極小植物辞典

あ:あおいあおばあおやぎあかめがしわあけびあさがおあさじあさぢあしあやめ
い:いそな
う:うきくさうぐらうづえうつぎうのはなうめ
え:えだ
お:おいきおうかおぎおざさおばなおみなえしおみなめし
か:かきつばたかしわかづらかやかるかやかわやぎかわやなぎかんとう
き:きくきささげ
く:くすだまくぬぎくららくれたけくれないくろぐわい
こ:こうようこけこころぶとこざさこずえこのてがしわこまつごようごようまつ
さ:さかきさくらさくらばなささぐりさなえさなかずらさねかずらさわらび
し:しいしきびしきみしのしば(芝)しば(柴)しょうぶしらぎくしろぎく
す:すがすげすずすすきすみれ
そ:そまぎ
た:たけたちばなたでたねたまがき
ち:ちがや
つ:つたつつじつづらつばなつまぎつゆくさつるばみ
と:ときわぎとちとちのき
な:なえしろなしなずななでしこななくさならなわしろ
に:にしきぎ
は:はぎはじばしょうはすはせおはぜのきはちすはなはなあやめはなしょうぶはなすすきはなたちばなははきぎははそはまおぎはまゆうはわきぎ
ひ:ひさかきひさぎひじきひつじひめゆり
ふ:ふじふじぎぬふじごろもふじばかまふたばふのり
ほ:ほた
ま:まがきまきまくさまくずまこもまさきますげますほませまそおまそほまつ
み:みずくきみちしばみるめ
む:むぐらむめ
も:もぐらもしおもみじもみじばもも
や:やぎやなぎやまざくらやまぶき
ゆ:ゆう
よ:よもぎ
ろ:ろうぼく
わ:わかくさわかな
ゑ:ゑぐ


つばな 【茅花】
チガヤの花穂。食べられる。[季]春。

ちがや 【茅・茅萱・〈白茅〉】
イネ科の多年草。荒れ地などに群生。高さ30〜60センチメートル。春、白い毛のある小さい花を穂のように多数付ける。葉は長い広線形で、粽(ちまき)は、昔この葉で巻いた。穂は「つばな」「ちばな」といい、火口(ほくち)に用いた。根茎は漢方で白茅根(はくぼうこん)といい、消炎・利尿・浄血剤などとする。古名、チ。

こまつ 【小松】
小さな松。若い松。

まつ 【松】
(1)マツ科の針葉樹。特に、アカマツ・クロマツ・ゴヨウマツ・ハイマツなどマツ属の植物をさす。ハイマツなどを除き、多くは高木となる。雌雄同株。葉は針形で二本・三本または五本束生。球果は「松かさ」と呼ばれる。建材・器具材・パルプ、薪炭、盆栽・庭木など用途は広い。古来、日本では、神のよる神聖な木、節操・長寿を象徴する木と尊ばれ、門松の風習があり、また松竹梅の筆頭とされる。→松の花
(2)門松。また、門松を飾っておく期間。「—の内」「—が取れる」
(3)家紋の一。松の幹・枝・葉・実を図案化したもの。
(4)たいまつ。「御さきの—ほのかにて/源氏(夕顔)」
(5)遊女の階級で「松の位(くらい)」、すなわち太夫(たゆう)。「抱(かか)への—あり/浄瑠璃・寿の門松」
(6)〔女房詞〕マツタケ。[御湯殿上(文明九)]
——が取・れる
松飾りがはずされる。松の内が過ぎる。
——は寸(すん)にして棟梁(とうりよう)の機(き)あり
松は苗木のときから棟(むね)や梁(はり)になる素質をもっている。大成する人は子供のときからすぐれたところがある、ということ。栴檀(せんだん)は双葉(ふたば)より芳(かんば)し。

も 【藻】
水中に生育する水草・海草・藻類などの総称。

もしお —しほ 【藻塩】
海藻類に海水をそそぎかけて塩分を多く含ませ、それを焼いて水にとかし、そのうわずみを煮詰めてつくる塩。また、それをつくるためにくむ海水。「朝なぎに玉藻刈りつつ夕なぎに—焼きつつ/万葉 935」

わかな 【若菜】
(1)早春に萌え出る、食用となる草の総称。
(2)正月、初の子(ね)の日(後には七日)に、摘んで食べたり贈ったりする草。春の七草の総称。平安時代、宮中で邪気を払い、万病を除くという七種の野草を摘み、内膳司から羹(あつもの)にして献上した行事が民間に広まったもの。[季]新年。→七種(ななくさ)
(3)源氏物語の巻名。第三四・三五帖。上下に分かつ。

ななくさ 【七種・七草】
(1)七つの種類。また、「いろいろ」の意にも用いる。
(2)「春の七草」のこと。[季]新年。
(3)「秋の七草」のこと。[季]秋。
(4)「七種の節句」の略。
——を囃(はや)す
七種の節句の前夜、または当日の朝、春の七草を俎(まないた)に載せ、「唐土(とうど)の鳥と日本の鳥と渡らぬ先に、七草薺(なずな)」などと唱えながら打ち囃すことをいう。当日の朝、この菜を入れて粥を炊き七種の粥として食べる。七草を打つ。薺打つ。[季]新年。

うづえ —づゑ 【卯杖】
平安時代、正月上卯の日に地面をたたいて悪鬼を払った杖。梅・桃・椿などの木を五尺三寸(約1.6メートル)に切り、五色の糸を巻いて大学寮から宮中に献上した。

たけ 【竹】
(1)イネ科タケ亜科の常緑木質植物のうち大形のものの総称。一般に小形のものはササと呼んでいる。熱帯やアジアの温帯に多い。地下茎を広げて繁殖し疎林を作るものと、稈(かん)が密生して株立ちになるものとがある。稈の節の部分から枝を出し、披針形の葉をつける。花は小穂につき、開花すると全体は枯死するが、開花の周期は非常に長い。また出始めのものは筍(たけのこ)と呼んで食用にする。稈は竿にしたり、建築・器具・楽器・工芸品の用材などとして広く利用される。モウソウチク・ハチク・マダケなど。
(2)笙(しよう)や笛・尺八など、竹を材料とした管楽器。「—を鳴らして聞かせ給へ/御伽草子・御曹子島渡」
(3)〔女房詞〕筍(たけのこ)。
——植うる日
竹を植えるのに最もよいとされる日。陰暦五月一三日。竹酔日(ちくすいじつ)。竹植え日。「降らずとも—は蓑と笠/笈日記」
——に油を塗る
〔よくすべることから〕弁舌の達者なことのたとえ。
——に雀(すずめ)
(1)取り合わせのよいもののたとえ。
(2)家紋の一。竹に雀をあしらったもの。竹を輪にして、中に雀を入れたものが多い。伊達家・勧修寺(かじゆうじ)家などの紋。
——に虎(とら)
取り合わせのよいもののたとえ。
——八月(はちがつ)に木六月
⇒木(き)六竹八塀(へい)十郎(「木」の句項目)
——を割ったよう
〔竹がまっすぐに割れることから〕気性がまっすぐなこと。素直で、悪いことのできない性格のたとえ。からたけを割ったよう。

わかくさ 【若草】
(1)芽を出して間もない草。[季]春。「—を摘む」
(2)襲(かさね)の色目の名。表は薄青、裏は濃い青。一月、二月の頃用いる。

しば 【芝】
(1)イネ科の多年草、シバ・コウライシバ・オニシバ・イトシバなどの総称。芝草。
(2)イネ科の多年草。日当たりのよい地に自生し、また芝生とされる。茎は地上をはい、よく分枝し節ごとにひげ根を出す。五、六月、長さ3〜5センチメートルの花茎を出し淡緑色の花穂をつける。ノシバ。地芝。大芝。

むめ 【梅】
「うめ(梅)」に同じ。[季]春。《—一輪一りんほどのあたゝかさ/嵐雪》「あやしき家の見所もなき—の木などには/枕草子 41」

うめ 【梅】
〔「梅」の字音「メ」に基づいてできた語〕
(1)バラ科の落葉高木。中国原産。古く日本に入り、観賞用庭木として珍重されている。葉は卵形で先がとがり、鋸歯がある。花は早春、葉に先立って開き、白色・淡紅色の五弁または重弁で芳香がある。果実は球形の核果で酸味が強く、梅干しや梅酒とする。未熟時に生食すると中毒することがある。[季]春。《二もとの—に遅速を愛すかな/蕪村》
(2)梅の果実。
(3)家紋の一。梅の花を図案化したもの。
(4)「梅襲(うめがさね)」に同じ。〔中古以降「むめ」と表記されることが多い〕
——と桜
美しい物・よい物が並んでいるさまのたとえ。
——に鶯(うぐいす)
よい取り合わせのたとえ。仲のよい間柄のたとえ。
——は食うとも核(さね)食うな中に天神寝てござる
生梅のたねには毒があるから食べてはいけないという戒め。

しば 【柴】
山野に自生する小さい雑木。また、薪や垣にするためにその枝を刈り取ったもの。そだ。しばき。「—刈り」「住吉(すみのえ)の出見の浜の—な刈りそね/万葉 1274」

