Title  山家集類題  Note 注意:翻刻作業中・新渡戸   *印:検討思案中   「序文」「凡例」「目録」は作業中につき誤謬が存在します。 【序一オ】  Description 苔のころも着たらむ人のうらな るたまに心かけてはつとまとてもあ らしを大和歌をは仏の真言に もかなふへけれとわかのうらにおり たちてとろはるゝことに宝珠なら ぬなかりしと円位ひしりのおの つから難事風骨にてよのつねの 【序一ウ】 こかね糸か絵をちりはむとてかたな のあとをあらはし花鳥をぬひもの すとて針目みらるゝたくひのうた 人らはひとつむしろにねてかたらは れむやと此ひしりの集のむかし よりつたはれるくさ/\ありて異 同すくなからぬを我友柳斎せち 【序二オ】 にたゝしあはせたりしかさるを書 肆のもとむるまゝに題によりて歌 をたくへみわきよきさまにかいつら ねられしは文化のこゝのかへりの年 になむ有けるかく物をらるゝはと し*のひろはれたる玉の光をゆ くすゑのよにかゝやかさむの心かまへ 【序二ウ】 ならむとよろこひて***の* **しにかくはそのとしの秋たつ 日にそありける 【凡一オ】  Description  凡例 一 山家集はよにもてはやす人多あなれはふみのいちくらも いつもむなしきまてにあかなひぬされは桜木もいつしか かけて紙にすりてはいとわかりかたくなむこれをたゝして *にちりはめむと元長等かせちにもとむるもいなみ かたけれはひらきみるに一朝一夕にあらためかたし にておよそ*類の題をならへて一帖となせしは 今の山家集のこときをよくたゝして板にゑりつく るまてのためになん 一 今の山家集西行上人の手択そのまゝつたはりしもの とはみえさることあまたありされといつれをもて 【凡一ウ】 正本とすへきなけれは今の集はしめてすりし一本あり それをもてこたひの類題は書集ぬしかれはかへ字仮名 もそのまゝにて誤れりとおほしきもたゝし侍らす 一 或人秘蔵して頓阿法師のもたりし山家集といふあり またやことなき官家の御蔵本と云あり其他異本の山 家集五六本はかりたゝし合せしに悉異同あり此異本の 集は板本にある所の歌みつか一つ斗にしてならへかたも またことなりされとも**かよはしてみれは**な きにしもあらすこれらをたゝし合せてかたはらに しるして在来のことき山家集をつきて出すへし 一 集中の歌勅撰にいりたるも多しこれまた異同あり 【凡二オ】 嗣出の大本につはらかにしるすへし 一 近代の識者此上人の歌を難破せしあり*難あたれりと もおもほへねと*に**をかきけるその中に心なき 身にもあはれはしられけり鴫たつ沢の秋の夕くれといふ 歌をも*せりまた或人は此歌を秋の歌とせりしかれとも 詞書に物へまかるとてと有をもて**を考いまは哀傷 の部に出せりかゝるたくひのことあまたありこれら大本* 正にくはしく**へし 一 集中の歌伝写あまたらひにして畢竟誤れりとみゆるも ありはた愚なる心にはいかむともよみときかたき歌もあなり これらの考もかたはらにしるさまほしくおもほゆれと大本 【凡二ウ】 嗣出をまちてこたひはもらし侍る 一 今原本とせしにも闕句ありまたかんなをかへ字にかきう つせしより一首きこえぬ歌となれるもありそかたくひは 彼異本等にたゝしあはせてあらため置ぬ 一 今の集に題のあらはなるもありまた雑の中はた題 しらすなとあるに或は初春或は月雪花等をよめり とみゆるありそは其たくひにならへ出せとも題しらすと あるはしかしるして何くれの題とこまかに事つけおくこは 初学の人の詠例なともとめむ一助とせんとなりにて 目録の所にしるして集には本のまゝを出しぬみたり かはしく題を書付は上人の作意にたかはんことの 【凡三オ】 はゝかりあれはなり 一 遁世の後は住所いつれとさためたまはさりけりとみゆる に大かたは高野に住たまひけるよしなれと高野にての歌 も羇旅の部にくはへ置ける 一 みちのくつくしかた四国なとの修行も一たひのことゝも みえ侍らねと**国**ならへ出し置されはいつれ のことは書も本のまゝに出しぬ*心してみたまふへし 一 在来の山家集歌数千五百六十九首ありその中に 恋の歌一首秋の部に重出せりこれを除て千五百六十 八首かりそめに類題とすること左のことし   文化九年壬申三月        松本柳斎識 【凡三ウ】 類題上巻   春之部  二百廿五首  夏之部  百五首  秋之部  二百八十六首   冬之部  百九首    離別之部 七首   羇旅之部 百九十首   賀之部  十四首    計九百三十六首 同 下巻   恋之部  二百五十六首 雑之部  二百六首  哀傷之部 九十三首   釈教之部 五十六首   神祇之部 廿一首  計六百三十二首     *歌数千五百六十八首 【目一オ】  Section  山家集類題上巻目録  Subtitle  春部  0001        0002        0003 ○年内立春雨    ○山居年内立春   ○深山立春  0004        0005        0006 ○山立春      ○浪華立春     ○初春逢坂山霞  0007-0011 ○立春朝の歌 五首 △初夢  △春曙  △山霞           △霞   △若水 等  0012        0013        0014 ○立春日      ○元日雨      ○家々春を翫ふ  0015        0016        0017-0018 ○春きて猶雪ふる  ○題しらす△里残雪 ○静忍法師贈答△残雪  0019-0022                0023-0028 ○題しらす 四首 △氷解 △小せりつむ ○子日 六首 △元日子日          △峯霞 △雪解           △小松引            0029-0036 △子日霞 △子日鶯 ○若菜 八首 △初子日わかな △雪中わかな △子日に松を送 等        △雨中わかな  △わかな懐旧                      0037 △老人わかな △若菜述懐        ○題しらす △ゑくの草茎 △野辺にわかなつむ人 等  0038        0039 ○海辺霞      ○いせのふたみにて海辺霞 【目一ウ】  0040                  0041 ○霞によせてつれなきことを       ○世にあらしと思ひ                      0043 ける頃東山にて霞を 二首        ○題しらす △みよしの                            霞  0044        0045-0047      0048 ○梅        ○山里の梅 三首  ○旅泊梅  0049        0050 ○古砌梅      ○さかに住ける云云梅の風にちりけるを  0051        0052 ○庵の前の梅を   ○いせのにしふく山にて庵の梅  0053        0054        0055-0058 ○閑中鴬      ○雨中鴬      ○住ける谷に鴬の声せす           0059         0060-0061 なりにけれは 四首 ○鴬によせて思を述 ○梅に鴬の鳴ける 二首  0062-0065                0066 ○題しらす 四首△谷の鴬   △梅に鴬 ○鳴たえたる鴬の谷         △田舎の谷の鴬△鴬を聞             0067        0068 に声のしけれは   ○深山不知春    ○山里柳  0069        0070        0071 ○柳風にみたる   ○雨中柳      ○水辺柳  0072        0073        0074 ○早蕨       ○霞に月の曇れるを ○山里の春雨といふこと 【目二オ】            0075-0078 を大原にて     ○きゝす 四首 △曙のー  △枯のゝー                   △片岡のー △焼のゝー  0079        0080-0081      0082 ○帰雁       ○霞中帰雁 二首  ○山家呼子鳥  0083        ????        0084 ○題しらす△ませに ○花        ○春の月あかゝりけるに       蝶のとふ                      0085-0086 花またしき桜の枝を風のゆるかしけるを  ○花を待心を 二首  0087        0088-0092 ○待花忘他     ○題しらす 五首 △またき桜 △よしのゝ風                    △花を尋  △花の*の雲 等  0093        0094        0095 ○独山の花を尋   ○老木桜処ゝ    ○老見花  0096        0097-0098 ○春は花を友とす  ○せか院の花盛なりけるころ 贈答  0099-0100 ○上西門院の女房法勝寺花みられけるをり 云云 贈答  0101        0102        0103 ○白川の花     ○庭の花波にゝたり ○山寺の花盛に昔         0104 をおもひ出て ○若き人ゝはかりなむ云云雨の降けるに花の下に車を立て  0105                  0106 ○世をのかれて東山に云云白川の花盛に  ○かきたえこととはす云云人 【目二ウ】                      0107 の花見に山里へまうてきたりと聞て    ○花の下に月をみて  0108                  0109 ○曙の花に鴬の啼けれは         ○屏風の画に春の 宮人むれて花みける所によそなる人のみやりてたてりけるを  0110-0111                0112-0113 ○花のをり高野より寂然と 贈答     ○閑ならむと思ひける                      0114-0140 ころ花見に人々のまうてきけれは     ○花の歌あまたよみけるに △花雪にゝたり   △花に鴬の鳴ける  △よしの山の花数多あり △花雲にゝたり   △花によせて述懐  △**の花かす/\あり                      0141-0144 △みねの花     △山の花      ○題しらす △侘人の涙に △しら川の花    △閑居花 等二十七首       にたる桜                      0145-0159 △よしの山の花ををしむ△山さとの花   ○花の歌十五首よみける △花ををしむ 等 四首 △白雲花にまかふ  △山に花を尋    △花のつほむ △風前の初花    △青柳の糸に花を  △花ををしむ                      0160-0169 △峯の落花     △山おろしに花のちる○百首歌の中花十首 △花のちるに    △寄花述懐 等 △よしの山の花数多あり△山さくら    △花の雪 △花のたき     △ねにかへる花 等 【目三オ】 0170         0171-0199 ○遠山残花     ○落花の歌あまたよみけるに △花ををしむ    △風前落花     △山の落花あまたあり △落花似氷     △落花似雪     △峯落花 △花の別      △花の衾      △夜落花 △しら雲によせて花ををしむ 等 二十九首  0200        0201        0202 ○雨中落花     ○風前落花     ○山路落花  0203        0204        0205 ○夢中落花     ○散て後花を思ふ  ○桜にならひてたて                      0206 りける柳に花のちりかゝりける      ○花のちりたりけるに                      0207 ならひて咲はしめける桜を        ○苗代  0208-0209                0210-0211 ○題しらす 二首 △たしろみゆる    ○かはつ          △庭のしみつ            0212 △山田の蛙     ○題しらす 一首 △みつの蛙 △江の蛙  0213-0214                0215-0216 ○菫 二首    △庭のすみれ     ○題しらす 二首          △あら田すみれ            0217        0218 △よこのゝすみれ  ○山路のつゝし   ○つゝし山のひかりたり △北野のすみれ 【目三ウ】  0219        0220-0221 ○かきつはた    ○山吹 二首  △きしの山ふき                   △山吹井手のことし  0222                  0223 ○伊勢のみつにて海辺の春の暮      ○三月一日たらて暮けるに  0224-0225 ○三月晦日に 二首  Subtitle  夏部  0226        0227 ○題しらす △更衣 ○夏の歌よみけるに △山居初夏  0228        0229-0230     