Title  十訓抄  Subtitle  下 第八  Description 西行法師、男なりける時、かなしくしけるむすめの三四ばかりなりけるが、重く煩ひて限りなりけるころ、北院の北面の者ども、弓射てあそびあへりけるに、いざなはれて、心ならずのゝしり暮しけるに、郎等男の走り來て、耳にものをさゝやきければ、心しらぬ人は何とも思はれず、西住法師、いまだ男にて源兵衞尉とて有りけるに、目を見合て、此事こそ既にと打云て、人にも知らせず、さりげなくて、聊かの氣色もかはらでゐたりし、有難き心なりとぞ、西住、後に人に語りける。  Note じっくんしょう —せう 【十訓抄】 説話集。三巻。菅原為長編、六波羅二臈左衛門入道編などの説があるが未詳。1252年成立。一〇項に分けて、中国説話を含む二百八十余の教訓的な説話を収録したもの。先行説話集から伝承した話が多い。じっきんしょう。 すがわら-のためなが すがはら— 【菅原為長】 (1158-1246) 平安末期・鎌倉初期の学者。大学頭菅原長守の子。正二位参議・大蔵卿・文章博士。有職故実・和歌・書などに長じる。編著「文鳳鈔」「国史綱要」「帝王系図」など。 大辞林 第二版  End  底本::   著名:  西行全集 第二巻   校訂:  久曾神 昇   発行者: 井上 了貞   発行所: ひたく書房   初版:  1981年02月16日 第 1刷発行  入力::   入力者: 新渡戸 広明(info@saigyo.net)   入力日: 2001年03月24日  校正::   校正者:   校正日: $Id: jyukkun.txt,v 1.6 2020/01/06 03:45:05 saigyo Exp $