こけ 【苔】
(1)〔「木(こ)毛」の意という〕古木・湿地・岩石などにへばりつくように生える、たけの低い植物。蘚苔類・地衣類・緑藻など。こけら。→苔(こけ)植物
(2)(北陸地方で)きのこ。
——が生・える
長い年月を経る。古めかしくなる。

なえしろ なへ— 【苗代】
⇒なわしろ(苗代)

なわしろ なは— 【苗代】
稲の種をまいて苗を育てる所。苗代田。田植えが機械化された現在は育苗箱が多く用いられる。なえしろ。[季]春。「—をうつ」

やぎ 【柳】
やなぎ。多く他の語と複合して用いる。「青—」「垣内(かきつ)—末(うれ)摘み枯らし我立ち待たむ/万葉 3455」〔「やなぎ」の略か。「楊」の字音に由来するとする説もある〕

やなぎ 【柳・〈楊柳〉】
(1)ヤナギ科ヤナギ属の低木、または高木の総称。シダレヤナギ・カワヤナギ・フリソデヤナギなど。[季]春。
(2)シダレヤナギの通称。
(3)襲(かさね)の色目の名。表は白、裏は青の張り裏。
(4)織り色の名。経(たて)萌葱(もえぎ)色、緯(よこ)白のもの。
(5)柳色。
(6)中世、京都にあった造り酒屋。また、そこで造った酒。美酒で知られた。柳の酒。 ——散る
秋も深まって柳の葉が散りはじめる。[季]秋。
——に受・ける
逆らわないで、なすままになる。柳に風と受け流す。やなぎにやる。
——に風
逆らわず、おだやかにあしらう。風に柳。「—と受け流す」
——に雪折れ無し
〔柳の枝はしなうので、雪が積もっても折れないことから〕柔軟なものは弱々しくみえるが、剛堅
なものよりもかえって強いたとえ。
——の下にいつも泥鰌(どじよう)は居ない
柳の下で一度泥鰌を捕らえたことがあったといっても、いつでもそこに泥鰌がいるとは限らない。偶然の好運は何度もあるものではないたとえ。
——の葉を百度(ももたび)中(あ)つ
〔「史記(周本紀)」による。楚(そ)の養由基は射術が上手で、百歩離れた所から柳の葉に百発百中したという故事から〕射術にすぐれていることにいう。
——は緑(みどり)花は紅(くれない)
(1)人工の加わっていないさま。
(2)世はさまざまであるということ。また、物事はさまざまに異なった姿を見せるが、それぞれ自然の理にのっとっているということ。
(3)春の景色の美しさの形容。
——を折る
〔漢代、長安から旅立つ人を送って覇橋(はきよう)で、柳の枝を折って別れた故事から〕旅立つ人を見送る。

あおやぎ あを— 【青柳】
(1)青々と茂った柳(やなぎ)。あおやなぎ。[季]春。
(2)バカガイのむき身。
(3)染め色の名。萌黄色。
(4)襲(かさね)の色目の名。表は青、裏は薄青。または表裏とも濃い青色。冬から春にかけて着用。
(5)催馬楽(さいばら)の一。
(6)地歌三味線組歌の一。柳川検校作曲。
(7)地歌箏曲(そうきよく)の一。通称「新青柳」。石川勾当作曲、八重崎検校箏手付。

かわやぎ かは— 【川柳】
「かわやなぎ(川柳)」に同じ。「—の根もころ見れど/万葉 1723」

かわやなぎ かは— 【川柳】
(1)川辺に生える柳。また、特に、ネコヤナギのこと。〔楊柳とも書く〕
(2)ヤナギ科の落葉低木または小高木。水辺に生える。葉は披針形。早春、葉に先だって尾状の花穂をつける。雌雄異株で、雄花の花柱は短い。
(3)茶の名の一。→せんりゅう(川柳)

やまざくら 【山桜】
(1)山中に咲く桜。
(2)バラ科の落葉高木。宮城県以西の山野に生え、栽植もされる。樹皮は濃褐色で横に裂け目がある。葉は長楕円形で無毛。春、紅褐色の新葉とともに、淡紅色の五弁花を二〜五個散房状に開く。材は家具・器具・版木用。[季]春。

はな 【花・華】
(1)種子植物の生殖器官。一定の時期に枝や茎の先端などに形成され、受精して実を結ぶ機能を有するもの。有性生殖を行うために葉と茎が分化したもので、花葉と花軸からなる。花葉は普通、萼(がく)・花冠(花弁の集合)・おしべ・めしべに分化して、花の主体を形成する。形態上の特徴は分類上の指標となる。「—が咲く」「—が散る」
(2)特定の花をさす。
(ア)春の花を代表する桜の花をさす。[季]春。「—に浮かれる」「願はくは—のしたにて春死なむ/山家(春)」〔中古後期頃に一般化した用法。現代語では「花見」「花ぐもり」など他の語との複合した形でみられる〕
(イ)古くは、百花にさきがけて咲くところから、梅の花をさした。「今のごと心を常に思へらばまづ咲く—の地(つち)に落ちめやも/万葉 1653」「春や疾(と)き—や遅きと聞き分かむ鶯だにも鳴かずもあるかな/古今(春上)」
(3)神仏に供える花や枝葉。「手向けの—」
(4)生け花。花道(かどう)。また、生け花にする材料。「お—の稽古」「—を生ける」
(5)(特に桜を対象として)
(ア)花が咲くこと。「—便り」「向つ峰(お)の若桂の木下枝(しずえ)取り—待つい間に嘆きつるかも/万葉 1359」
(イ)古くは、花を見て賞すること。花見。「尋ね来て—にくらせる木の間より待つとしもなき山の端の月/新古今(春上)」
(6)(しばしば鳥・雪・月などと対比されつつ)自然美の代表として草木に咲く花を総称していう。「蝶よ—よと育てる」
色や形の類似から、花になぞらえていう。
(1)(主としてその白さによって)雪・霜・白波・月光・灯火などを花に見たてていう語。「雪の—」
「波の—」「硫黄(いおう)の—」
(2)麹黴(こうじかび)。麹花。また、麹のこと。
花にちなんだ事物。
(1)造花。飾り花。また、散華(さんげ)に用いる紙製の蓮(はす)の花びら。
(2)〔もと露草の花のしぼり汁を原料としたところから〕(ア)青白色。また、藍(あい)染めの淡い藍色。縹(はなだ)色。はないろ。「御直衣の裏の—なりければ/大鏡(伊尹)」
(イ)薄い藍色の顔料。「頭には—を塗り/栄花(本の雫)」
(3)
(ア)芸人などに与える金品。また、芸娼妓や幇間(ほうかん)の揚げ代。花代。
〔「纏頭」とも書く。花の枝に贈り物を付けたところから〕(イ)芸娼妓や幇間の花代を計算するために用いる線香。また、それで計る時間。「—を恨み、鶏を惜(にく)み/洒落本・南遊記」
(4)花札。花ガルタ。また、それを用いた遊び。花合わせ。「—を引く」
花の美しさ・はなやかさにたとえていう。
(1)はなやかで人目をひくもの。多く女性についていう。「社交界の—」「職場の—」「両手に—」
(2)美しく貴く思うもの。また、はなやかで興趣に富むもの。「高嶺(たかね)の—」「この世の—」
(3)(「花の…」の形で、連体修飾語として)はなやかで美しいものである意を表す。「—の都」
「—の顔(かんばせ)」
(4)(多く「…が花だ」の形で、述部として用い)最もよいこと。最もよい時期。「知らぬが—だ」
「若いうちが—だ」
(5)はなやかで、そのものの特色を表しているもの。「火事と喧嘩(けんか)は江戸の—」「古代美
の—」
(6)若い男女。「箱入の—もの云はぬ病が出/柳多留 42」
(7)美しい女。また、遊女。「—に遊ばば祇園あたりの色揃へ/浄瑠璃・忠臣蔵」
(8)世阿弥の能楽論の用語。観客の感動を呼び起こす芸の魅力、おもしろさ、珍しさ。また、そ
れを追求・工夫し、感得する心の働き。
花の移ろいやすく、はかなく散るさま、また見かけだけであだなさまにたとえていう。
(1)外観。うわべ。実質を伴わないはなやかさ。「—多ければ実少なし」
(2)人の心や風俗などの変わりやすいこと。「色みえで移ろふものは世の中の人の心の—にぞ
ありける/古今(恋五)」
(3)人の心などが、うわべばかりで誠実さのないこと。「今の世の中色につき、人の心—になり
けるにより、あだなる歌はかなきことのみ出でくれば/古今(仮名序)」
(4)「花籤(はなくじ)」の略。「ほんに当る因果なら、—ばかりでおけばいいに/黄表紙・金生木」
(5)文芸論の用語。和歌・連歌・俳諧などで、意味内容を実にたとえるのに対し、表現技巧をいう。「古の歌はみな実を存して—を忘れ、近代のうたは—をのみ心にかけて、実には目もかけぬから/毎月抄」歌曲名(別項参照)。
——が咲・く
(1)植物の花が開く。開花する。
(2)盛んになる。にぎやかになる。「思い出話に—・く」
(3)時期が来て栄える。「人生に—・く」
——と散・る
満開の桜の花がすぐ散るように、潔く死ぬ。特に、戦場で死ぬことをいう。
——に=風(=嵐(あらし))
⇒月(つき)に叢雲(むらくも)花(はな)に風(かぜ)
——は折りたし梢(こずえ)は高し
手に入れる方法がない、思うようにならないことのたとえ。
——は桜木(さくらぎ)人は武士
花の中では桜が最もすぐれており、人の中では武士が最もすぐれているということ。
——は根に鳥は故巣(ふるす)に
咲いた花はその木の根もとに散ってこやしとなり、空飛ぶ鳥は巣に帰る。物事はすべてそのも
とに帰るという意。
——はみ吉野(よしの)、人は武士
桜の花は吉野がすぐれ、人は武士がすぐれているということ。
——開・く
(1)つぼみが開いて、花が咲く。
(2)長年の努力などがみのる。
(3)文化が盛んになる。「—・く天平文化」
——も恥じらう
〔美しい花さえひけ目を感じる意〕若い女性の美しさをいう語。「—一八歳」
——も実(み)もある
外観も内容もともに備わっている。名実ともにある。また、人情の機微に通じている。
——より団子(だんご)
〔花をながめて目を楽しませるより団子を食べて食欲を満たす意〕風流より実利を選ぶことのたとえ。
——を咲か・せる
(1)成功して名声を得る。「地道な努力がやがて—・せ実を結ぶ」
(2)盛んにする。はなやかにする。「昔話に—・せる」
——を添・える
美しいものの上にさらに美しさを加える。「祝賀会に—・える」
——を持た・せる
勝利や名誉をゆずる。相手をたてる。「若い者に—・せる」