0231 ○夜卯花      ○水辺卯花 二首  ○社頭卯花  0232                  0233-0235 ○春のうちに郭公をきく         ○時鳥 △待時鳥 三首  0236        0237-0238 ○雨中待郭公    ○郭公をまちてあけぬ 二首  0239           0240 ○人にかはりて △待郭公 ○無言なりける頃郭公の初声を聞て  0241        0242        0243 ○不尋聞子規    ○雨中郭公     ○夕暮郭公 【目四オ】  0244        0245-0249 ○山寺の時鳥    ○時鳥を△**時鳥 △ーー聞めつらし△ーーをきく               △夜ーーを聞△花橘にーー 等五首  0250-0254 ○時鳥の歌五首よみけるに  △尋ーー  △待ーー  △山ーー               △川ーー  △山路ーー  0255-0664 ○百首歌の中郭公十首    △待ーー**△尋ーー  △聞て猶まつ               △雨中ーー △暁ーー  △深山ーー            0265-0266 △夜ーー      ○題しらす 二首  △山のほとゝきす △月前ーー 等             △夜のーーーーー 等  0267 ○五月晦日に山里にまかりて立帰にけるを時鳥もすけなく 聞捨て帰りしことなと人の申つかはしける返ことに  0268                  0270 ○五日さうふを人の遣したりける返事に  ○さることありて人の申            0271-0271 つかはしける返事に ○高野に中院と申所にあやめふきたる坊の                      0272-0274 侍けるに桜のちりけるかいとめつらしく覚て○五日山寺へ人のけふいる                   二首 物なれはとてさうふをつかはしたりける返事に△西にのみ心を云云                      △みな人の心の云云            0275 △五月雨の軒の雫云云○題しらす △空晴て云云あやめもふかぬ  等 三首           五月なるへしてふ歌 【目四ウ】  0276-0282                0283-0298 ○五月雨△江五月雨△橋五月雨△古郷五月雨○五月雨の歌十五首よみ     △閑居五月雨△小田五月雨 等七首 侍し人にかはりて  △浦五月雨△橋ーーー△川ーーー△江ーーー           △湊ーーー△船ーーー△舟橋ーーー△沼ーーー                0299    0300 △池ーーー△原ーーー    ○深山水鶏 ○題しらす △夏の夜 △山田ーーー 等歌ハ十六あり  0301-0302          0303    0304 ○夏の月歌よみけるに△原夏月○雨中夏月 ○海辺夏月          △山川ーー  0305        0306-0307 ○池上夏月     ○泉に向て月をみるといふことを 二首  0308        0309        0310 ○撫子       ○雨中撫子     ○ともし  0311        0312        0313 ○夏野の草     ○旅行草深     ○行旅夏  0314-0316                0317 ○題しらす △蓼のほ △蚊遣火     ○蓮池にみてり       △からす扇  0318        0319        0320 ○隣のいつみ    ○題しらす△いつみ ○水辺納涼  0321        0322-0324 ○木陰の納涼    ○題しらす △山下風涼しさ △河風蝉のことし                 △ひさき生て云云 等 三首  0325        0326        0327 ○涼風如秋     ○水声秋あり    ○山家待秋 【目五オ】  0328-0329           0330 ○題しらす △沢田のくらゝ生 ○六月祓       △山田のみつ  Subtitle  秋部  0331        0332        0333 ○山里の初秋    ○山居初秋     ○初秋松風  0334        0335-0340 ○題しらす△秋初風 ○七夕 △七夕露 △ーー夜               △ーー風 △蜘の井かき            0341        0342-0343 たるをみて     ○秋の歌に露を   ○題しらす△*露 等 六首                     △原露  0344        0345        0346 ○萩        ○萩風露を払ふ   ○隣の夕の萩の風  0347        0348        0349 ○題しらす△秋の哀 ○野萩似錦     ○萩野にみてり  0350        0351-0352 ○萩野の家にみてり ○題しらす △萩のひまにこのてかしはの花                 △萩の花すり 等 二首  0353        0354        0355-0356 ○終日野の花をみる ○野径秋風     ○女郎花 二首  0357-0358      0359        0360-0361 ○水辺女郎花 二首 ○女郎花水に近し  ○女郎花帯露 二首 【目五ウ】  0362-0363                0364 ○草花露重 二首 △女郎花*      ○草花時を得たり  0367        0268        0367 ○霧中草花     ○行路草花     ○草花道をさいきる  0368-0369                0370 ○忍西入道と草の花の贈答        ○草花  0371-0372                0373 ○題しらす 二首 △池のうきくさ    ○薄路にあたりてしけし          △露草のはな  0374        0375-0384 ○古籬苅萱     ○人々秋の歌十首よみけるに △野秋風                         △野原花                      0385-0386 △野虫  △萩風  △山鹿  △秋時雨 ○秋の歌 △秋夕暮 △山月  △鹿月  △庭月  △暮秋       △秋哀 等 二首 【0387-0388:不明】  0389                  0390-0391 ○山里にて秋歌よみける △秋の蝉    ○田家秋夕 二首  0392        0393        0394-0409 ○題しらす△秋夕暮 ○野の家の秋の夜  ○虫の歌よみ侍けるに                         0410 △夕蛬  △月前虫 △野蛬 △夜虫 △野虫  ○独聞虫 △野秋虫 △閑*虫 △枕虫 △虫声幽 等十六首  0411        0412        0413 ○深夜聞蛬     ○故郷虫      ○雨中虫  0414        0415        0416 ○田家に虫を聞   ○夕の道の虫    ○物心ほそく哀なる 【目六オ】              0417 折しも庵の枕近う虫を聞 ○伏見に住ける人を尋て庭の草            0418-0419         0420 しけきに虫を聞て  ○秋の末に松虫を聞て 二首 ○十月初に                      0421 山里にまかりけるに蛬の声の僅にしけれは ○朝に初雁をきく  0422        0423        0424 ○船中初雁     ○夜に入りて雁を聞 ○雁声遠  0425        0426        0427 ○霧中雁      ○霧上雁      ○題しらす △風前雁  0428        0429        0430 ○暁の鹿      ○夕暮鹿      ○田庵の鹿  0431        0432 ○幽居に鹿を    ○人を尋てをのにまかりけるに鹿の鳴けれは  0433                  0434-0440 ○小倉の麓に住侍けるに鹿の鳴けるを聞て ○鹿 △萩のすかひにー                        △原のー            0441        0442 △夜ー  △夕ー  ○霧 △里の霧   ○霧行客をへたつ △山里ー 等 七首  0443-0444      0445        0446-0447 ○山家霧 【二首】 ○題しらす△山居霧 ○寂然高野に詣て                      0448 立帰て大原よりつかはしける贈答△嶺朝霧 ○ときはの里にて 【目六ウ】      0449 初秋月 ○松の絶まより僅に月のみえけるを △三日月  0450                     0451 ○入日影かくれけるまゝに月の窓にさし入けれは ○久月を待  0452        0453        0454-0460 ○雲間に月を待   ○閑に月を待    ○八月十五夜                      0461 △山ーー △川ーー △依月命を惜    ○くもれる十五夜 △こよひの月 等 七首  0462        0463        0464-0465 ○終夜月をみる   ○霧月を隔つ    ○名所月 △清見潟                          △明石  0466        0467        0468 ○月瀧をてらす   ○池の氷ににたり  ○池上月  0469-0470                0471 ○同心を遍昭寺にて 二首        ○海辺月  0472        0473-0474      0475 ○海辺明月     ○月前草花 二首  ○月前野花  0476        0477        0478 ○月照野花     ○月前萩      ○月前女郎花  0479-0480      0481        0482 ○月前薄 【二首】 ○月前紅葉     ○月前鹿  0483-0484      0485        0486 ○月前虫 二首   ○田家月      ○題しらす △月夜道 【目七オ】  0487 ○松の木のまより僅に月をみて月をいたゝきて道を行といふことを  0488        0489-0491      0492 ○旅宿の月を思ふ  ○旅宿月 三首   ○月前に遠く望  0493        0494 ○月前に友にあふ  ○遙なる所にこもりて都なりける人のもとへ            0495-0496 月の頃遣しける   ○人々住吉に参て月を翫けるに 二首  0497 ○春日に参りたりけるに常よりも月あかく哀なりけれは  0498             0499 ○月寺のほとりに明なり    ○月前に古をおもふ  0500-0505             0506    0507-0508 ○月によせて思ひを述けるに 六首 ○月前述懐 ○題しらす △依月惜命                              △月前思*  0509-0521 ○月   △夕月夜 △月前雲 △待月  △くもれる月△灘の月      △海の月 △山月  △月明  △原月   △月を雪 等      0522-0563 十三首 ○月の歌あまたよみけるに△月出山 △宵の月 △風前月                 △荒屋月 △古郷月 △月催哀 △月前虫 △山月  △嶺月  △袖月  △*家月 △草庵月 △月** △朝日山月△月前鳥 △月前雁 △月前嵐 △せとの月 等 四十二首?】0564-0576 四十四首 ○題しらす△かり田の月△岩井月 △閑居月 △月似雪                          【十三首?】           △谷月   △雨もる宿の月 等 十一首 【目七ウ】  0577-0586 ○百首歌中月十首  △*月  △池月  △浦月  △浜月           △観月  △月前風 △月前述懐 等  0587-0588                0589 ○九月十三夜 △月菊の露に映す     ○後九月月を翫ふ        △月秋の半にまされり  0590        0591        0592-0593 ○独聞擣衣     ○隔里擣衣     ○菊 △摘菊                        △菊厭霜 等二首  0594        0595 ○月前菊      ○鳥羽殿にて菊の御遊に  0596-0597                0598 ○覚堅阿闍梨と菊の贈答         ○題しらす △秋時雨  0599        0600        0601 ○紅葉未遍     ○山家紅葉     ○霧中紅葉  0602-0603      0604 ○紅葉色深 二首  ○賎かりける家に蔦の紅葉面白かりけるを  0605                0606-0607 ○寂蓮高野に詣て山の紅葉を     ○題しらす △秋時雨 二首  0608-0613 ○秋の末に法輪にこもりて △川暮秋 △山暮秋              △里ーー △ーー風 等六首  0614        0615        0616 ○終夜秋ををしむ  ○題しらす△野暮秋 ○秋の末に寂然高野 に参て暮の秋によせておもひを述けるに 【目八オ】  Subtitle  冬部  0617                  0618 ○長楽寺にて夜紅葉を思ふといふことを  ○時雨 △あつまやのあまり  0619        0620        0621 ○山家時雨     ○閑中時雨     ○題しらす △夜時雨  0622        0623        0624 ○落葉△あらしの庭 ○暁落葉      ○月前落葉  0625        0626        0627 ○瀧上落葉     ○水上落葉     ○落葉網代にとゝまる  0628        0629-0630      0631 ○草花野路落葉   ○山家落葉 二首  ○題しらす △深山辺里  0632-0633               0634 ○冬のうたよみけるに △なには江の霜  ○水辺寒草            △をみなへしの霜   0635-0637      0638        0639 ○枯野の草 三首  ○山家枯草     ○野の枯草 双林寺にて  0640        0641        0642 ○氷留山水     ○瀧上氷      ○氷筏をとつ  0643 ○世をのかれてくらまの奥に侍りけるに懸樋の氷て水まてこさりけれは  0644-0648                0649 ○千鳥  △潟千鳥 △迫門ーー△河ーー ○題しらす △嶋千鳥      △汀ーー △湊ーー 等 五首  【目八ウ】  0650-0651      0652        0653 ○月かれたる草を照す○しつかなるよの冬月○庭上冬月         二首  0654-0655      0656        0657 ○山家冬月 二首  ○舟中霰      ○深山霰  0658         0659-0660     0661 ○桜の木に霰のたはしる○題しらす△山家霰○冬の歌よみける中に                   二首            0662        0663 △初雪       ○題しらす△山桜の雪○夜初雪  0664        0665        0666 ○庭雪似月     ○枯野雪      ○雪道を埋む  0667        0668 ○雪埋竹      ○仁和寺の御むろにて山家閑居見雪といふことを  0669        0670        0671 ○山居雪      ○雪朝待人     ○雪朝会友  0672                  0673 ○雪の朝霊山と申所にて眺望を      ○社頭雪  0674 ○加茂の臨時の祭かへり立の御神楽土御門の内裏にて侍り                      0675-0682 けるに竹のつほに雪のふりたりけるを   ○雪の歌よみけるに                      0683-0685 △山雪  △旅雪  △苔雪  △山家雪 ○題しらす△山雪 △雪似卯花△閑居雪 △かしきそりの歌 等八首   △山路雪 【目九オ】            0686-0695 △きその雪 等三首 ○百首歌中雪十首  △杣雪  △山里ー                     △湊ー  △筏ー                      0696-0697 △梢ー  △大原ー △比良雪      ○大原寂然入道贈答 △閑居ー △雪述懐 等  0698 ○秋の頃高野へ参るへきよしたのめて参らさりける人の許へ雪降て後申遣しける  0699 ○雪に庵うつもれてせむかたなく面白かりける今もきたらはとよみけむ を思ひ出てみけるほとに鹿の分てとほりけるをみて  0700-0709 ○冬歌十首よみけるに△山家閑 △山里冬月△芦の丸やの冬△池の氷           △河氷  △浦千鳥 △山家霰 △湖の氷            0710        0711-0712 △みよしのゝ雪   ○鷹狩       ○雪中鷹狩 二首 △山家烟  0713        0714        0715 ○月前炭竃     ○山里冬深     ○山里冬  0716                  0717-0719 ○冬のうたよみける中に △冬山里    ○題しらす △山家嵐                           △山家風            0720        0721 △山風 等 三首  ○山家歳暮     ○東山にて人々年の暮            0722-0723 に思ひを述けるに  ○年の暮にあかたより都なる人のもとへ申 【目九ウ】              0724 つかはしける△山家歳暮 ○歳暮に人の許へつかはしける       △残紅葉 等  0725 ○つねなきことをよせて △歳暮述懐  Subtitle  離別部  0726 ○あひしりたりける人のみちのくへまかりけるに別の歌よむとて  0727 ○とし頃申なれたりける人に遠く修行するよし申て罷た りける名残多くて立けるに紅葉したりけるをみせまほし くて侍つるかひなくいかにと申けれは木の本に立寄てよみける  0728 ○遠く修行に思立侍りけるに遠行の別と云ことを人々よみ侍しに  0729 ○年久しくあひたのみたりける同行に放れて遠く修行して かへらすもやとおもひけるに何となく哀にて 【目十オ】  0730 ○遠く修行することありけるに斎院の前斎宮にまいり たりける人々別のうたつかふまつりけるに  0731 ○同折つほの桜の散けるをみてかくなむ覚え侍ると申       0732 ける   ○かへしせよとうけたまはりて扇に書て さしいてける 女房六角局  Subtitle  羇旅部  0733 ○嵯峨に住ける頃隣の坊に申へきこと有て罷けるに道も             0734 なく葎のしけりけれは ○しほ湯にまかりたりけるにくしたりける人 九月晦日にさきへのほりけれはつかはしける人にかはりて  0735         0736 ○かへし 大宮女房  ○しほ湯出て京へ帰りまうてきて      加賀 【目十ウ】 古郷の【花】霜かれにけり哀なりける急帰りし人の許へ又かはりて  0737        0738 ○かへし をなし人 ○八月つきの頃よふけて北白川へまかりける よしある様なる家に秋風楽と申ことの音の聞えけれは  0739-0743 ○新院さぬきにをはしましけるに便に付て女房のもと            0744 より 贈答 五首  ○山里にまかりて侍けるに竹の風の荻に            0745 まかひて聞えれは  ○世をのかれてさかに住ける人のもと にまかりて後世のことをこたらすつとむへきよし申て  0746-0747      0748        0749 ○題しらす△草庵風 ○海辺重旅宿    ○寒夜旅宿      △野閑居  0750        0751-0752 ○旅にて晩鐘を聞て ○旅の泊にて △月の歌 二首  0753 ○四国のかた修行しけるとて仁和元年十月十日のよ賀茂に参りて  0754          0755-0760 ○題しらす△ふしみ過ひの○うち川をくたりける云云 六首      まて行てのうた 【目十一オ】                 0761 △猟船  △ふしつけ△たな井 ○天王寺へ参りけるとて天川と申 △**  △*なは △鱸釣船            0762-0763 所にて昔を思出て  ○天王寺へ参りけるとて江口と申所にて贈答  0764 ○天王寺へ参りて松に鷺の居たりけるを月の光にみて  0765                  0766 ○天王寺へ参りて亀井の水をみて     ○六波羅太政入道持經 者千人集て津の国和田と申所にて云云万燈会しけり夜更る                      0767 まゝに灯の消けるを各ともしつきけるをみて○あかしに人をまちて            0768 日数へにけるに   ○はりまの書写へ参るとて野中の清水をみて  0769 ○四国のかたへ具してまかりたりたる同行の都へかゑりけるに  0770                  0771-0774 ○いつか都へはかゑるへきなと申けれは  ○旅の歌よみけるに            0775-0784 △旅宿露 △山霞  ○讃岐の国へまかりてみの津に着て月の △海月 等 四首 あかゝりけれは云云 △月前鳥 △月前袂 △月前袖 △月前雲           いつれも月を*する歌すへて 十首 【目十一ウ】  0785-0786 ○さぬきの松山に詣て院の御跡を尋て △松山の波云云                    二首  0787                  0788-0791 ○しろみねと申所の御はかに参りて    ○同し国に大師のをは しましける御あたりの山に庵むすひて △海月  △閑栖隣                   △庵前松 等 四首  0792-0798 ○雪の降けるに   △山路雪 △松雪  △月前雪 △雪似梅           △*路雪 △各雪  △**氷 等 七首  0799                  0800-0801 ○花をしきに霰の降かゝりけれは     ○大師のうまれさせ給                      0802-0803 ひしと申所にて△しるしの木△あか井の月 ○まむたら寺の行道        等 二首                      0804 ところへのほりて △法依随喜      ○備前国小嶋と申          △筆の山 等 二首                      0805 嶋にわたりあみと申物をとる所にて    ○ひゝのしふかはと申方                      0806-0807 へまかりてつみと申物をひろふをみて   ○まなへと申嶋に京 よりあき人とものくたりてしはくの嶋に渡るときゝて △つみの                           うた         0808-0809 △かき蛤の歌 ○うしまとのせとにてあまの云云 △さたえ  等 二首                  △あはひ 等二首 【目十二オ】  0810-0813                0814 ○題しらす 四首 △小鯛ひく△桜鯛   ○国々めくり春帰り          △小にし蛤△いそな 等                      0815 て吉野の方へまからむとしけるに     ○西国のかたへ修行し 侍とてみつのと申所の同行をいさなひけれとゆかさりけれは  0816 ○西国へ修行してまかりける折小嶋と申所の八幡にて  0817 ○あきの一宮へ詣けるにたかとみの浦にて苫もる月をみて  0818             0819-0821 ○詣つきて月をみて      ○つくしのはらかと申いを             0822 をつる所にて △三首 ○りうもむにまいるとて  0823-0834 ○承和元年六月一日院熊野へまいらせ給ひけるついてに                  0825 住吉に御幸ありけるをみて 二首 ○夏熊野へ参りけるに岩田と申               0826 所に涼て*の同行のもとへ ○かつらきを尋けるに折にもあらぬ紅葉をみて  0827 ○熊野へ参りけるにやかみの王子の花をみて △みすの山風をよめり 【目十二ウ】  0828 ○那智にこもりて瀧に入堂し*の花をみて  0829                  0830-0831 ○熊野へ参りけるになゝこしの嶺の月をみて○新宮より 伊勢のかたへまかりけるにみきしまにて白髪の海人をみて 二首  0832                  0833 ○みたけよりさうの岩屋へ参りたりけるに ○をさゝのとまりと申所            0834-0836 にて露を      ○大峯のしむせむと申所にて月をみて△深山月                            △嶺の月       0837             0838 △各月  ○をは捨と申所にて月をみて  ○こいけと申すくにて 等 三首            0839 月をみて      ○さゝのすくにて月をみて  0840 ○へいちと申すくにて月をみけるに露の袂にかゝりけれは  0841-0842 ○あつまやと申所にて時雨ののちの月をみて 