Title  桐火桶  Description                      西上人 吉野山やがて出でじと思ふ身を花散りなばと人やまつらむ  われ身をよそにおく亊、花の爲にあらず。あさきに似てかへりて深し。 津の國の難波の春は夢なれやあしの若葉に風渡るなり  かねて申し侍りぬ はかなくぞあすの命をたのみける昨日をすぎし心ならひに  是人間の有樣かやうに見えて。  此の人の歌の體を申さば、えもいはず盛んなる花の枝なびく程なるに、春雨うちそゝぎ、まどの霞うすく立ちふたり侍るに、おとなしやかなる卿相の、けふそくに寄りかゝりて、獨りながめたるなどや申すべき。  End  底本::   著名:  西行全集 第二巻   校訂:  久曾神 昇   発行者: 井上 了貞   発行所: ひたく書房   初版:  1981年02月16日 第 1刷発行  入力::   入力者: 新渡戸 広明(info@saigyo.net)   入力日: 2001年03月29日  校正::   校正者:   校正日: $Id: kirihi.txt,v 1.5 2019/07/09 02:30:53 saigyo Exp $