こずえ —ずゑ 【梢・杪】
〔「木の末」の意〕木の幹や枝の先端のほう。

え 【枝】
えだ。「梅が—」

えだ 【枝】
(名)
(1)植物の主幹から分かれた茎。側芽や不定芽の発達したもの。「—が茂る」
(2)ものの本体・本筋から分かれ出たもの。「本筋からはずれた—の話」
(3)からだの手や足。四肢。「—を引き闕(か)きて/古事記(中訓)」
(4)一族。子孫。「北家のすゑ、いまに—ひろごり給へり/大鏡(道長)」
(接尾)助数詞。
(1)木の枝を数えるのに用いる。「一—の梅」
(2)細長い物を数えるのに用いる。「長持三十—/平家 10」
(3)〔昔、贈り物を木の枝に添えて差し出したことから〕贈り物を数えるのに用いる。「雉一—奉らせ給ふ/源氏(行幸)」
——の雪
〔晋の孫康が、枝に積もった雪を灯火の代わりにして書を読んだという「蒙求」の故事から〕苦学すること。「窓の蛍を睦び、—を馴らし給ふ心ざし/源氏(乙女)」
——を交わ・す
〔「連理(れんり)の枝」より出た語〕男女のかたい契りのたとえ。「羽をならべ、—・さむと契らせ給ひしに/源氏(桐壺)」→連理の枝
——を連(つら)・ぬ
〔「連枝」の訓読みから〕兄弟の仲が親密であること。また、仲がよいことのたとえ。「頼朝も、ついには靡く、青柳の—・ぬる御契り/謡曲・船弁慶」
——を鳴らさず
〔論衡(是応)〕天下泰平のさま。世の中の平穏無事なさま。「—ぬ御世なれや/謡曲・高砂」

さくら 【桜】
(1)バラ科サクラ属の落葉高木または低木。北半球の温帯と暖帯に分布し二〇〜三〇種がある。日本に最も種類が多く、奈良時代から栽植され、園芸品種も多い。春、葉に先立ちまたは同時に開花。花は淡紅色ないし白色の五弁花で、八重咲きのものもある。西洋実桜(みざくら)の実はサクランボといい、食用。材は器具・版木・薪炭用。重弁の花を塩漬けにして桜湯として飲み、葉は桜餅に使用。染井吉野が代表的であるが、山桜・江戸彼岸・大島桜・八重桜も各地に植えられている。日本の国花。[季]春。
(2)馬肉の俗称。
(3)「桜色」の略。
(4)露店などで、客の買い気をそそるため、客のふりをして買い物する仲間。〔「ただで見る」の意から芝居の無料見物人の意となり、そこから生じたという〕
(5)「桜襲(がさね)」の略。
(6)家紋の一。桜の花、花と枝葉をかたどったもの。

き 【木・樹】
(1)木質の幹を有する植物。低木と高木に分ける。木本(もくほん)。樹木。たちき。「—の枝」
(2)製材した材木。木材。「—の箱」
(3)(普通「柝」と書く)芝居や相撲などで用いる拍子木(ひようしぎ)。開幕・閉場などの合図に用いる。
——から落ちた猿(さる)
頼りにするものを失ってどうしてよいかわからないことのたとえ。木を離れた猿。
——静かならんと欲すれども風止(や)まず
〔韓詩外伝「樹欲レ静而風不レ止、子欲レ養而親不レ待矣」〕親孝行をしようと思うときには、すでに親はこの世にいない。親が生きているうちに親孝行をせよとの戒め。風樹の嘆(たん)。
——で鼻を括(くく)・る
〔「木で鼻をこくる」の誤用が一般化したもの。「こくる」はこするの意〕ひどく無愛想にもてなす。木で鼻をかむ。「—・ったような挨拶(あいさつ)」
——に竹を接(つ)ぐ
性質の違うものをつなぎ合わせる。調和がとれぬことのたとえ。木に竹。
——にも=草(=萱(かや))にも心を置く
ささいな物事にも恐れおののくさまにいう。
——に餅(もち)がなる
実際にありえないこと、話がうますぎることのたとえ。
——に縁(よ)りて魚(うお)を求む
〔孟子(梁恵王上)〕方法を誤れば成功できないことのたとえ。
——六(きろく)竹八(たけはち)塀十郎(へいじゆうろう)
木は陰暦六月に、竹は八月に切るのが最もよく、塀は一〇月に塗ると長持ちする、ということ。
——を見て森を見ず
事物の末梢的部分にこだわりすぎて、本質や全体をとらえられないことのたとえ。

こ 【木】
〔「木(き)」の交替形〕き(木)。多く他の語と複合して用いられる。「—立ち」「—の葉」「—の根の根ばふ宮/古事記(下)」

おいき 【老い木】
年を経た木。老木(ろうぼく)。老樹。
——に花
一度衰えたものが再び栄えることのたとえ。「—の咲く心ちする/風雅(賀)」

ろうぼく らう— 【老木】
長い年数を経た木。老樹。古木。

おうか あうくわ 【桜花】
(1)桜の花。「—爛漫(らんまん)」
(2)旧日本海軍の特別攻撃機。爆撃機に懸架して発進、火薬ロケットで滑空し、敵艦に体当たりする。

さくら-ばな 【桜花】
(名)桜の花。おうか。
(枕詞)桜の花のように美しく栄えている意で、「栄え少女(おとめ)」にかかる。「つつじ花にほえ娘子(おとめ)—栄え娘子/万葉 3305」

たね 【種】
(1)
(ア)(植物で)発芽のもととなるもの。種子(しゆし)。「—をまく」→種子(イ)動物の誕生のもととなるもの。「—つけ」「—うま」
(2)(「胤」とも書く)血統また、血統を受け継ぎ伝えていくもの。子。子孫。「落とし—」「一粒—」「—を絶やす」
(3)ある事の原因となる物事。「心配の—」「癪(しやく)の—」「喧嘩の—をまく」
(4)手品・奇術などの仕掛け。「手品の—を明かす」
(5)材料となるもの。
(ア)料理に用いる材料。「おでん—」「すし—」
(イ)話・物語・記事などの材料。「新聞—」「うわさの—」
(ウ)もととなるもの。よりどころ。「飯の—とする」「生活の—」
(エ)元金。もとで。「—銭」
(6)性質。階級。「客—」
——が割・れる
からくりや真実が明らかになる。仕掛け・たくらみがわかる。
——を宿(やど)・す
子をはらむ。妊娠する。

あおば あを— 【青葉】
(1)青々と生い茂った木の葉。[季]夏。《—して御目の雫拭はばや/芭蕉》
(2)横笛の名笛の名。小枝の生えた、平敦盛所持と伝える神戸市須磨寺蔵のものや、高倉天皇秘蔵の、別名葉二(はふたつ)などが有名。青葉の笛。

あさじ —ぢ 【浅茅】
丈の低いチガヤ。また、まばらに生えているチガヤ。

あさぢ 【浅茅】
⇒あさじ(浅茅)

すみれ 【菫】
〔花が「墨入れ(墨壺)」に似ているのでいう〕
(1)スミレ科スミレ属の植物の総称。山野や道端に自生。葉は柄が長く、披針形・三角状披針形または卵状心臓形。花は五弁花で唇弁に距があり、紫・白・黄など。ツボスミレ・キスミレ・アカネスミレなど、日本には約五〇種ある。相撲取花(すもうとりばな)。相撲取草。
(2)スミレ科の多年草。葉は三角状披針形で先端は丸い。春、葉間から高さ10センチメートル内外の花柄を出し、濃紫色の花をつける。[季]春。
(3)襲(かさね)の色目の名。表は紫、裏は薄色。二・三月着用。

さわらび 【早蕨】
(1)芽を出したばかりのわらび。[季]春。
(2)襲(かさね)の色目の名。表は紫、裏は青。三月着用。
(3)源氏物語の巻名。第四八帖。宇治十帖の一。