二首  0843             0844 ○ふるやと申すくにて月をみて ○平等院の名かゝれたる                   0845 そとはに紅葉の散かゝりけるをみて ○ちくさのたけにて 【目十三オ】  0846             0847 ○ありのと渡りと申所にて   ○行者かへりちこのとまり屏風た            0848 てなと申所にて   ○三重の瀧ををかみて △三業の歌  0849 ○転法輪のたけと申所にて釈迦の説法の座の石と申を拝て  0850        0851 ○題しらす△近江やす○伊勢のかたへまかりけるにすゝか山にて      かはらの歌  0852        0853 ○太神宮に参りて  ○伊勢にまかりて月をみて  0854                  0855-0858 ○錦のしまの磯わの紅葉の散けるを    ○いせのたうししま                 0859 すか嶋と申所にて △こいしの ○伊勢のふたみの浦にてかひあ           歌 四首                     0860 はせのためのはまくりひろふと申を聞て ○いらこへわたりゐかひ                 0861 あこやなととるをみて     ○かつを釣舟の帰るをみて  0862-0863 ○ふたつ有けるたかのいらこわたりすと申けるか云云 △たかの歌 二首  0864                  0865-0866 ○するかの国くのゝ山寺にて月をみて   ○みちのくのたわしのねと 【目十三ウ】                 0867 申山の桜の花をみて 二首   ○みちのくにまかりたりけるに実                 0868 方中将の御はかをみて     ○みちのくへまかり白川の関に            0869 とまりて      ○さきにいりてしのふと申渡りにて  0870           0871 ○たけくまの松の跡をみて ○しのふの奥に侍りける社の紅葉をみて  0872                  0873 ○をもはくの橋と申にて紅葉をみて    ○下野の国にて柴のけふ            0874 りをみて      ○名とり河にて岸の紅葉をみて  0875             0876 ○十月十二日衣河みにまかりて ○陸奥国にてとしの暮に  0877-0878 ○又のとし三月に出羽国へこえてたきの山と申山寺にて △さくら                           △旅宿風  0879                  0880 ○修行し侍るに花をもしろかりける所にて ○修行して遠くまか りけるをり人の思ひへたてたるやうなることの侍りけれは  0881-0882 ○秋遠く修行し侍ける程に侍従大納言成道*贈答 【目十四オ】  0883-0884 ○みやたてと申けるはした物花と申くた物を送ける贈答  0885-0886           0887 ○雪ふかゝりける頃時忠*贈答 ○寒かりける頃宮法印高野にこも                      0888-0889 らせ給て小袖給はせたりける又の朝申遣ける○宮法印高野に こもらせ給千日果てみたけに参らせ給ていひつかはしける贈答  0890 ○待賢門院の中納言の局世をそむきて小倉山の麓に住ける         0891           0892-0893 をとふらひて ○此歌をみて同院兵衛局の詠○同院の帥 の局ともなひて***ふるさ吹上**にて時雨を祈歌 二首  0894-0895                0896 ○待賢門院の女房堀川の局贈答      ○深夜水                 0897-0898 声といふことを高野にて    ○高野の奥の院の橋の上にて                 0899-0918 月をみて西住上人、贈答    ○入道寂然大原に住けるに高 野よりつかはしける贈答 二十首△山ふかみと初句にすゑて十首を 【目十四ウ】 をくられけるに△谷川水 △山月△はし紅葉△ましら△とちひろふ        △ふくろふ△嶺嵐△斧の音 △山家*△かせき △】 ○大原の里と*句の置て十首かへされけるに△暮秋哀△朧清水                     △炭窯烟△引板露                0919 △山家枕△草庵露△さゝくり ○高野にこもりたりける頃草庵に △***△落葉深△暮秋鹿            0920 花の散つみけれは  ○高野より都なる人の許へいひつかはしける  0921 ○思はすなること思ひ立よし聞えける人の許へ高野よりつかはしける  0922 ○高野にこもりたる人を京よりいつか出へきと申たる由聞て其人に                            かはりて  Subtitle  賀歌  0923 ○むまこまうけて悦ける人のもとへいひつかはしける  0924-0936 ○祝 △雨によす △年に   △苔に   △鶴に 二首  △海に    △松に すみのえ かめ山 ひらの 等△星に     △日に    △竹に 等 十三首 【目十五オ】  Section  山家集類題上巻目録  Subtitle  恋部  0937        0938 ○名を聞て尋恋   ○自門帰恋  0939        0940-0943      0944-0945 ○涙顕恋      ○夢会恋 四首   ○後朝恋 二首  0946        0947        0948 ○後朝時鳥     ○後朝花橘     ○後朝霧  0949        0950-0951      0952 ○帰る朝時雨    ○逢てあはぬ恋 二首○恨恋  0953        0954 ○ふたゝひ絶恋   ○商人に文をつくる恋  0955        0956 ○海路恋      ○九月ふたつ有ける年閏月を忌恋  0957 ○御あれの頃賀茂にてさうしに憚恋  0958        0959 ○同社にて神に祈恋 ○かものかたにさゝきと申里に            0960        0961-0962 て山里の恋     ○寄糸恋      ○寄梅恋 二首 【目十五ウ】  0963-0964      0965        0966 ○寄花恋 二首   ○寄残花恋     ○寄帰雁恋  0967        0968        0969 ○寄草花恋     ○寄鹿恋      ○寄苅萱恋  0970        0971        0972 ○寄霧恋      ○寄紅葉恋     ○寄落葉恋  0973        0974        0975 ○寄氷恋      ○寄水鳥恋     ○月   △寄月待恋                          △寄月*恋  0976-1011 △忍恋あまたあり  △弓はりによす   △別恋  △涙に 数首 △よな/\忍恋   △依月思をそふ   △入さの月△*に △袂によす あまた有△くもれる月に   △心から月をうつす △袖によす あまた有△もりによす    △有明によす 等 三十七首  1012-1071 ○恋   △身を恨恋△*思  △忍恋 △***恋 △川によす      △経年恋 △恨あまた有△**△岩代の松に△しのたの杜に △*に △逢てあはぬ△*に△*****いひてあはぬ△井に △不二に△あまに  △あいの中山に △煙に △関に△しは鳥に △夢に会 △夢を俟 △夏草に △紅に  △荻風に △露に △みるめに△渕に  △来世を △暁のかねに 等 六十首  1072-1181 ○恋百十首     △池によす△忍恋  △市に  △**に数多有           △梅に  △露に  △五月雨に△七夕に △花に  △夕立に △*風に △川にあまたあり  △鴫に △恨あまたあり   △枕に  △露に  △浦に  △山に 【目十六オ】 △うたかたに△祈  △衣にあまたあり  △涙にあまたあり △命にあまたあり  △思 あまたあり  △煙に  △ふしに △瀧にあまたあり  △蓑に  △をさなひて恋 △児めきて恋 △涙に △かけみちに△葛に  △もに住虫△空蝉に △小芹に            01182 △依恋世をいとふ 等○みなつき晦日に人にかはりて  1183-1192 ○百首歌の中恋十首      △なつなに △紅に △思                △しけめゆい△松に △月に △衣に △千鳥に 等  Subtitle  雑部  1193 ○東山にあみた房と申ける上人の庵室にまかりて  1194 ○世をのかれけるをりゆかりなりける人のもとへいひ送りける  1195-1202 ○題しらす △山家つゝら△山家苔 △しるしの竿△かさとり山の雨       △杣か家  △杣くたす△山家草 等 八首  1203        1204        1205-1209 ○山寺の夕暮    ○夕暮山路     ○題しらす △鳩                           △鷺の村鳥 【目十六ウ】            1210-1212 △をし  △つる  ○ことりのうた   △ひはの村鳥△てりうそ △水乞鳥 等 五首           △こから 等 三首  1213-1214 ○屏風のゑに海のきはにをさなき賎しきものある所 以上 二首  1215-1226 ○題しらす △海上眺雲△くま山をろし△磯わの神△いせの浜荻       △荒磯松 △浦松風   △あはちのせとあまたあり                    1227    1228-1240 △ひたのひくしほ   △あさつま舟 ○竹風驚夢 ○題しらす △いふきをろし 等 十二首 △風** △あらし △松風  △こからし△嶺あらし△暁あらし △山家* △晩鐘 △ひくらしの声△谷松 △夕日の山△岩井の水            1241 △庵水音 等十三首 ○八条院の宮と申ける折白川殿にてむし                      1242ー あはせられける云云水に月のうつりたるを ○内に貝あはせせむと せさせ給ふけるに人にかはりて  △小貝ひろふ  △須崎の小貝                 △みしまえの桜貝△衣浦の袖貝                    1251-1260 △吹上の簾貝△色浜ますを貝△竹泊雀貝○百首歌中雑十首△沢のちどり △しらゝ浜烏貝△貝によす祝 等 九首        △湊のふね                             1261-1263 △よしのゝ瀧△岡への松△山家暮秋△しつはらの里△山家風○庚申のよ △詠月   △芦やの沖の舟△さゝかにの糸 等 くしにて詠 三首  △古今集梅によす  △後撰集桜によす           △拾遺集山吹によす 以上物名 【目十七オ】  1264        1265-1269 ○月蝕をよめる   ○題しらす △ゑそか千嶋 △ものゝふ                 △壺の石ふみ △鳥の歌 等 五首  1270 ○年頃聞渡りける人に初て対面申て帰る朝に  1271 ○同行に侍ける上人月の頃天王寺に籠りたりと聞て遣しける  1272-1273 ○堀河の局仁和寺に住侍けるに参へきよし申て程へにける 月の頃まへを通りけれは聞えける贈答  1274 ○ゆかりなくなりて住うかれ古郷へ帰りける人のもとへ  1275 ○ある人よをのかれて北山寺にゐたりけるを尋て  1276 ○ある宮はらにつけつかへ侍りける女房よをそむきて都は なれて遠くまからむと思立参らせけるにかはりて  1277-1278 ○侍從大納言成道のもとへ後の*をとろかし申たりける贈答  1279-1280 ○中院右大臣出家思立よしかたらひて後贈答 【目十七ウ】  1281-1282 ○爲なりときはに堂供養しけるのち贈答  1283-1288 ○ある人さまかへて仁和寺の奥に住たりけるを尋てあはさ りけれは其後人つかはして申たる贈答 六首  1289-1290 ○後の世のこと無下にをもはすしもなしとみえける人へ贈答  1291-1292 ○ある所の女房世をのかれて西山に住侍けるを尋て贈答  1293 ○阿闍梨兼堅よをのかれてのち仁和寺に出て僧綱に                 1294-1297 なりぬと聞て遣しける     ○新院歌あつめさせをはし ますと聞て大原の寂然寂超相空等贈答 四首  1298-1299           1300-1301 ○をなし頃右大将きむよし贈答 ○俊成歌あつめらるゝ                 1302-1303 と聞て歌つかはすとて贈答   ○院少納言の局此集        1304 をみて贈答 ○范蠡かちやうなむのこゝろを 【目十八オ】  1305 ○世につかうへかりける人のこもりゐたりけるもとへ遣しける  1306 ○人あまたしてひとりにかくしてあらぬさまにいひなしける  1307 ○世の中に大事いてきて新院あらぬさまにならせをはしまし                       1308-1315 仁和寺の北の院にをはしましけるを尋参りて ○さぬきにさそらひ 侍て後御心ひきかへ後の世の御つとめせさせ給ふと聞て女            1316-1317 房の許へ贈答 八首 ○ゆかりありける人の新院のかむたう なりけるをゆるしたまはりなむよしを申て御贈答  1318-1319 ○さぬきへをはして後歌といふことのよに聞えさりけれは寂然と贈答  1320 ○新院位にをはしましけるをりみゆきのすゝのろうを聞て  1321        1322-1326 ○述懐       ○心に思ひけることを△月に  △こゝろの月                     △終に行道△こゝろのし            1327-1331      1332 △枝なき木     ○五首述懐△山に  ○寄藤花述懐  等 五首          △露に 等 【目十八ウ】  1333         1334-1336 ○花立花によせて述懐 ○題しらす △しの竹に△はせをに                  △はまゆふに 等 三首  1337      1338-1343 ○老人述懐   ○題しらす △時雨に △涙に  △せりに               △花に  △朝顔に △かけ橋 等 六首  1344        1345 ○故郷述懐     ○大原の良暹の庵にて述懐  1346 ○周防内侍我さへ軒のと書付ける古郷にて述懐  1347-1355 ○百首歌の中述懐十首 一首 △嶺に △山にあまたあり            不足 △月に △ぬさ 等  1356            1357-1383 ○七月十五日舟岡と申所にて ○題しらす △山に                     △かゝみに                        1384 △露にあまたあり △竹に △月に △ぬえに ○泉のぬし △夢にあまたあり △しての山 等 二十七首 かくれ侍て後泉に向てふるきをおもふといふことを  1385          1386 ○友にあひて昔をこふる ○題しらす △花立花に昔をしのふ  1387        1388-1389 ○寄紅葉懐旧    ○十月中の十日頃法金剛院にて紅葉みける に上西門院をはしますよし聞て待賢門院の御時思ひ出られて兵衛の 【目十九オ】              1390-1394 局にさしをかせける贈答 ○題しらす △かねに  △古郷蓬                   △古郷の人 等 五首  1395              1396 ○さかのゝみしよにもかはりけれは○大覚寺の金岡かたてたる石を       1397 みて   ○瀧のわたりこたちあれて松斗並立けるを  1398 ○瀧殿の石とも閑院にうつされけると聞てみにまかりて  Subtitle  哀傷部  1399 ○例ならぬ人の大事なりけるかう月に梨の花の咲たるをみて なしのほしきよしねかひけるに或人かしはにつゝみてつかはしたる返ことに  1400-1401              1402-1403 ○あき頃風わつらひける人を訪て贈答 ○院の小侍従例ならぬ こと大事と聞て訪ひけれは少しよろしくて人にもきかせぬ和琴の                 1404-1408 手ひきならしけるを聞て贈答  ○風わつらひて山寺へか 【目十九ウ】                 1409 えり入けるを人々訪て 五首  ○同行にて侍りける上人例ならぬこと            1410-1411 大事に侍けれは   ○待賢門院かくれさせをはしましける御跡に                 1412 て堀河の女房の許へ贈答    ○近衛院の御墓に参りて  1413 ○一院かくれさせをはしまして御所へ渡し参らせけるよ参り合       1414                1415 せて   ○をさめ参らせける所へ参らせけるに ○納参らせて後  1416-1419 ○右大将きむよし父のふくのうちに母なくなりぬと聞て 贈答                           四首  1420 ○母なくなりて山寺にこもりゐたりける人を程へて人のとひたり          1421 けれはかはりて ○ゆかりありける人はかなく成けるわさにとりへ            1422 山へまかりて帰るに ○父のはかなくなりにけるそとはを見て  1423 ○おやかくれたのみたりけるむこうせ又程なく娘にさへをくれけり            1424 と聞て       ○五十日の果つかたに二條院の御墓に参りて 【目二十オ】  1425-1426 ○御跡に三河内侍さふらひける九月十三夜人にかはりて贈答  1427 ○親にをくれて歎ける人を五十日過まてとはさりけれはあやしまれ           1428 ける人にかはりて ○ゆかりにつけて物を思ひける人のもとより                  1429 なとかとはさらむとある返ことに ○はかなくなりてとしへにける 人のふみを物の中よりみ出て人の許へみせにつかはすとて  1430-1433 ○同行に侍ける上人をはり思ふさまなりと聞て △寂然贈答 四首  1434-1437 ○侍従大納言入道はかなくなり給ひて云云贈答 四首  1438-1439          1440-1441 ○同日のりつなのもとへ贈答 ○おなしさまに世をのかれて 大原に住ける妹のはかなくなりけるをとふ贈答  1442-1451 ○院の二位の局身まかりける跡にとをのうた人々よみけるに △うたかたに △末のつゆもとのしつく △露に △舟岡のすそのつか △浅ちか原 △わすれかたみ △古郷云云 △しての山 △七日の数 等 【目二十ウ】  1452-1457 ○跡のことゝも果てなかのり院の少納言局等 贈答六首  1458-1468 ○兄の入道想空はかなくなりける頃寂然より五首ををくる             1469 かへし五首 付ニ一首 ○はかなくなりける人の跡に五 十日のうち一品経供養しけるに化城喩品を  1470 ○なき人の跡に一品経供養しけるに寿量品を  1471                    1472 ○秋ものへまかりける道にて △心なきみにも ○とりへ山にて                あはれは云云 とかくのことしける月をみて諸行無常のこゝろを  1473        1474-1481 ○暁の無常     ○無常の歌あまたよみける中に △露に                          △夢に               1482-1491 △塚夕暮 △舟に △山に ○百首歌の中無常十首 △蓮臺野 等 八首 △夢に   △さゝかにの糸 △露に △燈に △いろくつに△大網に    △浦嶋の箱 等 【目二十一オ】  Subtitle  釈教部  1492 ○心さすことありて扇を仏に参らせけるに新院より給ける                 1493 女房承てつゝみ紙に      ○御かゑし承りける  1494             1495 ○仁和寺の宮にて道心逐年深  ○同夜閑中暁心  1496-1497           1498-1499 ○寂超入道談議すと聞て贈答  ○さたのふ入道觀音寺に                  1500-1501 堂つくり結縁すへきよし申て贈答 ○阿闍梨勝命千人 あつめて法華経結縁せさせけるに参りて後つかはしける 二首  1502-1503 ○世につかへぬへきやうなるゆかりあまたある人さもなかりけるを 思ひて清水に年越にこもりたりけるに遣しける 二首  1504             1505 ○心性さたまらすといふことを ○懴悔業障といふことを  1506             1507 ○遇教待龍花といふことを   ○日のいるつゝみのことし 【目二十一ウ】  1508        1509        1510 ○見月思西     ○暁念仏      ○易往無人  1511             1512 ○人命不停速於山水      ○菩提心論の乃至身命而不恍惜  1513             1514   1515-1516 ○疏文の心自悟心自証心    ○観心  ○序品 二首  1517             1518 ○方便品深著於五欲      ○譬喩品  1519        1520-1522      1523 ○五百弟子品    ○提婆品 三首   ○勧持品  1524-1525      1526        1527 ○寿量品 二首   ○一心欲見仏    ○神力品於我滅度後  1528        1529        1530 ○普賢品      ○心経       ○無上菩提の心を  1531                  1532-1537 ○和光同塵は結縁のはしめといふことを  ○六道のうたよみけるに                 1538-1547 △地獄 △餓鬼 △畜生    ○百首歌の中釈教十首 △修羅 △人  △天 △きりきわうの夢 三首 △無量義経 三首 △千手経 四首 【目二十二オ】  Subtitle  神祇部  1548         1549-1550 ○月の夜かもに参りて ○題しらす △みあれのしめ                  △里人の大ぬさ小ぬさ 等二首  1551 ○俊惠天王寺にこもりて人々具して住吉に参りて歌よみけるに  1552 ○伊勢に斎宮をはしまさてあれたりけるをみて  1553-1554 ○斎院をりさせ給て本院のまへを過けるにあはれなることの侍り                     1555 けれはせむしの局のもとへ遣しける贈答 ○斎院をはしまさぬ ころにて祭のかへさもなかりけれは紫野を通るとて  1556-1557 ○北まつりのころかもにまいりたりけるに何ことも昔にかはりたる            1558        1559 をみて 二首    ○神楽に星を    ○百首歌の中神祇 十首 △神楽 二首 △賀茂 二首 △男山 二首    △熊野 二首 △みもすそ 二首 【目二十二ウ】 【白紙】 【上一オ】  Section  山家集類題巻上  Subtitle  春歌  0001:1076  としのうちに春たちて雨のふりけれは 春としも猶をもはれぬ心かな雨ふるとしの心ちのみして  0002:1075  山こもりして侍けるに年をこめて春に成ぬと聞けるからにかすみ  わたりて山河の音ひころにも似す聞えけれは かすめとも年のうちとはわかぬまに春をつくなる山川の水  0003:1080  山ふかく住侍けるに春立ぬときゝて 山路こそ雪の下水とけさらめ都の空は春めきぬらむ  0004:0008  山さとにはるたつといふことを 山さとは霞わたれる気色にて空にや春の立をしるらむ 【上一ウ】  0005:0009  難波わたりに年超に侍けるに春立心をよみける いつしかも春きにけりと津の国の難波のうらを霞こめたり  0006:0010  春になりけるかたゝかへにしかのさとへまかりける人にくしてまかりけ  るにあふ坂山の霞たりけるをみて わきてけふあふ坂山のかすめるはたちおくれたる春やこゆらむ  0007:0001  立春の朝よみける 年くれぬ春くへしとは思ひねにまさしくみえてかなふ初夢  0008:0002 山のはのかすむけしきにしるき哉今朝よりやさは春の明ほの  0009:0003 春たつと思ひもあへぬ朝戸出にいつしかかすむ音羽山哉  0010:0004 たちかはる春をしれともみせかほに年をへたつる霞なりける  0011:0005 とけそむるはつ若水のけしきにて春立ことのくまれぬるかな 【上二オ】  0012:1078  春立ひよみける 何となく春になりぬときくひより心にかゝるみよしのゝ山  0013:1079  正月元日雨ふりけるに いつしかも初春雨そふりにけるのへの若なも生やしぬらむ  0014:0006  家々に春を翫といふことを 門ことにたつる小松にかさゝれて宿てふやとに春はきにけり  0015:0011  はるきて猶雪 かすめとも春をはよその空にみてとけむともなき雪の下水  0016:0981  題しらす 春浅みすゝのまかきに風さえてまた雪消ぬしからきの里  0017:1082  さかにまかりたりけるに雪ふりかゝりけるをみをきて出しことなと申  つかはすとて をほつかな春の日数のふるまゝにさかのゝ雪は消やしぬらむ 【上二ウ】  0018:1083  かへし                静忍法師 立帰り君やとひくと待ほとにまた消やらすのへのあは雪  0019:0012  題しらす 春しれと谷の下水もりそくる岩まの氷ひま絶にけり  0020:0999 小せりつむ沢の氷のひまたえて春めき初るさくらゐの里  0021:1000              【の】 くる春は嶺の霞をさきたてゝ谷けかけひをつたふ也けり  0022:0990 