謬は致命的です。輪をかけて、突っ込みどころが満載すぎます。
小説家といえども、人の子ですから、ミスを犯すのは必然ですが、出版社の担当、校正係、その他関連部署の方々、推薦コメントを寄せた出版の専門家、作家先生、天文学の専門家、本屋さんの面々、吉川英治文学新人賞・2010本屋大賞の選考委員、絶賛のコメントを寄せる一般の方々、雁首揃えて、ほとんどすべての人の目が節穴であったという事実は「驚愕」としか言い様がありません。
冲方先生が、角川書店が、どのような決着をつけるかが、興味深々ではあります。莫大な数の単行本を回収するわけにもいかないでしょうし、誤謬があるとは口が裂けても言えないという心情も理解できます。誤謬を修正したとしても、その時点で違う作品になってしまいます。静観し、なしのつぶてを貫いていれば、そのうち話題にもならなくなり、忘れ去られる多くの出版物のひとつとなることは必至です。出版社にとっては、それでどれだけ稼げたかということのみが重要なのです。
作者、出版社共に永遠に生き恥を晒す。というところでしょうか?
渋川春海なら切腹モノですが、まあ、この程度のこと、恥と認識するタマではないのかもしれません。

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