まこも 【真菰】
イネ科の大形多年草。水辺に群生。稈(かん)の高さ約1.5メートル。葉は長さ約1メートルの線形。秋、円錐花序上半に雌花穂、下半に雄花穂を多数つける。葉で筵(むしろ)を編む。黒穂病菌に侵された幼苗は菰角(こもづの)といい、食用とし、また眉墨(まゆずみ)とした。カツミ。コモクサ。コモ。[季]夏。《舟に乗る人や—に隠れ去る/虚子》〔「真菰の花」は [季]秋〕

かきつばた 【〈杜若〉・〈燕子花〉】
(名)〔古くは「かきつはた」〕
(1)アヤメ科の多年草。湿地に生える。ハナショウブに似るが葉は幅が広く、中脈は発達しない。高さ約70センチメートル。初夏、茎頂の苞の間に三個内外の濃青色・白色・斑入りなどの花を開く。かいつばた。かおよばな。[季]夏。《—似たりや似たり水の影/芭蕉》
(2)襲(かさね)の色目の名。表は二藍(ふたあい)、裏は萌黄(もえぎ)。または、表は薄萌黄、裏は薄紅梅。陰暦四月に用いる。
(3)家紋の一。(1)の花と葉を図案化したもの。主に、公家の紋。
(枕詞)「丹(に)つらふ」「佐紀」(地名)などにかかる。「—につらふ妹はいかにかあるらむ/万葉 1986」「—佐紀沢に生ふる菅の根の/万葉 3052」

つつじ 【〈躑躅〉】
ツツジ科ツツジ属の植物の総称。常緑または落葉性の低木。山地に自生し、公園や庭園に広く栽植される。葉は互生。四、五月、枝先に先端が五裂した漏斗形の美しい花を一〜数個つける。果実は果。園芸品種が多い。ヤマツツジ・ミヤマキリシマ・サツキなど。[季]春。

やまぶき 【山吹】
(1)バラ科の落葉低木。山地に生え、庭木ともする。茎は緑色で多数叢生(そうせい)し、高さ約1.5メートルで先は垂れる。葉は狭卵形で鋸歯がある。春、小枝の先に黄色の五弁花を一個ずつつける。果実は卵円形。園芸品種には重弁花もある。[季]春。
(2)家紋の一。山吹の花や葉を図案化したもの。水を配するものもある。
(3)「山吹色」に同じ。
(4)襲(かさね)の色目の名。表は薄朽葉、裏は黄色。春、着用する。
(5)〔山吹色であることから〕大判・小判など、金貨の異名。「—二枚取り出し/浮世草子・元禄太平記」
(6)〔女房詞〕鮒(ふな)。[大上臈御名之事]
(7)〔中世女性語〕酒。[日葡]
(8)鉱山で、採取した鉱物から金銀銅などを吹き分けること。また、その吹き分けたもの。

かんとう くわん— 【款冬】
〔「かんどう」とも〕
(1)フキの異名。
(2)ヤマブキ(山蕗)の異名。
(3)ツワブキの異名。
款冬 フキノタウ 倭俗款冬二字云山吹大誤也(文明本節用集)

ますげ 【真菅】
〔「ま」は接頭語〕菅(すげ)の美称。「—生ふる山下水に宿る夜は/千載(雑上)」

すげ 【菅】
カヤツリグサ科スゲ属の草本の総称。熱帯から寒帯に分布し、日本には二百余種がある。水辺や湿地に多く、茎は三角柱状で中実。葉は線形で多くは根生。葉で笠・蓑・縄などを作る。カサスゲ・アゼスゲ・カンスゲ・シオクグなど。スガ。

すが 【菅】
「菅(すげ)」に同じ。多く「すがごも」「すがだたみ」など名詞と複合して用いられる。「時鳥—の荒野を名のりてぞなく/藤籔冊子」

まがき 【籬】
(1)竹・柴などを粗く編んで作った垣。ませ。ませがき。
(2)遊郭で、見世(みせ)と入り口の落ち間とのあいだにある格子戸。
(3)「籬節(まがきぶし)」の略。

ませ 【籬・間狭】
(1)竹・木などで作った、低く目のあらい垣。まがき。ませがき。「朝顔の這ひまじれる—もみな散り乱れたるを/源氏(野分)」
(2)劇場などの、枡(ます)席の仕切り。

うのはな 【卯の花】
(1)ウツギの花。また、ウツギの別名。[季]夏。《—にぱつとまばゆき寝起かな/杉風》
(2)豆腐のしぼりかす。おから。きらず。
(3)襲(かさね)の色目の名。表は白、裏は萌黄(もえぎ)。四月頃に用いた。うのはながさね。

うつぎ 【空木・卯木】
ユキノシタ科の落葉低木。山野に自生。高さ1、2メートル。葉は狭長楕円形で対生する。幹は中空。梅雨の頃、白色の五弁花を円錐花序につける。垣根などに植え、材は木釘(きくぎ)・楊枝(ようじ)などにする。うのはな。

ゆう ゆふ 【〈木綿〉】
楮(こうぞ)の皮をはいで、その繊維を蒸して水に浸し、裂いて糸としたもの。幣(ぬさ)に用い、神事の際に榊(さかき)にかけて垂らす。

はなたちばな 【花橘】
(1)花の咲いている橘。また、橘の花。[季]夏。
(2)襲(かさね)の色目の名。表は赤黄色、裏は青。夏着用。
(3)橘紋の一。大きな橘の花と葉の上方に左右各六個の小さな橘を配した図柄。

たちばな 【橘】
(1)ミカン科の常緑小高木。日本原産唯一の柑橘類とされ、四国・九州・沖縄などに自生。初夏に芳香のある白色の五弁花を開く。果実は小さく、黄熟しても酸味が強く食用には向かない。紫宸殿の「右近の橘」は本種といわれる。ヤマトタチバナ。[季]秋。〔「橘の花」は [季]夏〕
(2)古来、食用とされたミカン類の総称。非時香菓(ときじくのかくのこのみ)。
(3)家紋の一。橘の花・実・葉をかたどったもの。

あやめ 【〈菖蒲〉】
(1)アヤメ科の多年草。日本の全域に自生。葉は剣状で地下茎から群がり生える。高さ約60センチメートル。五、六月頃花茎を出し頂端に径約8センチメートルの青紫色または白色のハナショウブに似た花をつける。外花被片に紫色の横脈がある。ハナアヤメ。[季]夏。〔「渓」とも書く。ハナショウブ・カキツバタは同科同属の別種、ショウブは別科〕
(2)ショウブの古名。和歌では「文目(あやめ)」にかけて用いることが多い。あやめぐさ。[季]夏。「今日さへや引く人もなきみがくれに生ふる—のねのみなかれむ/源氏(蛍)」「五月、—ふく比/徒然 19」
(3)アヤメやハナショウブの花のような青みの紫色。
——と杜若(かきつばた)
アヤメとカキツバタが見分けにくいように物の区別の付けがたいたとえ。いずれ菖蒲か杜若。
——葺(ふ)く
端午の節句の行事として軒にショウブをさす。邪気を払い、火災を防ぐという。[季]夏。

しょうぶ しやう— 【菖蒲】
(1)サトイモ科の常緑多年草。湿地に生える。葉は剣形で、長さ約70センチメートル。初夏、葉に似た花茎を立て、淡黄色の肉穂花序を単生する。花序には直立する葉状の苞がある。芳香があり、漢方で健胃薬に用いる。日本では古くから邪気を払うものとして、端午の節句に屋根に葺(ふ)いたり、鬘(かずら)に挿したりした。花菖蒲は葉形が似るが、別科の植物。そうぶ。古名アヤメ・アヤメグサ。[季]夏。《—髪粋に見らるゝ年の頃/高浜年尾》
(2)アヤメ科ハナショウブの俗名。
(3)襲(かさね)の色目の名。表は青、裏は紅梅または白。四・五月着用。そうぶ。
(4)植物セキショウの漢名。

はなあやめ 【花〈菖蒲〉】
(1)アヤメの別名。[季]夏。
(2)襲(かさね)の色目の名。表は白、裏は萌黄(もえぎ)。夏着用する。

はなしょうぶ —しやうぶ 【花菖蒲】
アヤメ科の多年草。ノハナショウブの改良種で江戸時代から栽培される。高さ80センチメートル内外。葉は剣形で、中央脈が著しく隆起。初夏、花茎の頂に紫・淡紅・白・絞りなどの大きな美しい花を開く。多くの園芸品種がある。単にショウブともいうが、サトイモ科のショウブとは別のもの。[季]夏。

くすだま 【薬玉】
(1)種々の香料を玉にして錦の袋に入れ、糸や造花で美しく飾ったもの。悪疫払いや長寿を願って、端午の節句などに柱・壁などにかけた。長命縷(ちようめいる)もこの一種。[季]夏。
(2)(1)をまねた飾り物の玉。七夕飾りや式典の飾りとし、割れると中から紙吹雪やテープ、ハトが飛び出すものもある。飾り花。「—割り」