雪とくるしみゝにしたく唐崎の道行にくきあしからの山  0023:0007  元日子日にて侍りけるに 子日してたてたるまつにうへそへむちよかさぬへき年のしるしに  0024:0016  子日 春ことにのへの小松を引人はいくらのちよをふへき成らむ  0025:0017 子日する人に霞はさき立て小松かはらをたなひきにけり  0026:0018 子日しに霞たなひくのへに出て初うくいすの声をきく哉 【上三オ】  0027:1201  五葉の下にふたはなる小松ともの侍けるを子日にあたりける         〔うイ〕  ひをりひつにひきそへてつかはすとて 君かためこえうの子日しつる哉たひ/\ちよをふへきしるしに  0028:1202  たゝの松ひきそへてこの松の思こと申へくなむとて 子日するのへの我こそぬしなるをこえうなしとて引人のなき  0029:0021  若菜 春日野は年のうちには雪つみて春は若菜のをふる也けり  0030:0020  雪中若菜 けふはたゝ思ひもよらて帰りなむ雪つむのへの若な也けり  0031:0022  雨中若菜 春雨のふるのゝ若な生ぬらしぬれ/\つまむかたみ手ぬきれ  0032:0019  わかなに初子のあひたりけれは人のもとへ申つかはしける わかなつむ今日に初子のあひぬれは松にや人の心ひくらむ  0033:0023  若莱によせてふるきををもふといふことを 【上三ウ】 わかなつむのへの霞そ哀なる昔を遠く隔つと思へは  0034:0024  老人の若菜といへることを 卯杖つき七草にこそ出にけれ年をかさねてつめる若なに  0035:0025  寄若菜述懐といふことを 若な生る春ののもりに我なりてうき世を人につみしらせはや  0036:1077  野に人あまた侍けるをなにする人そと聞けれはなつむものなり                          〔にイ〕  とこたへけるにとしのうちに立かはる春のしるしの若なか  さはとをもひて としははや月なみかけて越にけりむへつみけらしゑくのわか立  0037:1452  題しらす                        【ゑ】 沢もとけすつめとかたみにとゝまらてめにもたまらぬえくのくさくき  0038:0014  海辺の霞といふことを 【上四オ】 もしほやく浦のあたりは立のかて烟あらそふ春霞かな  0039:0015        〔にイ〕  おなし心を伊勢のふたみといふ所にて 波こすとふたみの松のみえつるは梢にかゝる霞なりけり  0040:0786  霞によせてつれなきことを なき人をかすめる空にまかふるは道をへたつる心なるへし  0041:0738  世にあらしとをもひける頃東山にて人々霞によせて思ひを  のへけるに 空になる心は春の霞にてよにあらしとも思ひたつ哉  0042:0739  おなし心をよみける 世をいとふ名をたにもさはとゝめ置て数ならぬ身の思ひ出にせむ  0043:0013  題しらす かすますは何をか春と思はましまた雪消ぬみよしのゝ山  0044:0037  梅を かにそまつ心しめ置梅の花色はあたにも散ぬへけれは 【上四ウ】  0045:0038  山里の梅といふことを かをとめむ人をこそまて山里のかきねの梅のちらぬ限は  0046:0039 心せむしつか垣ほの梅はあやなよしなく過る人とゝめける  0047:0040 この春はしつかかきほにふれわひて梅かゝとめむ人したしまむ  0048:0046  旅のとまりの梅 ひとりぬる草の枕のうつりかは垣ねの梅の匂ひ也けり  0049:0047  古き砌の梅 何となく軒なつかしき梅故に住けむ人のこゝろをそしる  0050:0041  さかに住けるに道をへたてゝ坊の侍りけるより梅の風にちり  けるを ぬしいかに風渡るとていとふらむよそにうれしき梅の匂を  0051:0042  庵の前なりける梅をみてよめる 【上五オ】 梅かゝを山ふところに吹ためて入こむ人にしめよ春風  0052:0043  いせのにしふく山と申す所に侍りけるに庵の梅かうはしくにほひ  けるを 柴の庵による/\梅の匂ひきてやさしきかたも有住ひ哉  0053:0027  閑中鴬といふことを 鴬のこゑそ霞にもれてくる人めともしき春の山里  0054:0028  雨中鴬 うくひすの春さめ/\と鳴ゐたる竹の雫や涙なるらむ  0055:0029  すみける谷に鴬の声せすなりにけれは ふるすうとく谷の鴬なりはては我やかはりて鳴むとすらむ  0056:0030 鴬は谷のふるすを出ぬともわか行方をはわすれさらなむ  0057:0031 うくいすは我をすもりにたのみてや谷の外へは出て行らむ  0058:0032 春のほとはわかすむ庵の友になりて古巣な出そ谷の鴬 【上五ウ】  0059:0026  鴬によせておもひをのへけるに うき身にて聞くもをしきは鴬の霞にむせふ曙のこゑ  0060:0044  梅に鴬の鳴けるを 梅かゝにたくへて聞は鴬の声なつかしき春の山さと  0061:0045 つくり置し梅のふすまに鴬は身にしむ梅のかやうつすらむ  0062:1006  題しらす 山ふかみ霞こめたる柴の庵にことゝふものは谷の鴬  0063:1007 過て行羽風なつかし鴬のなつさひけりな梅の立枝を  0064:1008 鴬は田舎の谷のすなれともたみたる声はなかぬ也けり  0065:1009 鴬の声にさとりをうへきかは聞嬉しさもはかなかりけり  0066:1084  鳴たえたりけるうくひすの住侍りける谷に声のしけれは 思ひ出て古巣にかへる鴬は旅のねくらや住うかるらむ 【上六オ】  0067:1081  深山不知春といふことを 雪分てとやまか谷の鴬は麓のさとに春やつくらむ  0068:0055  山里の柳 山かつのかた岡かけてしむる庵のさかひにたてる玉のを柳  0069:0056  柳風にみたる み渡せはさほのかはらにくりかけて風によらるゝ青柳の糸  0070:0057  雨中柳 中々に風のをすにそ乱ける雨にぬれたる青柳のいと  0071:0058  水辺柳 水底にふかきみとりの色みえて風に浪よる河柳かな  0072:0163  さはらひ なをさりに焼捨てしのゝさはらひは折人なくてほとろとやなる  0073:0054  霞に月のくもれるをみて 雲なくてをほろなりともみゆる哉霞かゝれる春のよの月  0074:0048  山さとの春雨といふことを大はらにて人々よみけるに 春雨の軒たれこむるつれ/\に人にしられぬ人のすみかゝ 【上六ウ】  0075:0033  きゝすを もえ出る若なあさると聞ゆ也ききす鳴のゝ春の曙  0076:0034 生かはる春の若草まちわひて原の枯野にきゝす鳴也  0077:0035 片岡にしはうつりして鳴きゝす立羽をとしてたかゝらぬかは  0078:0036 春霞いつち立出て行きにけむきゝすすむのを焼てける哉  0079:0051  帰雁 玉つさのはしかきかともみゆる哉とひをくれつゝ帰る雁かね  0080:0049  霞中帰雁といふことを 何となくをほつかなきは天の原霞にきえて帰る雁かね  0081:0050 かりかねは帰る道にやまとふらむこしの中山霞へたてゝ  0082:0052  山家よふことり 山さとに誰を又こはよふこ鳥ひとりのみこそすまむと思ふに  0083:1042  題しらす ませにさく花にむつれてとふてふのうら山しきもはかなかりけり 【上七オ】  0084:1085  春の月あかゝりけるに花またしき桜のえたを風のゆるかし  けるをみて 月みれは風に桜のえたなへて花かとつくる心ちこそすれ  0085:0061  花を待心を 今さらに春を忘るゝ花もあらし安く待ちつゝけふもくららさむ  0086:0062 おほつかないつれの山の峰よりかまたるゝ花の咲はしむらむ  0087:0059  待花忘他といふことを まつによりちらぬ心を山さくら咲なは花のおもひしらなむ   0088:1001  題しらす 春になる桜のえたは何となく花なけれともむつましき哉  0089:1002 空晴る雲なりけりなよしの山花もてわたる風とみたれは  0090:1003 さらに又霞にくるゝ山路哉花をたつぬる春のあけほの  0091:1004 雲もかゝれ花とを春はみて過むいつれの山もあたに思はて  0092:1005 雲かゝる山とは我も思ひ出よ花故なれしむつひ忘れす 【上七ウ】  0093:0060  独山の花をたつぬといふことを 誰かまた花を尋てよしの山苔ふみわくる岩つたふらむ  0094:0097  老木の桜の所々に咲たるをみて わきてみむ老木は花も哀也今いくたひか春にあふへき  0095:0096  老見花といふことを 老つとに何をかせまし此春の花待つけぬ我身なりせは  0096:0095  春は花を友といふことをせか院のさい院にて人々よみけるに をのつから花なきとしの春もあらは何につけてか日をくらさまし  0097:0102  せか院の花盛なりける頃としたゝかいひ送りける をのつからくる人あらはもろともになかめまほしき山さくら哉  0098:0103  返し なかむてふ数に入る可身なりせは君か宿にて春はへなまし  ---- 上七  0099:0104  上西門院女房法勝寺の花みられけるに雨のふりて暮にけれ  は帰られにけり又の日兵衛の局のもとへ花の御幸をもひ出さ  せ給らむと覚てかくなむ申さまほしかりしとてつかはしける みる人に花も昔を思ひ出てこひしかるへし雨にしほるゝ  0100:0105  返し いにしへを忍ふる雨と誰かみむ花もそのよの友しなけれは  0101:0139  白河の花庭面白かりけるをみて あたにちる梢の花をなかむれは庭には消ぬ雪そつもれる  0102:0138  庭の花波に似たりといふことをよみみけるに 風あらみ梢の花のなかれきて庭に波立つしら川のさと  0103:0099  山寺の花さかりなりけるにむかしを思ひ出て よしの山ほきちつたひに尋入て花みし春は一むかしかも  0104:0106  わかき人々はかりなむ老にける身は風の煩しさにいと  はるゝことにて有けるなむやさしくきこえける雨の  ふりけるに花の下に車を立てなかめける人に ぬるともとかけをたのみて思ひけむ人の跡ふむけふにもあるかな  0105:0107  世をのかれて東山に侍る頃白川の花さかりに人さそひけ  れはまかり帰りけるに昔をもひ出て ちるをみて帰る心や桜花むかしにかはるしるしなるらむ  0106:0092  かきたえてこととはすなりにける人の花見に山さとへまうて  きたりと聞てよみける 年をへてをなし梢とにほへとも花こそ人にあかれさりけれ  0107:0093  花の下にて月をみてよみける  ---- 上八 雲にまかふ花の下にてなかむれは朧に月はみゆるなりけり  0108:0094  春の明ほの花みけるに鴬の鳴けれは 花の色や声に染らむ鴬のなく音ことなる春のあけほの  0109:0098  屏風のゑを人々よみけるに春の宮人むれて花みける所に  よそなる人のみやりてたてりけるを 木のもとはみる人しけし桜花よそに詠て我は惜む  0110:1090  寂然もみちのさかりに高野に詣て出にける又のとしの  花のをりに申つかはしける もみちみし高野のみねの花盛たのめし人の待るゝやなそ  0111:1091  かへし 寂然 ともにみし嶺のもみしのかひなれや花の折にもをもひ出ける  0112:0090  閑ならむと思ひける頃花見に人々のまうてきけれは 花見にとむれつゝ人のくるのみそあたら桜のとかには有ける  0113:0091 花もちり人もこさらむをりは又山のかひにてのとか成へし  0114:0063  花のうたあまたよみけるに 空に出ていつくともなく尋れは雪とは花のみゆる也けり  0115:0064 雪とちし谷の古巣を思ひ出て花にむつるゝ鴬のこゑ  0116:0065 よしの山雲をはかりに尋入て心にかけし花をみる哉  0117:0066 おもひやる心や花にゆかさらむ霞こめたるみよしのゝ山  0118:0067 をしなへて花のさかりに成にけり山のはことにかゝるしら雲  0119:0068 まかふ色に花咲ぬれはよしの山春は晴せぬみねの白雲  0120:0069 よしの山梢の花をみし日より心は身にもそはすなりにき  ---- 上九  0121:0070 あくかるゝ心はさても山桜ちりなむ後や身にかへるへき  0122:0071 花みれはそのいはれとはなけれとも心のうちそくるしかりけり  0123:0072 白河の梢をみてそなくさむるよしのゝの山にかよふ心を  0124:0073 引かへて花みる春はよるはなく月みる秋は昼なからなむ  0125:0074 花ちらて月はくもらぬ世なりせはものを思はぬ我身ならまし  0126:0075 たくひなき花をし枝にさかすれは桜にならふ木そなかりける  0127:0076 身を分てみぬ梢なくつくさはやよろつの山の花のさかりを  0128:0077 桜さくよもの山辺をかぬるまにのとかに花をみぬ心ちする  0129:0078 花にそむ心のいかて残けむすてはてゝきとをもふわかみに  0130:0079 白河の春の梢のうくひすは花のことはをきくここちする  0131:0080 ねかはくは花の下にて春しなむその二月のもちつきのころ  