Title 高僧和讚 【一右】 【空白】 【一左】  Title 高僧和讚 愚禿親鸞作  Subtitle 龍樹菩薩 十首 【二右】  0001 ○本師龍樹菩薩は   智度十住毘婆娑等   つくりておほく西をほめ   すゝめて念佛せしめたり 【二左】  0002  南天竺に比丘あらん   龍樹菩薩となつくへし   有无の邪見を破すへしと   世尊はかねてときたまふ 【三右】  0003  本師龍樹菩薩は   大乘无上の法をとき   觀喜地を證してそ   ひとへに念佛すゝめける 【三左】  0004  龍樹大士世にいてゝ   難行易行の道おしへ   流轉輪迴のわれらをは   弘誓のふねにのせたまふ 【四右】  0005  本師龍樹菩薩の   おしへをつたへきかんひと   本願こゝろにかけしめて   つねに彌佗を稱すへし 【四左】  0006  不退のくらゐすみやかに   えんとおもはんひとはみな   恭敬の心に執持して   彌佗の名號稱すへし 【五右】  0007 ○生死の苦海ほとりなし   ひさしくしつめるわれらをは   彌陀弘誓のふねのみそ   のせてかならすわたしける 【五左】  0008  智度論にのたまはく   如來は无上法皇なり   菩薩は法臣としたまひて   尊重すへきは世尊なり 【六右】  0009  一切菩嶐ののたまはく   われら因地にありしとき   无量劫をへめくりて   萬善諸行を修せしかと 【六左】  0010  恩愛はなはたたちかたく   生死はなはたつきかたし   念佛三昧行してそ   罪障を滅し度脱せし 【七右】      已上龍樹菩薩  Subtitle 天親菩薩  十首 【七左】  0001  釋迦の教法おほけれと   天親菩薩はねんころに   煩惱成就のわわらには   彌陀の弘誓をすゝめしむ 【八右】  0002  安養淨土の莊嚴は   唯佛與佛の知見   究竟せること虚空にして   廣大にして邊際なし 【八左】  0003  本願力にあひぬれは   むなしくすくるひとそなき   功徳の寶海みち/\て   煩惱の濁水へたてなし 【九右】  0004 ○如來淨華の聖衆は   正覺のはなより化生して   衆生の願樂こと/\く   すみやかにとく滿足す 【九左】  0005  天人不動の聖衆は   弘誓の智海より生す   心業の功徳と清淨にて   虚空のことく差別なし 【十右】  0006  天親論主は一心に   无礙光に歸命す   本願力に乘すれは   報土にいたるとのへたまふ 【十左】  0007  盡十方の无礙光佛   一心に歸命するをこそ   天親論主のみことには   願作佛心とのへたまへ 【十一右】  0008  願作佛の心はこれ   度衆生のこゝろなり   度衆生の心はこれ   利他眞實の信心なり 【十一左】  0009  信心すなはち一心なり   一心すなはち金剛心   金剛心は菩提心   この心すなはち他力なり 【十二右】  0010  願土にいたれはすみやかに   无上涅槃を證してそ   すなはち大悲をおこすなり   これを迴向となつけたり 【十二左】      已上天親菩薩  Subtitle 曇鸞和尚      三十四苜 【十三右】  0001 ○本師曇鸞和尚は   菩提流支のおしへにて   仙經なかくやきすてゝ   淨土にふかく歸せしめき 【十三左】  0002  四論の講説さしおきて   本願他力をときたまひ   具縛の凡衆をみちひきて   涅槃のかとにそいらしめし 【十四右】  0003  世俗の君子幸*し   勅して淨土のゆへをとふ   十方佛國淨土なり   なにゝよりては西にある 【十四左】  0004  鸞師こたへてのたまはく   わか身は智慧あさくして   いまた地位にいらされは   念力ひとしくおよはれす 【十五右】  0005  一切道俗もろともに   歸すへきところそさらになき   安樂勸歸のこゝろさし   鸞師ひとりさためたり 【十五左】  0006  魏の主勅して并州の   大巖寺にそおはしける   やうやくおはりにのそみては   汾州にうつりたまひにき 【十六右】  0007  魏の天子はたふとみて   神鸞とこそ號せしか   おはせしところのその名をは   鸞公巖とそなつけたる 【十六左】  0008  淨業さかリにすゝめつゝ   玄忠寺にそおはしける   魏の興和四年に   遙山寺にこそうつりしか 【十七右】  0009  六十有七ときいたり   淨土の往生とけたまふ   そのとき靈瑞不思議にて   一切道俗歸敬しき 【十七左】  0010  君子ひとへにおもくして   勅宣くたしてたちまちに   汾州汾西秦陵の   勝地に靈廟たてたまふ 【十八右】  0011  天親菩薩のみこそをも   鸞師ときのへたまはすは   他力廣大威徳の   心行いかてかさとらまし 【十八左】  0012  本願圓頓一乘は   