こざさ 【小笹】
背の低い小さい笹。おざさ。

おざさ を— 【小笹】
笹の美称。「—ふく賤のまろ屋のかりの戸を/新古今(夏)」

かや 【茅・萱】
屋根を葺(ふ)く丈の高い草の総称。イネ科植物のススキ・ヨシ・チガヤ・カルカヤ・カヤツリグサ科植物のスゲなど。[季]秋。

さなえ —なへ 【《早苗》】
〔「さ」は接頭語〕苗代から田へ移し植えるころの、稲の若い苗。田植え用の稲の苗。わさなえ。[季]夏。《—とる手許の水の小揺かな/虚子》

あし 【葦・蘆・葭】
イネ科の多年草。温帯および暖帯に広く分布し、水辺に自生する。地下の長い根茎から高さ2メートル以上に達する稈(かん)(茎)を出し、群生する。葉は二列に互生し、ササの葉に似る。秋、ススキに似た大きな穂を出す。稈は簾(すだれ)やよしずにする。「あし」が「悪し」に通ずるのを忌んで、「よし」ともいう。ハマオギ。[季]秋。
——をふくむ雁(かり)
海を越える時、海上で休むのに用いるため、葦の葉を口にくわえていくという雁。→雁風呂(がんぶろ)

なら 【楢・柞・枹】
(1)コナラの別名。
(2)ブナ科の落葉または常緑の高木。コナラ・ミズナラ・ナラカシワ類の総称。

なでしこ 【撫子・〈瞿麦〉】
(1)ナデシコ科の多年草。山野、特に河原に多く自生。茎は高さ30〜50センチメートル、葉は広線形。夏から秋にかけ、茎の上部が分枝して径3センチメートルほどの淡紅色の花をつける。花弁は縁が細裂する。秋の七草の一。カワラナデシコ。ヤマトナデシコ。古名トコナツ。[季]秋。〔「瞿麦」はセキチクの漢名としても当てる〕
(2)襲(かさね)の色目の名。表は紅梅、裏は青。なでしこがさね。
(3)家紋の一。「常夏(とこなつ)」に同じ。
(4)なでるようにしてかわいがる子。花のナデシコにかけていう。「双葉に生ひし—を来る朝ごとにかき撫でて/宇津保(菊の宴)」

すすき 【薄・芒】
イネ科の大形多年草。山野の荒地に群生する。葉は叢生(そうせい)し、長い線形で縁がざらつく。秋、約1.5メートルの花茎を出し、尾花(おばな)といわれる花穂をつける。花穂には多数の細長い枝があって、白色または帯紫色の長毛のある小穂がつく。古くは葉で屋根をふいた。十五夜の月見に飾る。秋の七草の一。カヤ。[季]秋。
——の穂(ほ)にも怯(お)・じる
わずかなことにもびくびくと恐れるさまをいう語。「落ち武者は—・じる」

しの 【篠】
(1)「篠竹(しのだけ)」に同じ。
(2)紡績の中間工程で、繊維の長さをそろえて平行に並べたひも状の繊維の束。これに撚(よ)りを加えて糸にする。スライバー。
(3)「篠金物(しのがなもの)」の略。
(4)「篠笛(しのぶえ)」の略。
——を束(つか)・ねる
篠竹をたばねたように、大粒ですき間ない雨が降る。激しい雨をいう語。
——を突(つ)・く
篠竹が突き立つように雨が激しく降る。篠突く。「雨が—・く様ですし/雲は天才である(啄木)」
——を乱(みだ)・す
強い風とともに激しく雨が降る。

はす 【蓮】
スイレン科の多年生水草。古く中国から渡来し、池や水田で広く栽培される。根茎は泥中をはい、秋には末端が肥厚する。葉は円形で長い葉柄につき、径約50センチメートル。夏、水上につき出た花茎の頂に径約20センチメートルの紅色ないし白色の花をつける。花後、花托が肥大して蜂(はち)の巣に似た形となり、上面の穴に一個ずつ種子を入れる。根(蓮根(れんこん))と種子は食用。ハチス。[季]夏。→蓮の実

はちす 【蓮】
(1)〔花後の花托が蜂の巣に似ることから〕ハスの別名。[季]夏。
(2)〔浄土教で極楽浄土に往生した者は、蓮の花の中に生まれると説くことから〕特に、極楽浄土の蓮。また、極楽浄土や往生の象徴的表現。「一たびも南無阿弥陀仏といふ人の—の上にのぼらぬはなし/拾遺(哀傷)」
(3)ムクゲの別名。

まくさ 【真草】
(1)〔「ま」は接頭語〕草の美称。特に、屋根を葺(ふ)くのに用いる草。「—刈る荒野にはあれど/万葉 47」
(2)「天草(てんぐさ)」のこと。

はぎ 【萩】
(1)マメ科ハギ属の植物の総称。落葉低木または半草本で、山野の日当たりの良い乾燥地に多い。葉は互生し、三小葉から成る複葉。夏から秋にかけ、紅紫色、ときに白色の蝶形花を総状につける。ヤマハギ・ノハギ・ミヤギノハギ・マルバハギ・キハギなど。秋の七草の一。[季]秋。《低く垂れその上に垂れ—の花/高野素十》
(2)襲(かさね)の色目の名。表は蘇芳(すおう)、裏は青。秋に着用。織り色では経(たて)青、緯(よこ)蘇芳。
(3)家紋の一。萩の花や葉・茎を図案化したもの。
(4)おはぎ。ぼたもち。萩の餅。

ふじばかま ふぢ— 【藤袴】
(1)キク科の多年草。山野・川岸などに生え、また庭に植える。茎は直立し、高さ約1メートル。葉は対生で、普通三深裂する。八、九月、淡紅紫色の頭花を枝先に密につける。生乾きの時芳香がある。秋の七草の一。古名、ラニ、ラン。漢名、蘭草。[季]秋。
(2)襲(かさね)の色目の名。表裏とも淡紫色。秋に用いる。

おばな を— 【尾花】
(1)〔花の形が獣の尾に似ていることから〕ススキの花穂。また、ススキのこと。[季]秋。《折れたるがほゝけて居りし—かな/加賀谷凡秋》
(2)襲(かさね)の色目の名。表は白、裏は薄はなだ色。秋に用いる。

はなすすき 【花薄】
(1)(名)穂の出た薄。花の咲いた薄。尾花。[季]秋。
(2)(枕詞)「ほに出づ」「ほのか」にかかる。「—などかほにいでて恋ひずしもあらむ/古今(恋一)」「—ほのかに見てぞ人は恋しき/拾遺(恋二)」

かるかや 【苅萱】
伝説上の人物。筑紫の加藤左衛門繁氏。出家して苅萱と名乗って高野山にこもり、捜し訪ねて来た子の石童丸に会いながらも名をあかさなかったという。能・説経節・浄瑠璃などに脚色された。苅萱道心。

おみなえし をみなへし 【〈女郎花〉】
(1)オミナエシ科の多年草。山野に自生。高さ約1メートル。葉は対生し、羽状に全裂。夏から秋にかけて茎頂に、黄色の小さな花が傘状に群がり咲く。漢方で干した根を利尿剤とする。秋の七草の一。オミナメシ。[季]秋。
(2)襲(かさね)の色目の名。表はたて糸が青、よこ糸が黄で、裏は青または萌黄。秋に用いる。(枕詞)オミナエシの花が咲く意から、地名「佐紀」にかかる。「—佐紀沢に生ふる花かつみ/万葉 675」

おみなめし をみなめし 【〈女郎花〉】
オミナエシの別名。[季]秋。

おぎ をぎ 【荻】
イネ科の多年草。原野の水辺に群生する。高さ2メートル内外。茎の下部は露出する。花穂はススキに似るが、大形で小穂に芒(のぎ)がない。メザマシグサ。ネザメグサ。[季]秋。

ほ 【穂】
(1)稲や麦、薄(すすき)などの長い花軸の先に花や実が密集して付いたもの。「—が出る」「麦の—」
(2)とがったものの先。「筆の—」
(3)接ぎ木・挿し木に使う芽の付いた小枝。さしほ。つぎほ。
——に出(い)・ず
(1)穂が出る。穂先に実を結ぶ。「今よりは植ゑてだにみじ花薄—・づる秋はわびしかりけり/古今(秋上)」
(2)表にあらわれる。人目につくようになる。「包めどわれも—・でて、尾花招かば留まれかし/謡曲・通小町」
——に穂が咲・く
稲がよく実る。豊作である。

よもぎ 【蓬・艾】
(1)キク科の多年草。各地の山野に見られ、高さ約1メートル。葉は楕円形で羽状に深裂し、裏に白毛がある。若葉は特に香りがあり、餅に搗(つ)き込んで草餅とするので餅草ともいう。秋、茎頂に小頭花を円錐状につけ、生長した葉から灸に用いる「もぐさ」を作る。[季]春。
(2)襲(かさね)の色目の名。表は淡萌黄(もえぎ)、裏は濃い萌黄、また、表白、裏青とも。夏着用。

きく 【菊】
(1)キク科の多年草。葉は卵形で波状に切れ込み、鋸歯がある。頭花は大小様々で小菊・中菊・大菊の別があり、一重また八重。色は白・黄・赤など多様。主に秋に咲く。古く中国から渡来したとされ、観賞に供されてきた。特に近世以降、多くの栽培品種が育成された。花弁を食用とするものもある。[季]秋。《—の香や奈良には古き仏たち/芭蕉》
(2)紋・模様の名。菊の花や葉をかたどったもの。→菊花(きくか)紋
(3)襲(かさね)の色目の名。表は白、裏は蘇芳(すおう)。裏は青・紫も。秋に着用。菊襲(きくがさね)。