0132:0081 仏には桜の花を奉れわかのちの世を人とふらはゝ  0133:0082 何とかや世にありかたき名をしたる花に桜にまさりしもせし  0134:0083 山桜かすみの衣あつくきて此春たにも風つゝまなむ  0135:0084 思ひやる高ねの雲の花ならはちらぬ七日ははれしとそ思ふ  0136:0085 のとかなる心をきへに過しつゝ花故にこそ春をまちしか  0137:0086 かさこしの嶺のつゝきに咲花はいつさかりともなくやちるらむ  0138:0087 ならひありて風さそふとも山桜尋る我を待つけてちれ  0139:0088 すそのやく烟そ春はよしの山花をへたつる霞也ける  0140:0089 今よりは花みむ人につたへをかむ世をのかれつゝ山にすまむと  0141:1051  題しらす わひ人の涙に似たる桜哉風身にしめは先こほれつゝ  0142:1052 よしの山やかて出しと思ふ身を花ちりなはと人や待らむ  ---- 上十  0143:1053 人もこす心もちらて山さとは花をみるにも便ありけり  0144:1011 をなしくは月の折さけ山桜花みるをりのたえまあらせし  0145:0145  花のうた十五首よみけるに よしの山人に心をつけかほに花よりさきにかかる白雲  0146:0146 山寒み花咲へくもなかりけりあまりかねても尋きにけり  0147:0147 かたはかりつほむと花を思ふよりそらまた心物になるらむ  0148:0148 おほつかな谷は桜のいかならむ嶺にはいまたかけぬ白雲  0149:0149 花ときくは誰もさこそは嬉けれ思ひしつめぬ我こゝろ哉  0150:0150 初花のひらけはしむる梢よりそはえて風のわたるなる哉  0151:0151 おほつかな春は心の花にのみいつれのとしかうかれそめけむ  0152:0152 いさことしちれと桜をかたらはむ中々さらは風やをしむと  0153:0153 風ふくと枝をはなれておつましく花とちつけよ青柳のいと  0154:0154 吹風のなへて梢にあたる哉かはかり人のをしむ桜を  0155:0155 なにとかくあたなる花の色をしも心にふかく染はしめけむ  0156:0156 おなし身のめつらしからすをしめはや花もかはらす咲はちるらむ  0157:0157 嶺にちる花は谷なる木にそ咲いたくいとはし春の山風  0158:0158 山をろしに乱れて花の散けるをいははなれたる瀧とみたれは  0159:0159 花もちり人も都へ帰りなは山さひしくやならむとすらむ  0160:1471  百首歌中花十首 よしの山花の散にしこの本にとめし心は我を待らむ  0161:1472 よしの山高ねの桜咲そめはかゝらむ物か花のうす雲  0162:1473 人はみなよしのゝ山へいりぬめり都の花にわれはとまらむ  ---- 上十一  0163:1474 尋いる人にはみせし山桜われとを花にあはむと思は  0164:1475 山桜咲ぬと聞てみにゆかむ人をあらそふ心とゝめて  0165:1476 山さくらほとなくみゆる匂ひ哉さかりを人にまたれ/\て  0166:1477 花の雪の庭につもると跡つけしかとなきやとゝいひちらせて  0167:1478 なかめつるあしたの雨の庭の面に花の雪しくはるの夕暮  0168:1479 よしの山ふもとの瀧になかす花や嶺につもりし雪の下水  0169:1480 ねにかへる花ををくりてよしの山夏のさかひに入て出ぬる  0170:0144  遠山残花 よしの山一むらみゆる白雲は咲をくれたる桜なるへし  0171:0109  落花のうたあまたよみけるに 勅とかやくたす御門のいませかしさらは恐れて花やちらぬと  0172:0110 波もなく風ををさめし白川の君のをりもや花はちりけむ  0173:0111 いかてわれ此よの外の思ひ出に風をいとはて花をなかめむ  0174:0112 年をへて待もをしむと山さくら心を春はつくす也けり  0175:0113 よしの山谷へたなひく白雲は嶺の桜の散にや有らむ  0176:0114 山颪の木のもとうつむ花の雪はいはゐにうくも氷とそみる  0177:0115 春風の花のふゝきにうつもれて行もやられぬ志賀の山道  0178:0116 立まかふ嶺の雲をははらふとも花をちらさぬ嵐なりせは  0179:0117 よしの山花ふきくして峰こゆる嵐は雲とよそにみゆらむ  0180:0118 をしまれぬ身たにも世には有物をあなあやにくの花の心や  0181:0119 うき世にはとゝめおかしと春風のちらすは花ををしむ也けり  0182:0120 もろともに我をもくしてちりね花うき世をいとふ心ある身そ  0183:0121 思へたゝ花のなからむ木のもとに何をかけにて我身住なむ  ---- 上十二  0184:0122 なかむとて花にもいたくなれぬれは散わかれこそ悲しかりけれ  0185:0123 をしめはと思ひけもなくあたにちる花は心そかしこかりける  0186:0124 梢ふく風の心はいかゝせむしたかふ花のうらめしき哉  0187:0125 いかてかはちらてあれとも思ふへきしはしとしたふなさけしれ花  0188:0126 木のもとの花にこよひは埋れてあかぬ梢を思ひあかさむ  0189:0127 このもとの旅ねをすれはよしの山花のふすまをきする春風  0190:0128 雪とみてかけに桜の乱るれは花のかさきる春のよの月  0191:0129 ちる花ををしむ心やとゝまりて又こむ春の誰になるへき  0192:0130 春ふかみ枝もうこかてちる花は風のとかにはあらぬ成へし  0193:0131 あなかちに庭をさへ吹あらし哉さこそ心に花をまかせめ  0194:0132 あたにちるさこそ梢の花ならめすこしはのくせ春の山風  0195:0133 心えつたゝ一すちに今よりは花ををしまて風をいとはむ  0196:0134 よしの山桜にまかふ白雲の散なむ後は晴すもあらなむ  0197:0135 花とみはさすかなさけをかけましを雲とて風のはらふなるへし  0198:0136 風さそふ花の行方はしらねともをしむ心は身にとまりけり  0199:0137 花さかり梢をさそふ風ならてのとかにちらむ春はあらはや  0200:0143  雨中落花 梢うつ雨にしほれてちる花のをしき心を何にたとへむ  0201:0142  風の前の落花といふことを 山桜枝きる風の名残なく花をさなから我物にする  0202:0108  山路落花 ちり初る花の初雪ふりぬれはふみ分まうき志賀の山越  0203:0141  夢中落花といふことを前斎院にて人々よみけるに 春風の花をちらすとみる夢は覚てもむねのさはく也けり  ---- 上十三  0204:0160  散て後花をおもふといふことを 青葉さへみれは心のとまる哉散にし花の名残と思へは  0205:1089  桜にならひてたてりける柳に花のちりかゝりけるをみて 吹みたる風になひくとみしほとは花そ結へる青柳の糸  0206:0787  花のちりたりけるにならひて咲はしめけるさくらをみて ちるとみれは又咲花の匂ひにもをくれさきたつためし有けり  0207:0053  苗代 苗代の水を霞はたな引てうちひのうへにかくる也けり  0208:1454  題しらす たしろみゆる池のつゝみのかさそへてたゝふる水や春のよのため  0209:1455 庭になかすし水のすゑをせきとめて門田やしなふ頃にも有かな  0210:0169  蛙 ま菅生る山田に水をまかすれは嬉しかほにも鳴蛙かな  0211:0170 みさひゐて月もやとらぬ濁江に我すまむとて蛙鳴なり  0212:1034  題しらす かり残すみつのまこもにかくろひてかけもちかほに鳴蛙哉  0213:0161  菫 あとたえてあさちしけれる庭の面に誰分入て菫つみけむ  0214:0162 誰ならむあらたのくろに菫つむ人は心のわりなかりけり  0215:1031  題しらす 菫さくよこのゝつはな生ぬれは思ひ/\に人かよふなり  0216:1462 つはなぬくきたのゝちはらあせ行は心すみれそ生かはりける  0217:0165  山路のつゝし はひつたひをらてつゝしを手にそとるさかしき山のとり所には  0218:0166  つゝし山のひかたりといふことを つゝし咲山の岩かけ夕はへてをくらはよそのなのみ也けり  0219:0164  かきつはた 沼水にしけるまこものわかれぬを咲隔たるかきつはた哉  0220:0167  款冬 きし近みうへけむ人そうらめしき波にをらるゝ山ふきの花  0221:0168 山吹の花さくさとに成ぬれはこゝにもゐてとをもほゆる哉 【款冬(かんとう):フキノタウ 倭俗款冬二字云山吹大誤也(文明本節用集)】  ---- 上十四  0222:0172  伊勢にまかりたりけるにみつと申所にて海辺の春の暮  といふことを神主ともよみけるに 過る春潮のみつより船出して波の花をやさきにたつらむ  0223:0173  三月一日たらて暮けるによみける 春故にせめても物を思へとやみそかにたにもたらて暮ぬる  0224:0174  三月晦日に 今日のみと思へはなかき春の日もほとなく暮る心ちこそすれ  0225:0175 行春をとゝめかねぬる夕暮は明ほのよりもあはれなりけり  Subtitle  夏歌  0226:0176  題しらす 限あれは衣はかりをぬきかへて心は花をしたふなりけり  0227:0177  夏のうたよみけるに 草茂る道かりあけて山さとに花みし人の心をそみる  0228:0180  夜卯花 まかふへき月なきころの卯花はよるさへさらすぬのかとそみる  0229:0178  水辺卯花 たつた川きしのまかきをみ渡せはゐせきの波にまかふ卯花  0230:0179 山川の波にまかへる卯花を立かへりてや人はをるらむ  0231:0181  社頭卯花 神垣のあたりに咲も便あれやゆふかけたりとみゆる卯花  0232:0171  春のうちに郭公をきくといふことを 嬉しとも思ひそわかぬ郭公春きくことのならひなけれは  0233:0185  時鳥 我やとに花たちはなをうへてこそ山ほとゝきす待へかりけれ  ---- 上十五  0234:0186 尋れは聞かたきかと時鳥こよひはかりはまちこゝろみむ  0235:0187 時鳥まつ心のみつくさせて声をはをしむ五月也けり  0236:0201  雨のうちに郭公を待といふことをよみける ほとゝきすしのふ卯月も過にしを猶こゑをしむさみたれの空  0237:0189  郭公をまちて明ぬといふことを 時鳥なかて明けぬとつけかほにまたれぬ鳥のねそ聞ゆなる  0238:0190 ほとゝきすきかて明ぬる夏のよの浦島のこはまこと也けり  0239:0188  人にかはりて まつ人の心をしらは郭公たのもしくてやよをあかさまし  0240:0182  無言なりけるころ郭公の初こゑを聞て 時鳥人にかたらぬ折にしも初ね聞こそかひなかりけれ  0241:0183  不尋聞子規といふことを賀茂社にて人々よみけるに 郭公卯月のいみにゐこもるを思ひしりても鳴なる哉  0242:0202  雨中時鳥 五月雨の晴まもみえぬ雲路より山ほとゝきす鳴て過也  0243:0184  夕暮時鳥といふことを 里なるゝたそかれときの郭公きかすかほにて又なのらせむ  0244:0203  山寺の時鳥といふことを人々よみけるに 郭公きゝにとてしもこもらねと初瀬の山は便有けり  0245:0196  時鳥を ほとゝきす聞折にこそ夏山の青葉は花にをとらさりけれ  0246:0197 時鳥思ひもわかぬ一こゑをきゝつといかゝ人にかたらむ  0247:0198       【斗:はかり】 ほとゝきすいか斗なる契にて心つくさて人の聞らむ  0248:0199 かたらひし其よの声は時鳥いかなるよにも忘むものか  0249:0200 時鳥花たちはなはにほふとも身をうの花のかきね忘るな  ---- 上十六  0250:0191  時鳥のうた五首よみけるに ほとゝきすきかぬ物故まよはまし花を尋ぬ山路なりせは  0251:0192 待ことは初音まてかと思ひしに聞ふるされぬほとゝきす哉  0252:0193 聞をくる心をくして時鳥たかまの山のみねこえぬ也  0253:0194 大井河をくらの山のほとゝきすゐせきに声のとまらましかは  0254:0195 時鳥そのゝちこえむ山路にもかたらぬ声はかはらさらなむ  0255:1481  百首歌之中郭公十首 なかむ声や散ぬる花の名残なるやかてまたるゝ時鳥かな  0256:1482 春くれてこゑに花咲ほとゝきす尋ることもまつもかはらぬ  0257:1483 きかて待人思ひしれ時鳥聞ても人は猶そまつめる  0258:1484 所から聞きかたきかと郭公さとをかへても待むとそ思ふ  0259:1485 初声を聞ての後は時鳥待も心のたのもしき哉  0260:1486 五月雨の晴ま尋て郭公雲井につたふ声聞ゆ也  0261:1487 郭公なへて聞には似さりけりふかき山へのあかつきの声  0262:1488 時鳥ふかき山へにすむかひは梢につゝく声を聞くなり  0263:1489 よるのとこをなきうかされむ時鳥物思ふ袖を問にきたらは  0264:1490 