逆想攝すと信知して   煩惱菩堤體无二と   すみやかにとくさとらしむ 【十九右】  0013 ○いつゝの不思議をとくなかに   佛法不思議にしくそなき   佛法不思議といふことは   彌陀の弘誓になつけたり 【十九左】  0014  彌陀の迴向成就して   往相還相ふたつなり   これらの迴向によりてこそ   心行ともにえしむなれ 【二十右】  0015  往相の迴向ととくことは   彌陀の方便ときいたり   悲願の信行えしむれは   生死すなはち涅槃なり 【二十左】  0016  還相日迴向ととくことは   利他教化の果をえしめ   すなはち諸有に迴入して   普賢の徳を修すなり 【二十一右】  0017  論主の一心ととけるをは   曇鸞大師のみことには   煩惱成就のわれらか   他力の信とのへたまふ 【二十一左】  0018  盡十方の无礙光は   无明のやみをてらしつゝ   一念歡喜するひとを   かならす滅度にいたらしむ 【二十二右】  0019 ○无礙光の利益より   威徳廣大の信をえて   かならす煩惱のこほりとけ   すなはち菩提のみつとなる 【二十二左】  0020  罪障功徳の體となる   こほりとみつのことくにて   こほりおほきにみつおほし   さはりおほきに徳おほし 【二十三右】  0021  名號不思議の海水は   逆謗の屍*もとゝまらす   衆惡の萬川歸しぬれは   功徳のうしほに一味なり 【二十三左】  0022  盡十方无礙光の   大悲大願の海水に   煩惱の衆流歸しぬれは   智慧のうしほに一味なり 【二十四右】  0023  安樂佛國に生するは   畢竟成佛の道路にて   无上の方便なりけれは   諸使淨土をすゝめけり 【二十四左】  0024  諸佛三業莊嚴して   畢竟平等なることは   衆生虚誑の身口意を   治せんかためとのへたまふ 【二十五右】  0025 ○安樂佛國にいたるには   无上寶珠の名號と   眞實信心ひとつにて   无別道故とときたまふ 【二十五左】  0026  如來清淨本願の   无生の生なりけれは   本則三三の品なれと   一二もかはることそなき 【二十六右】  0027  无礙光如來の名號と   かの光明智相とは   无明長夜の闇を破し   衆生の志願をみてたまふ 【二十六左】  0028  不如實修行といへること   鸞師釋してのたまはく   一者信心あつからす   若存若亡するゆへに 【二十七右】  0029  二者信心一ならす   決定なきゆへなれは   三者信心相續せす   餘念間故とのへたまふ 【二十七左】  0030  三信展轉相成す   行者こゝろをとゝむへし   信心あつからさるゆへに   決定の信なかりけり 【二十八右】  0031 ○決定の信なきゆへに   念相續せさるなり   念相續せをるゆへ   決定の信をえさるなり 【二十八左】  0032  決定の信をえさるゆへ   信心不淳とのへたまふ   如實修行相應は   信心ひとつにさためたり 【二十九右】  0033  萬行諸善の小路より   本願一實の大道に   歸入しぬれは涅槃の   さとりはすなはちひらくなり 【二十九左】  0034  本師曇鸞大師をは   梁の天子蕭王は   おはせしかたにつねにむき   鸞菩薩とそ禮しける 【三十右】      已上曇鸞和尚  Subtitle 道綽禪師     七首 【三十左】  0001  本師道綽禪師は   聖道萬行さしおきて   唯有淨土一門を   通入すへきみちととく 【三十一右】  0002  本師道綽大師は   涅槃の廣業さしおきて   本願他力をたのみつゝ   五濁の羣生すゝめしむ 【三十一左】  0003 ○末法五濁の衆生は   聖道の修行せしむとも   ひとりも證をえしことそ   教主世尊はときたまへ 【三十二右】  0004  鸞師のおしへをうけつたへ   棹和尚はもろともに   在比起心立行は   此是自力とさためたり 【三十二左】  0005  濁世の起惡造罪は   暴風駛雨にことならす   諸佛これらをあはれみて   すゝめて淨土に歸せしめり 【三十三右】  0006  一形惡をつくれとも   專精にこゝろをかけしめて   つねに念佛せしむれは   諸障自然にのそこりぬ 【三十三左】  0007  縱令一生造惡の   衆生引接のためにとて   稱我名字と願しつゝ   若不生者とちかひたり 【三十四右】      已上道綽大師  Subtitle 善導大師     二十六首 【三十四左】  0001 ○大心海より化してこそ   善導和尚とおはしけれ   末代濁世のためにとて   十方諸佛に證をこふ 【三十五右】  0002  世世に善導いてたまひ   法照少康としめしつゝ   功徳藏をひらきてそ   諸佛の本意とけたまふ 【三十五左】  0003  