ますほ 【真赭】
「まそお」に同じ。「深き—の色に染めずは/山家(秋)」

まそほ 【真赭】
⇒まそお(真赭)

まそお —そほ 【真赭】
〔「ま」は接頭語〕
(1)赤い土。顔料にした。「丹生(にう)の—の色に出て/万葉 3560」
(2)赤い色。ますお。「糸薄—の色に露や染むらむ/長方集」

こうよう —えふ 【紅葉】
(名)スル秋、落葉に先だって葉が紅色に変わる現象。葉柄の基部に離層が形成されて、移動できない糖類が赤色のアントシアンに変わるために起こる。カエデ属に特に著しい。「全山—する」

もみじ もみぢ 【《紅葉》・〈黄葉〉】
(名)スル〔動詞「もみず」の連用形から〕
(1)〔古くは「もみち」〕秋の終わりごろ、木の葉が赤や黄などに変わること。また、色づいた葉。[季]秋。「山々が美しく—する」
(2)イロハモミジおよびその近縁のカエデ類の別名。
(3)「紅葉襲(がさね)」に同じ。
(4)鹿の肉の俗称。
(5)家紋の一。「楓(かえで)紋」の別名。
——のような手
幼児の小さくかわいい手をもみじにたとえた語。
——を散ら・す
(少女などが)恥じらって顔を赤くする。「さっと顔に—・した」

もみじ-ば もみぢ— 【〈紅葉〉・〈黄葉〉】
紅葉・黄葉した草木の葉。カエデの葉のことが多い。

しらぎく 【白菊】
(1)白い花を咲かせる菊。また、その花。しろぎく。[季]秋。
(2)襲(かさね)の色目の名。表は白、裏は蘇芳(すおう)。九・一〇月頃着用。

しろぎく 【白菊】
「しらぎく(白菊)」に同じ。

うぐら 【葎】
⇒むぐら(葎)

むぐら 【葎】
野原や荒れた庭などに繁茂する雑草の総称。ヤエムグラ・カナムグラなど。うぐら。もぐら。「—延(は)ふ賤(いや)しきやども/万葉 4270」

もぐら 【葎】
植物ムグラの異名。

つた 【蔦】
(1)ブドウ科のつる性落葉木本。日本・朝鮮・中国に分布。巻きひげには吸盤があり、山野の岩や樹に着生する。葉は円心形で浅く三裂し、光沢がある。夏、葉腋に黄緑色の小花をつけ、液果は小球形で紫黒色に熟す。秋の紅葉が美しいので、家屋の外壁や石垣にはわせたり、盆栽にして観賞する。ナツヅタ。[季]秋。
(2)家紋の一。蔦の葉・蔓(つる)・花をかたどったもの。蔦・蔦花・中陰蔦・結蔦など。

くれない —なゐ 【紅】
〔「呉(くれ)の藍(あい)」の転〕
(1)鮮やかな赤色。紅花の汁で染めた色。「—の薔薇(ばら)」「—に染まる」
(2)ベニバナ。末摘花(すえつむはな)。「—の花にしあらば衣手に染め付け持ちて行くべく思ほゆ/万葉 2827」
——は園生(そのう)に植えても隠れなし
〔紅は紅花(べにばな)〕すぐれた者はどんな所にいても目立ってみえる、の意。「壁に耳岩に口といふ事あり。—と申しければ/義経記 2」

さなかずら —かづら 【真葛】
(1)(名)サネカズラの古名。「—の根を舂(つ)き、其の汁の滑(なめ)を取りて/古事記(中訓)」
(2)(枕詞)つるが伸びて、一度分かれてもまた交差することから、「後(のち)もあふ」にかかる。「—後も逢はむと/万葉 3280」

さねかずら —かづら 【真葛・実葛】
(1)(名)マツブサ科のつる性常緑低木。山地に生え、また庭木や盆栽とされる。樹皮の粘液を髪油の材料としたので美男葛(びなんかずら)の別名がある。葉は長楕円形で、光沢がある。夏、葉腋に黄白色の小花をつける。果実は球状の小液果で、赤く熟す。古名サナカズラ。[季]秋。
(2)(枕詞)「さなかずら」に同じ。「いや遠長く」「後(のち)もあふ」にかかる。「—後も逢はむと/万葉 207」

まくず 【真葛】
〔「ま」は接頭語〕植物クズの美称。[季]秋。「—延(は)ふ夏野/万葉 1985」

くれたけ 【呉竹】
〔中国の呉(ご)から渡来したものという〕淡竹(はちく)の異名。「—は葉細く河竹は葉広し/徒然200」

たまがき 【玉垣】
神社などの周囲に設ける垣根。瑞垣(みずがき)。斎垣(いがき)。

ははき-ぎ 【帚木】
(1)ホウキグサの別名。[季]夏。
(2)信濃国の薗原にあって、遠くから見ればほうきを立てたように見え、近寄ると見えなくなるという伝説の木。情があるように見えて実のない人、また会えそうで会えないことなどにたとえる。
「—の心を知らで園原の道にあやなくまどひぬるかな/源氏(帚木)」
(3)(はじめの二音が同音であるところから)母にかけていう。「大后の宮…日の本には、—と立ち栄えおはしましてより/栄花(駒競べの行幸)」
(4)源氏物語の巻名。第二帖。

はわきぎ ははき— 【帚木】
⇒ははきぎ(帚木)

ははそ 【柞】
(1)コナラなど、ブナ科コナラ属の植物の別名。[季]秋。
(2)母(はは)の意にかけて用いる。「時ならぬ—の紅葉散りにけりいかに木(こ)の下(もと)さびしかるらむ/拾遺(哀傷)」

にしき-ぎ 【錦木】
(1)ニシキギ科の落葉低木。高さ約1.5メートル。枝に四列のコルク質の翼(よく)がある。葉は楕円形。初夏、淡緑色四弁の小花をつける。紅葉が美しいので庭木ともされる。晩秋、果実が熟して割れ、赤い皮のある種子を現す。[季]秋。〔「錦木の花」は [季]夏〕
(2)五色に彩った30センチメートルほどの長さの木。男が恋する女の家の戸口に夜ごとに一本ずつ立ててゆき、女は同意するときこれを中にしまう。染め木。「—はたてながらこそ朽ちにけれ/後拾遺(恋一)」

みちしば 【道芝】
(1)道端の芝草。路傍の草。
(2)チカラシバの異名。
(3)道案内。恋の手引き。「その—をするにつけても/とはずがたり 1」

ときわ-ぎ ときは— 【常磐木】
松などのように、葉が一年中緑色を保つ樹木。常緑樹。

あさがお —がほ 【朝顔】
(1)ヒルガオ科のつる性の一年草。つるは左巻き。多くは三裂した葉をつける。夏から初秋にかけての早朝、漏斗形の花を開き、昼前にしぼむ。熱帯アジア原産。日本には奈良時代に薬草として中国から伝来。江戸後期に観賞植物として急速に広まり、多くの改良品種が作り出された。種子を牽牛子(けにごし)といい、漢方で利尿剤・下剤とする。牽牛花。[季]秋。《—に釣瓶とられて貰ひ水/千代》
(2)漏斗形のもの。特に、男の小便用の便器。
(3)襲(かさね)の色目の名。表・裏ともに縹(はなだ)または空色。老人が秋に用いる。
(4)キキョウの異名。[新撰字鏡]
(5)ムクゲの異名。[名義抄]
(6)朝の寝起きの顔。「野分のあしたの御—は心にかかりて恋しきを/源氏(藤袴)」
(7)焼き麩(ふ)をいう近世女性語。「ぼたもちを萩の花、麩焼(ふのやき)を—/評判記・色道大鏡」
(8)源氏物語の巻名。第二〇帖。
——の花一時(ひととき)
〔朝顔の花が、咲いてからわずかの時間でしぼむことから〕物事の衰えやすいこと、はかないことのたとえ。槿花(きんか)一日の栄。

ふじぎぬ ふぢ— 【藤衣】
⇒ふじごろも(藤衣)

ふじごろも ふぢ— 【藤衣】
(1)藤づるなどの繊維で織った織り目の粗い粗末な衣類。ふじのころも。序詞として、衣を織るということから「折れる」を、織り目の粗いことから「間遠に」を、衣がなれることから「なる」を導き出す。「—なれはすれどもいやめづらしも/万葉 2971」
(2)麻で作った喪服。ふじのころも。

みずくき みづ— 【水茎】
〔「みずぐき」とも。「みずみずしい茎」の意。筆をそれにたとえたものか〕
(1)筆跡。また、書かれた文字。
(2)筆。「涙の—に先に立つ心地して/源氏(夕霧)」
(3)手紙の文。「年を経てかく—やいづちゆくらむ/宇津保(祭の使)」

ひめゆり 【姫〈百合〉】
ユリ科の多年草。西日本の山地に自生。観賞用に栽培。高さは約60センチメートル。初夏、茎頂に径約6センチメートルの広漏斗形の花を二、三個上向きにつける。花色は黄赤色、濃赤色まれに黄色で、斑点がある。山丹(さんたん)。[季]夏。

ふじ ふぢ 【藤】
(1)マメ科フジ属の植物の総称。
(2)マメ科のつる性落葉木本。山野に自生し、また観賞用に植える。つるは右巻き。葉は奇数羽状複葉。四、五月頃長い総状花序を垂れ、紫色・白色などの蝶形花をつける。長い莢(さや)の実がなる。つるは丈夫で縄や細工物に利用。ノダフジ。[季]春。《草臥て宿かる比や—の花/芭蕉》〔「藤の実」は [季]秋〕→ヤマフジ
(3)家紋の一。藤の花や葉・枝をかたどったもの。
(4)襲(かさね)の色目の名。表は薄紫、裏は青。ふじがさね。
(5)「藤色」の略。「—の末濃(すそご)の織物の御几帳に/栄花(御裳着)」

ひつじ ひつぢ 【〓:(禾+魯)・稲孫】
〔室町時代のころまでは「ひつち」〕刈り取ったあとの株からのび出す稲。ひこばえ。[季]秋。「刈れる田に生ふる—のほに出でぬは/古今(秋下)」

つづら 【葛・〈葛籠〉】
(1)ツヅラフジのつるを編んで作った、衣服などを入れる蓋(ふた)付きのかご。のちには竹やひのきの薄片で網代(あじろ)に編み、上に紙を貼って柿渋・漆などを塗ったものも作られるようになった。《葛籠》
(2)ツヅラフジなど、山野に生えるつる性の植物。《葛》「上野(かみつけの)安蘇山—野を広み/万葉 3434」
(3)襲(かさね)の色目の名。表は青黒色、裏は淡青色。《葛》

すず 【篶・篠】
(1)「すずたけ(篠竹)」の異名。「今夜誰—吹く風を身にしめて/新古今(秋上)」
(2)(1)のたけのこ。すずのこ。「此の—は鞍馬の福にてさぶらふぞ/著聞 18」

このてがしわ —がしは 【児手柏・側柏】
ヒノキ科の常緑針葉小高木。中国原産。渡来は古く、庭園などに栽植する。枝は平らに分枝しててのひらを立てたように並び、裏表の区別がない鱗片葉を互生。先のとがった鱗片数対から成る球果をつける。漢方で葉と仁を薬に用いる。
——のふた面(おもて)
〔コノテガシワの葉が表裏定めがたいことから〕物事に両面あって、いずれとも定めがたいこと。「—、儘ならぬこそ恨みなれ/浄瑠璃・廿四孝」

まさき 【正木・柾】
ニシキギ科の常緑低木。海岸地方に生え、庭木や生け垣とする。高さ約4メートル。枝は緑色。葉は卵形で、質厚く光沢がある。夏、開花。果実は球形で、熟すと裂けて、黄赤色の種子を現す。〔「柾の実」は [季]秋〕

まき 【真木・槙・】
(1)イヌマキ・コウヤマキの別名。特に、イヌマキをいう。
(2)〔よい木の意〕木材としてすぐれたスギやヒノキの総称。「奥山の—の板戸を押し開き/万葉2519」
——立つ山
杉・檜(ひのき)などの茂る山。「み吉野の—ゆ見下ろせば/万葉 913」

くらら 【〈苦参〉】
マメ科の多年草。山野の草地に多い。高さ約1メートル。葉は狭卵形の小葉多数からなる羽状複葉。夏、茎の先に長い花穂を出し、淡黄色の花を多数つける。根を健胃薬や駆虫薬に用いる。クサエンジュ。

はまおぎ —をぎ 【浜荻】
(1)葦(あし)の異名。「難波の蘆は伊勢の—/菟玖波(雑三)」
(2)浜辺に生える荻。「神風の伊勢の—折り伏せて/万葉 500」

たで 【蓼】
(1)タデ科タデ属に属する植物の総称。イヌタデ・ヤナギタデ・サクラタデ・オオケタデなど。
(2)ヤナギタデの一変種。辛みがあり、食用。刺身のつま、蓼酢にする。ベニタデ。アカタデ。[季]夏。〔「蓼の花」は [季]秋〕
——食う虫も好き好き
辛い蓼を食う虫もあるように、人の好みはさまざまであるということ。

ひさかき 【】
ツバキ科の常緑低木。山地に生え、庭木とされる。よく分枝し、葉は狭い卵形で鈍い鋸歯があり、質厚く光沢がある。雌雄異株。春、葉腋(ようえき)に白色の小花を少数つける。サカキの代用として枝葉を神前に供える。ヒサギ。〔「の花」は [季]春〕

ひさぎ 【楸・久木】
アカメガシワまたはキササゲの古名。ひさき。

あかめ-がしわ —がしは 【赤芽柏】
〔新芽が紅色なのでいう〕トウダイグサ科の落葉高木。本州中部以西の山野に自生。高さ10メートルに達する。葉は卵円形で、浅く三裂し、夏、小形の黄花を円錐花序につける。材は軟らかく、箱・床柱・下駄などに用いる。昔、この葉に食物を載せたので御菜葉(ごさいば)・菜盛(さいもり)花の別名がある。アカガシワ。

きささげ 【木〈豆〉・楸】
ノウゼンカズラ科の落葉高木。中国中南部原産。葉は大形で、キリの葉に似る。夏、枝先に淡黄色の花を密につける。果実は細長く垂れ、ササゲのさやに似る。果実を食用、また利尿薬にする。キササギ。

うきくさ 【浮(き)草・萍】
(1)池や沼の水面に浮かんで生える水草の総称。
(2)ウキクサ科の多年生の水草。池沼などの水面に浮かぶ。茎は扁平で、倒卵形。葉がなく、中央付近から数本の根が出る。ナキモノグサ。カガミグサ。ネナシグサ。[季]夏。
(3)〔浮き草が風の動きのままに水面をあちこち漂うことから〕生活が不安定で落ち着かないことのたとえ。「—のような生活を送る」

はまゆう —ゆふ 【浜〈木綿〉】
ヒガンバナ科の常緑多年草。暖地の海岸の砂浜に生え、栽培もされる。葉は肉質で根生し、オモトの葉に似る。夏、高さ約70センチメートルの太い花茎の先に香りのよい白花を十数個開く。花被片は細長くそり返る。ハマオモト。[季]夏。

つゆくさ 【露草】
(1)ツユクサ科の一年草。畑や道端などに自生。高さ20センチメートル内外。葉は互生し、広披針形で葉鞘がある。七〜九月、二つ折れになった苞(ほう)の間から青色の花が次々と咲く。花は一日花で、三個の花弁のうち二個が大きい。古名ツキクサ。青花。藍花。移し草。鎌柄(かまつか)。帽子花。蛍草(ほたるぐさ)。[季]秋。《—のをがめる如き蕾かな/松本たかし》→大帽子花
(2)露の置いた草。

ばしょう —せう 【芭蕉】
(1)バショウ科の大形多年草。中国原産。古く渡来し、庭園などに栽植される。葉柄が長く、基部は鞘(さや)となって互いに巻き合い、高さ4、5メートルの幹(仮茎)となる。葉身は長さ約2メートルの長楕円形で、羽状に細い脈があり破れやすい。夏、黄褐色の苞の腋に淡黄色の筒状花を多数つける。仮茎の繊維を布や紙にする。はせを。[季]秋。〔「芭蕉の花」は [季]夏〕
(2)「芭蕉梶木(かじき)」の略。

はせお —せを 【芭蕉】
「ばしょう(芭蕉)」の古い表記。

そまぎ 【杣木】
(1)杣山に生えている樹木。
(2)杣山から切り出した木。

いそな 【磯菜】
磯辺に生えて食用となる植物の総称。いそなぐさ。「—つむめざし濡らすな/古今(大歌所)」

ふたば 【二葉・嫩・双葉】
(1)二つの子葉。植物が芽を出した時に見られる二枚の葉。双子葉植物は一般に子葉は二枚である。[季]春。《大いなる—もたげぬ庭最中/加賀谷凡秋》
(2)人のごく幼い頃。また、物のごく初期。「—の頃から見守る」

ごよう —えふ 【五葉】
「五葉松(ごようまつ)」の略。

ごよう-まつ —えふ— 【五葉松】
マツ科の常緑高木。山地に生え、また庭木・盆栽とする。樹皮は暗褐色。針形の葉が五本ずつ束になってつく。松かさは卵状長楕円形。ゴヨウノマツ。ヒメコマツ。

はじ 【〈黄櫨〉】
(1)ハゼノキの別名。「—の紅葉いま色づく/宇津保(楼上・下)」
(2)襲(かさね)の色目の名。表は赤、裏は黄。表黄、裏淡萌黄とも。九月から一一月に着用。

はぜのき 【櫨の木・〈黄櫨〉】
(1)ウルシ科の落葉高木。沖縄以南、南アジアに分布。採蝋(ろう)のために各地で栽植される。樹皮は灰褐色。葉は大形の羽状複葉。雌雄異株。五月頃、淡黄色の小花を円錐状につける。紅葉が美しい。琉球櫨。ハジウルシ。ハジノキ。ハゼ。〔「櫨の実」「櫨紅葉」は [季]秋〕
(2)ヤマハゼの別名。