彌陀の名願によらされは   百千万劫すくれとも   いつゝのさはりはなれねは   女身をいかてか轉すへき 【三十六右】  0004  釋迦は要門ひらきつゝ   定散諸機をこしらへて   正雜二行方便し   ひとへに專修をすゝめしむ 【三十六左】  0005  助正ならへて修するをは   すなはち雜修となつけたり   一心をえさるひとなれは   佛恩報するこゝろなし 【三十七右】  0006  佛號むねと修すれとも   現世をいのる行者をは   これも雜修となつけてそ   千中无一ときらはるゝ 【三十七左】  0007 ○こゝろはひとつにあらねとも   雜行雜修これにたり   淨土の行にあらぬをは   ひとへに雜行となつけたり 【三十八右】  0008  善導大師證をこひ   定散二心をひるかへし   貪瞋二河の譬喩をとき   弘願の信心守護せしむ 【三十八左】  0009  經道滅盡ときいたり   如來出世の本意なる   弘願眞宗にあひぬれは   凡夫念してさとるなり 【三十九右】  0010  佛法力の不思議には   諸邪業繋さはらねは   彌陀の本弘誓願を   搶繪盾ニなつけたり 【三十九左】  0011  願力成就の報土には   自力の心行いたらねは   大小聖人みななから   如來の弘誓に乘すなり 【四十右】  0012  煩惱具足と信知して   本願力に乘すれは   すなはち穢身すてはてゝ   法性常樂證せしむ 【四十左】  0013 ○釋迦彌陀は慈悲の父母   種種に善巧方便し   われらか无上の信心を   發起せしめたまひけり 【四十一右】  0014  眞心徹到するひとは   金剛心なりけれは   三品の懺悔するひとゝ   ひとしと宗師はのたまへり 【四十一左】  0015  五濁惡世のわれらこそ   金剛の信心はかりにて   なかく生死をすてはてゝ   自然の淨土にいたるなれ 【四十二右】  0016  金剛堅固の信心の   さたまるときをまちえてそ   彌陀の心光攝護して   なかく生死をへたてける 【四十二左】  0017  眞實信心えさるをは   一心かけぬとおしへたり   一心かけたるひとはみな   三信具せすとおもふへし 【四十三右】  0018  利他の信樂うるひとは   願に相應するゆへに   教と佛語にしたかへは   外の雜縁さらになし 【四十三左】  0019 ○眞宗念佛きゝえつゝ   一念无疑なるをこそ   希有最勝人とほめ   正念をうとはさためたれ 【四十四右】  0020  本願相應せさるゆへ   雜縁きたりみたるなり   信心亂失するをこそ   正念うすとはのへたまへ 【四十四左】  0021  信は願より生すれは   念佛成佛自然なり   自然はすなはち報土なり   證大涅槃うたかはす 【四十五右】  0022  五濁揩フときいたり   疑謗のともからおほくして   道俗ともにあひきらひ   修するをみてはあたをなす 【四十五左】  0023  本願毀滅のともからは   生盲闡提となつけたり   大地微塵劫をへて   なかく三塗にしつむなり 【四十六右】  0024  西路を指授せしかとも   自障障他せしほとに   曠劫已來もいたつらに   むなしくこそはすきにけれ 【四十六左】  0025 ○弘誓のちからをかふらすは   いつれのときにか娑婆をいてん   佛恩ふかくおもひつゝ   つねに彌陀を念すへし 【四十七右】  0026  娑婆永劫の苦をすてゝ   淨土无爲を期すること   本師釋迦のちからなり   長時に慈恩を報すへし 【四十七左】      已上善導大師  Subtitle 源信大師     十首 【四十八右】  0001  源信和尚ののたまはく   われわれ故佛とあらはれて   化縁すてにつきぬれは   本土にかへるとしめしけり 【四十八左】  0002  本師源信ねんころに   一代佛教のそのなかに   念佛一門ひらきてそ   濁世末代おしへける 【四十九右】  0003  靈山聽衆とおはしける   源信僧都のおしへには   報化二土をおしへてそ   專雜の得失さためたる 【四十九左】  0004  本師源信和尚は   懷感禪師の釋により   處胎經をひらきてそ   懈慢界をはあらはせる 【五十右】  0005 ○專修のひとをほむるには   千无一失とおしへたり   雜修のひとをきらふには   萬不一生とのへたまふ 【五十左】  0006  報の淨土の往生は   おほからすとそあらはせる   化土にむまるゝ衆生をは   すくなからすとおしへたり 【五十一右】  0007  男女貴賤こと/\く   彌陀の名號稱するに   行住坐臥もえらはれす   時處諸緑もさはりなし 【五十一左】  0008  煩惱にまなこさへられて   攝取の光明みされとも   大悲ものうきことなくて   つねにわか身をてらすなり 【五十二右】  0009  彌陀の報土をねかふひと   外僧のすかたはことなりと   本願名號信受して   寤寐にわするゝことなかれ 【五十二左】  0010  極惡深重の衆生は   他の方便さらになし   ひとへに彌陀を稱してそ   淨土にむまるとのへたまふ 【五十三右】      已上源信大師  Subtitle 源空聖人     二十首 【五十三左】  0001 ○本師源空世にいてゝ   弘願の一乘ひろめつゝ   日本一州こと/\く   淨土の機縁あらはれぬ 【五十四右】  0002  智慧光のちからより   本師源空あらはれて   淨上眞宗をひらきつゝ   選擇本願のへたまふ 【五十四左】  0003  善導源信すゝむとも   本師源空ひろめすは   片州濁世のともからは   いかてか眞宗をさとらまし 【五十五右】  0004  曠劫多生のあひたにも   出離の強縁しらさりき   本師源空いまさすは   このたひむなしくすきなまし 【五十五左】  0005  源空三五のよはひにて   无常のことはりさとりつゝ   厭離の素懷をあらはして   菩提のみちにそいらしめし 【五十六右】  0006  源空智行の至徳には   聖道諸宗の師主も   みなもろともに歸せしめて   一心金剛の戒師とす 【五十六左】  0007 ○源空存在せしときに   金色の光明はなたしむ   禪定博陸まのあたり   拜見せしめたまひけり 【五十七右】  0008  本師源空の本地をは   世俗のひと/\あひつたへ   綽和尚と稱せしめ   あるひは善導としめしけり 【五十七左】  0009  源空勢至と示現し   あるひは彌陀と顯現す   上皇羣臣尊敬し   京夷庶民欽仰す 【五十八右】  0010  承久の太上法皇は   本師源空を歸命しき   釋門儒林みなともに   ひとしく眞宗に悟入せり 【五十八左】  0011  諸佛方便ときいたり   源空ひしりとしめしつゝ   无上の信心おしへてそ   涅槃のかとをはひらきける 【五十九右】  0012  眞の知識にあふことは   かたきかなかになをかたし   流轉輪迴のきはなきは   疑情のさはりにしくそなき 【五十九左】  0013  源空光明はなたしめ   門徒につねにみせしめき   賢哲愚夫もえらはれす   豪貴鄙賤もへたてなし 【六十右】  0014  命終その期ちかつきて   本師源空のたまはく   往生みたひになりぬるに   このたひことにとけやすし 【六十左】  0015 ○源空みつからのたまはく   靈山會上にありしとき   聲聞僧にましはりて   頭陀を行して化度せしむ 【六十一右】  0016  粟散片州に誕生して   念佛宗をひろめしむ   衆生化度のためにとて   この土にたひ/\きたらしむ 【六十一左】  0017  何彌陀如來化してこそ   本師源空としめしけれ   化縁すてにつきぬれは   淨土にかへりたまひにき 【六十二右】  0018  本師源空のおはりには   光明紫雲のことくなり   音樂哀婉雅亮にて   異香みきりに暎芳す 【六十二左】  0019  通俗男女預參し   卿上雲客羣集す   頭北面西右脇にて   如來涅槃の儀をまもる 【六十三右】  0020  本師源空命終時   建暦第二壬申歳   初春下旬第五日   淨土に還歸せしめけり 【六十三左】      已上源空聖人 已上七高僧和讚 一百十七首 【六十四右】  0001  五濁惡世の衆生の   選擇本願信すれは   不可稱不可説不可思議の   功徳は行者の身にみてり 【六十四左】 天竺     龍樹菩薩        天親業薩 震旦     曇鸞和尚        道綽禪師        善導禪師 和朝     源信和尚        源空聖人             已上             七人 【六十五右】 聖徳太子 敏達天皇元年      正月一日誕生 當佛滅後一千五百二十一年也 二          一 【六十五左】  0001  南无阿彌陀佛をとけるには   衆善海水のことくなり   かの清淨のた善身にえたり   ひとしく衆生に迴向せん  End  底本::   書名:  正像末和讚   著者:  親鸞   書冩:  蓮如 教如  常如&M000000; 乘如  現如      彰如   發行:  不明 慶長四 延&M007265;五 天明八 明治三十八年  大正九   初版:  不明  入力::   入力者: 新渡戸 廣明(info@saigyo.org)   入力機: Sharp WS003SH   編集機: IBM ThinkPad X31 2672-CBJ   入力日: 2007年07月05日  校正::   校正者:   校正日:  $Id: kosowasan.txt,v 1.1 2007/07/05 14:03:15 nitobe Exp $