くぬぎ 【櫟・椚・橡・櫪】
ブナ科の落葉高木。雑木林に多い。葉は狭長楕円形で縁に鋸歯(きよし)がある。秋、球形の「どんぐり」がなる。どんぐりの皿には線形の鱗片(りんぺん)が多数つく。材をシイタケ栽培の原木に用い、また薪炭材とする。樹皮は染料に用いる。古名ツルバミ。

つるばみ 【橡】
〔上代は「つるはみ」か〕
(1)クヌギの古名。また、どんぐりの古名。
(2)どんぐりの実やかさの煎汁(せんじゆう)で染めた色。
(ア)古代は鉄媒染による黒に近い灰色で、身分の低い人の衣の色。平安期には茜(あかね)を加えて、四位以上の人の袍(ほう)の色となる。「紅はうつろふものそ—のなれにし衣になほ及(し)かめやも/万葉 4109」
(イ)喪服の色。また、喪服。「衣の色いと濃くて—の喪衣一かさね/源氏(夕霧)」

とち 【橡・栃】
⇒とちのき(橡)

とちのき 【橡・栃】
トチノキ科の落葉高木。山地の沢近くに自生、また庭木・街路樹とすることもある。葉は大形の掌状複葉で長い柄につく。五月頃、枝先に円錐花序を立て、白色で紅斑のある四弁花を多数つける。果実は倒卵円形で、クリに似た赤褐色の種子が一個ある。種子からデンプンを採り、材は家具や器具に用いる。マロニエは近縁種。とち。〔「橡の花」は [季]夏、「橡の実」は [季]秋〕

ほた 【榾】
〔「ほだ」とも〕
(1)囲炉裏や竈(かまど)でたく薪(たきぎ)。掘り起こした木の根や樹木の切れはし。ほたぐい。ほたぎ。[季]冬。《—煙顔をそむけて手で払ふ/池内友次郎》
(2)大きな材木。また、地面に倒れて朽ちた樹木。[日葡]

ささぐり 【小栗】
「柴栗(しばぐり)」に同じ。[季]秋。「山風に峯の—はらはらと庭に落ち敷く大原の里/山家(雑)」

つまぎ 【爪木】
〔爪先で折る木〕たきぎにするために折り取った細い枝。たきぎ。

あおい あふひ 【葵】
(1)アオイ科の植物、タチアオイ・ゼニアオイ・モミジアオイなどの総称。[季]夏。
(2)フタバアオイのこと。カモアオイ。
(3)フユアオイの古名。「延(は)ふ葛(くず)の後も逢はむと—花咲く/万葉 3834」
(4)「葵襲(あおいがさね)」に同じ。
(5)家紋の一。フタバアオイの葉を図案化したもの。賀茂神社の神紋に由来する。葵巴(あおいどもえ)は徳川氏の紋。→葵巴
(6)源氏物語の巻名。第九帖。賀茂祭見物の車争いで六条御息所(みやすどころ)の恨みを買った葵の上は、産褥(さんじよく)をその生き霊に悩まされて急死する。

さかき 【榊・賢木】
〔栄える木の意〕
(1)神域に植える常緑樹の総称。また、神事に用いる木。
(2)ツバキ科の常緑小高木。暖地の山中に自生。高さ約10メートル。葉は互生し、長楕円状倒卵形。濃緑色で質厚く光沢がある。六、七月、白色の小花を開く。枝葉を神事に用いる。〔「榊の花」は [季]夏〕→ひさかき
(3)源氏物語の巻名。第一〇帖。

しきび 【樒・】
植物シキミの別名。

しきみ 【樒・】
モクレン科の常緑小高木。山中に自生。また、墓地などに植える。葉は長楕円形で光沢がある。四月頃、淡黄白色の花を開き、秋、星形の果実を結ぶ。果実は有毒。全体に香気があり、仏前に供え、葉・樹皮から線香・抹香を作り、材は数珠などとする。コウノキ。マッコウギ。ハナノキ。シキビ。〔「樒の花」は [季]春〕

ふのり 【布〈海苔〉・〈海蘿〉・〈鹿角菜〉】
(1)紅藻類カクレイト目の海藻。潮間帯の岩礁に群落を作る。フクロフノリ・ハナフノリ・マフノリなどの種類があり、藻体はいずれも軟骨質で枝分かれが多い。[季]夏。
(2)(1)を天日にさらして乾燥したもの。水を加えて煮て糊として、織物の糸や絹布の洗い張り、捺染(なつせん)などに用いる。

みるめ 【〈海松〉布・〈水松〉布】
海草ミルの別名。和歌などで「見る目」にかけ用いられることが多い。「—かる方やいづこぞさをさして我に教へよあまの釣舟/伊勢 70」

ひじき 【〈鹿尾菜〉・〈羊栖菜〉】
褐藻類ヒバマタ目の海藻。北海道南部から九州までの沿岸の潮間帯下部の岩上に生育。主枝は円柱形で、長さ20センチメートル〜1メートル。長さ3〜4センチメートルの小枝を多く出す。根は繊維状根。春から初夏、繁茂し、採集乾燥して食用とする。[季]春。

こころぶと 【心太】
(1)植物のテングサ。[和名抄]
(2)ところてん。「—のやうなる物生じたりければ/沙石 5」

もも 【桃】
(1)バラ科の落葉小高木。中国北部原産。果樹および花木として栽培。葉は披針形で互生する。春、淡紅・濃紅・白などの五弁または重弁花を開く。核果は球形で大きく、ビロード状の毛がある。果肉は柔らかく多汁で甘い。つぼみや種子を漢方で薬用とし、葉は浴湯料に、樹皮は染色に用いられる。[季]秋。〔「桃の花」は [季]春〕
(2)「桃の節句」の略。
(3)「桃割れ」の略。
——栗(ももくり)三年柿(かき)八年
芽を出してから桃と栗は三年で、柿は八年で実を結ぶ。

しい しひ 【椎】
ブナ科の常緑高木。ツブラジイ・スダジイの総称。関東以西の暖地に自生し、大木・古木となる。葉は革質で長円形。雌雄同株。果実はどんぐり状で食用になる。材は建材・家具材、椎茸の原木などとする。樹皮は染色に用いる。シイノキ。シイガシ。

かしわ かしは 【柏・槲・】
(1)ブナ科の落葉高木。山地や寒地の海岸に生える。葉は倒卵形で、波状の大きな鋸歯がある。雌雄同株。五月に葉とともに開花し、雄花は長い尾状花序をなして下垂し、雌花は少数ずつつく。実はどんぐり状の堅果。樹皮を染料とし、葉は大きく古来食物を包むのに用いる。カシワギ。モチガシワ。
(2)「柏餅」の略。
(3)家紋の一。柏の葉を図案化したもの。
(4)飲食物を盛るための木の葉。食器。「大御酒の—を握(と)らしめて/古事記(中訓)」

なし 【梨】
(1)バラ科の落葉高木。ヤマナシの改良品種で日本では古くから果樹として栽培。葉は卵円形。花は白色五弁。果実は球形で八、九月に熟す。果肉にはざらざらした石細胞があり、多汁で甘い。長十郎・二十世紀・菊水などの品種がある。有(あり)の実。[季]秋。〔「梨の花」は [季]春。《—の花既に葉勝や遠みどり/富安風生》〕→山梨(やまなし)
(2)バラ科ナシ属の落葉高木ないし低木の総称。(1)のナシのほか、西洋ナシ・中国ナシなどがある。
——の礫(つぶて)
〔「投げた小石のように帰ってこない」の意。「梨」は「無し」にかけたもの〕返事のないこと。たよりのないこと。「いくら問い合わせても—だった」

なずな なづな 【薺】
アブラナ科の越年草。畑や道端に多い。高さ10〜40センチメートル。根出葉は羽状に分裂。春、茎頂に長い総状花序を立て、四弁白色の小花をつけ、のち扁平な三角形の果実を結ぶ。春の七草の一。果実は三味線の撥(ばち)に似、茎から少しはがして垂れ下げ、くるくる回すとペンペンと音を出すので、バチグサ・ペンペングサともいう。[季]新年。〔「薺の花」は [季]春〕
——打・つ
「七草(ななくさ)を囃(はや)す」に同じ。[季]新年。

ゑぐ => くろぐわい

くろぐわい —ぐわゐ 【黒〈慈姑〉】
 カヤツリグサ科の水生多年草。茎は太く直立して叢生し、高さ約60センチメートル。地下茎の先に生ずるクワイに似た塊茎は食べられる。

あけび 【〈木通〉・〈通草〉】
アケビ科のつる性落葉低木。山地に自生。葉は五枚の小葉から成る。四月ごろ、薄紫色の小花が咲く。果実は楕円形で、秋、熟すと縦に裂ける。果肉は甘く食べられる。葉が三小葉から成るものをミツバアケビという。つるを利用して、椅子(いす)や細工物などを作る。木部は利尿・鎮痛剤とする。[季]秋。〔「あけびの花」は [季]春〕

かずら かづら 0 【▼葛/▼蔓】
(1)つる性植物の総称。つるくさ。かずらぐさ。
(2)桶(おけ)のたが。[物類称呼]


引用:
大辞林 第二版(三省堂)