ほとゝきす月のかたふく山のはに出つるこゑのかへりいる哉  0265:1466  題しらす 山さとの人もこすゑの松かうれに哀にきゐる時鳥かな  0266:1467 ならへける心はわれか郭公君まちえたる宵のまくらに  0267:0204  五月の晦日に山さとにまかりて立帰にけるを時鳥もすけなく きゝ捨て帰しことなと人の申つかはしける返ことに 時鳥名残あらせて帰りしか聞捨るにも成にける哉  ----  上十七  0268:0736  五日さうふを人のつかはしたりける返事に 世のうきにひかるゝ人はあやめ草心のねなき心地こそすれ  0269:0206  さることありて人の申つかはしける返ことに五日 折におひて人に我身やひかれましつくまの沼のあやめなりせは  0270:0207  高野に中院と申所にあやめふきたる坊の侍けるに桜のちりけるか  めつしくをほえてよみける 桜ちるやとにかさなるあやめをは花あやめとやいふへかるらむ  0271:0208 散花をけふのあやめのねにかけてくすたまともやいふへかるらむ  0272:0209  五月五日山寺へ人のけふいる物なれはとてさうふをつかはしたりける  返事に 西にのみ心そかゝるあやめくさこの世はかりのやとゝ思へは  0273:0210 みな人の心のうきはあやめ草西に思ひのひかぬ也けり  0274:0211 五月雨の軒の雫に玉かけて宿をかされるあやめ草哉  0275:0205  題しらす 空晴て沼のみかさををとさすはあやめもふかぬ五月成へし  0276:0212  五月雨 水たゝふ入江のまこもかりかねてむなてにすつる五月雨のころ  0277:0213 五月雨に水まさるらし宇治はしやくもてにかゝる波のしらいと  0278:0214 こさゝしく古里をのゝ道のあとを又さはになす五月雨のころ  0279:0215 つく/\と軒の雫をなかめつゝ日をのみくらす五月雨のころ  0280:0216 東屋のをかやか軒のいと水に玉ぬきかくるさみたれの頃  0281:0217 五月雨に小田のさ苗やいかならむあせのうき土あらひこされて  0282:0218 五月雨のころにしなれはあら小田に人にまかせぬ水たゝいけり  0283:0219  ある所にて五月雨のうた十五首よみ侍し人にかはりて 五月(雨)にほすひまなくてもしほ草烟もたてぬうらのあま人  ---- 上十八  0284:0220 五月雨はいさゝ小川の橋もなしいつくともなくみほになかれて  0285:0221 水無瀬河をちのかよひち水みちて船わたりするさみたれの頃  0286:0222 ひろせ河わたりの沖のみをつくしみかさそふらし五月雨のころ  0287:0223 はやせ川つなてのきしを沖にみてのほりわつらふ五月雨の頃  0288:0224 水わくる難波ほり江のなかりせはいかにかせましさみたれのころ  0289:0225 舟とめしみなとのあしまさほたえて心行みむさみたれのころ  0290:0226 みな底にしかれにけりなさみたれて水のまこもをかりにきたれは  0291:0227 五月雨のをやむ晴まのなからめや水のかさほせまこもかり舟  0292:0228 さみたれにさのゝ舟はしうきぬれはのりてそ人はさしわたるらむ  0293:0229 五月雨の晴れぬ日かすのふるまゝにぬまのまこもはみかくれにけり  0294:0230 水なしと聞てふりにしかつまたの池あらたむる五月雨のころ  0295:0231 五月雨は行へき道のあてもなしをさゝかはらもうきに流て  0296:0232 さみたれは山田のあせの瀧まくらかすをかさねておつる也けり  0297:0233 河わたのよとみにとまる流木のうきはしわたす五月雨のころ  0298:0234 おもはすもあなつりにくき小川哉五月の雨に水まさりつゝ  0299:0237  深山水鶏 杣人の暮にやとかる心ちして庵をたたく水鶏なりけり  0300:0245  題しらす 夏の夜はしのゝ小竹のふし近みそよや程なく明くる也けり  0301:0250  夏の月のうたよみけるに なつのよもをさゝか原に霜そをく月の光のさえしわたれは  0302:0251 山川の岩にせかれてちる波をあられとそみる夏のよの月  0303:0254  雨中夏月 夕立のはるれは月そやとりける玉ゆりすふる蓮のうきはに  0304:0247  海辺夏月 露のほる芦の若葉に月冴て秋をあらそふ難波江のうら  ---- 上十九  0305:0252  池上夏月といふことを かけさえて月しもことにすみぬれは夏の池にもつらゝゐにけり  0306:0248  泉にむかひて月をみるといふことを むすひあくる泉にすめる月かけは手にもとられぬ鏡也けり  0307:0249 むすふ手にすゝしきかけをそふる哉清水にやとる夏のよの月  0308:0239  撫子 かき分て折は露こそこほれけれあさちにましる撫子のはな  0309:0240  雨中撫子といふことを 露をもみそのゝ撫子いかならむあらくみえつる夕立のそら  0310:0244  ともし ともしするほくしの松もかへなくにしかめあはせて明す夏のよ  0311:0241  夏のゝ草をよみける みまくさに原の小薄しかふとてふしとあせぬとしか思ふらむ  0312:0242  旅行草深といふことを たひ人の分る夏のゝ草しけみ葉末にすけの小笠はつれて  0313:0243  行旅夏といふことを 雲雀あかるおほのゝち原夏くれはすゝむ木かけをねかひてそ行  0314:1032  題しらす 紅の色なりなからたてのほのからしや人のめにもたてぬは  0315:1033 蓬生のさることなれや庭の面にからす扇のなそしけるらむ  0316:0246 夏のよの月みることやなかるらむかやり火たつるしつのふせやは  0317:0253  蓮池にみてりといふことを おのつから月やとるへきひまもなく池に蓮の花咲にけり  0318:0235  となりのいつみ 風をのみ花なきやとは待/\て泉のすゑを又むすふ哉  0319:1453  題しらす 君かすむきしの岩より出る水の絶ぬ末をそ人も汲ける  ---- 上二十  0320:0236  水辺納凉といふことを北白河にてよみける 水の音にあつさ忘るゝまとひ哉梢のせみの声もまきれて  0321:1169  木陰納凉といふことを人々よみけるに けふもまた松の風ふくをかへゆかむきのふすゝみし友にあふやと  0322:0238  題不知 夏山の夕下風のすゝしさにならの木かけのたゝまうき哉  0323:1035 柳はら河風ふかぬかけならはあつくやせみの声にならまし  0324:1036 ひさき生てすゝめとなれるかけなれや波打岸に風わたりつゝ  0325:0255  凉風如秋 またきより身にしむ風のけしき哉秋さきたつるみやまへの里  0326:0256  松風如秋といふことを北白川なる所にて人々よみて又水声  秋ありといふことをかさねけるに 松風の音のみなにか石はしる水にも秋はありける物を  0327:0257  山家待秋といふことを 山さとは外面のまくす葉をしけみうら吹かへす秋を待哉  0328:0996  題しらす あれにける沢田のあせにくらゝ生て秋待へくもなきわたり哉  0329:0997 つたひくるかけひを絶すまかすれは山田は水も思はさりけり  0330:0258  六月祓 みそきしてぬさとりなかす河のせにやかて秋めく風そ凉しき  Subtitle  秋歌  0331:0259  山里のはしめの秋といふことを さま/\の哀をこめて梢ふく風に秋しる深山へのさと  0332:0260  山居のはしめの秋といふことを 秋たつと人はつけねとしられけり山のすそのゝ風のけしきに  0333:0262  初秋の頃なるをと申所にて松風の音を聞て つねよりも秋になるをのまつ風はわきて身にしむ心ちこそすれ  0334:1029  題しらす すかるふすこくれか下の葛まきを吹うらかへす秋のはつ風  0335:0263  七夕 いそきをきて庭の小草の露ふまむやさしき数に人や思ふと  0336:0264 暮ぬめりけふ待つけて七夕は嬉きにもや露こほるらむ  0337:0265 天河けふの七日は長きよのためしにもひくいみもしつへし  0338:0266 ふねよする天の川への夕くれはすゝしき風や吹わたるらむ  0339:0267 待つけてうれしかるらむ七夕の心のうちそ空にしらるゝ  0340:0268  蜘のゐかきたるをみて さゝかにのくもてにかけて引いとやけふ七夕にかさゝきのはし  0341:0299  秋のうたに露をよむとて 大かたの露には何のなるならむ袂におくはなみた也けり  0342:1040  題しらす いそのかみふるきすみかへ分いれは庭のあさちに露そこほるゝ  0343:0986 をさゝはら葉すゑの露の玉にゝてはしなき山を行心ちする  0344:0290  萩 思ふにも過て哀に聞ゆるは萩のはみたる秋の夕かせ  0345:0292  萩の風露をはらふ をしかふす萩咲のへの夕露をしはしもためぬ萩の上風  ---- 上二十二  0346:0293  隣の夕の萩の風 あたりまて哀しれともいひかほに萩の音する秋の夕風  0347:0291  題しらす をしなへて木草の末の原まてもなひきて秋の哀みえける  0348:0277  野萩似錦といふことを けふそしるその江にあらふ唐錦萩咲のへにありける物を  0349:0275  萩野にみてり 咲そはむ所のゝへにあらはやは萩より外のはなもみるへく  0350:0276  萩野の家にみてりといふことを 分て出る庭しもやかてのへなれは萩のさかりを我物にみる  0351:0984  題しらす いはれのゝ萩か絶まのひま/\にこのてかしはの花咲にけり  0352:0985 衣手にうつりし花の色なれや袖ほころふる萩か花すり  0353:0274  終日野の花をみるといふことを 乱れ咲のへの萩はら分暮て露にも袖を染てける哉  0354:0270  野径秋風 末は吹風はのもせにわたるともあらくは分し萩の下露  0355:0281  女郎花 をみなへし分つる袖と思はゝやおなし露にもぬるとしれゝは  0356:0282 をみなへし色めくのへにふれはらふ袂につゆやこほれかかると  0357:0287  水辺女郎花といふことを 池の面にかけをさやかにうつしもて水かゝみみるをみなへし哉  0358:0288 たくひなき花のすかたを女郎花池のかゝみにうつしてそみる  0359:0289  女郎花水にちかしといふことを をみなへし池のさ波に枝ひちて物思ふ袖のぬるゝかほなる  0360:0285  女郎花帯露といふことを 花の枝に露のしら玉ぬきかけて祈袖ぬらすおみなへし哉  ---- 上二十三  0361:0286 おらぬより袖そぬれけるをみなへし露むすほれてたてるけしきに  0362:0283  草花露重 けさみれは露のすかるに折ふして起もあからぬ女郎花哉  0363:0284 大方の野への露にはしほるれと我涙なきをみなへしかな  0364:0271  草花時を得たりといふことを いとすすきぬはれて鹿のふすのへにほころひ安き蘭かな 【蘭(ふちはかま):蘭草=藤袴の漢名】  0365:0273  霧中草花 ほに出るみ山か裾のむらすゝきまかきにこめてかこふ秋霧  0366:0272  行路草花 をらて行袖にも露そこほれける萩のはしけきのへの細道  0367:0269  草花道をさへきるといふことを 夕露をはらへは袖に玉消て道分かぬるをのゝ萩原  0368:1176  忍西入道西山のふもとに住けるに秋の花いかにをもしろからむ  とゆかしうと申つかはしける返事にいろ/\の花を折あつめて 鹿のねや心ならねはとまるらむさらてはのへをみなみする哉  0369:1177  かへし 鹿の立のへのにしきのきりはしは残多かる心ちこそすれ  0370:0278  草花をよみける しけり行しはの下草をはれ出て招くや誰をしたふ成らむ  0371:1037  題しらす 月のためみさひすゑしと思ひしにみとりにもしく池の浮草  0372:1043 うつり行色をはしらすことのはの名さへあたなる露草の花  0373:0279  薄路にあたりてしけしといふことを 花すゝき心あてにそ分て行ほのみし道のあとしなけれは  0374:0280  古籬苅萱 籬(色)あれて薄ならねとかるかやもしけきのへとは成ける物を  0375:0301  人々秋の歌十首よみけるに 玉にぬく露はこほれてむさしのゝ草の葉結ふ秋の初風  ---- 上二十四  0376:0302 ほに出てしのゝを薄まねく野にたはれてたてる女郎花哉  0377:0303 花をこそのへの物とはみにきつれくるれは虫の音をも聞けり  0378:0304 萩のはを吹過て行風の音に心みたるゝ秋の夕くれ  0379:0305 晴やらぬみ山のきりのたえ/\にほのかに鹿の声聞ゆなり  0380:0306 かねてより梢の色を思ふ哉時雨はしむるみ山へのさと  0381:0307 鹿のねをかきねにこめて聞のみか月もすみけり秋の山さと  0382:0308 庵にもる月のかけこそ淋しけれ山田のひたの音はかりして  0383:0309 わつかなる庭の小草の白露をもとめて宿る秋のよの月  0384:0310 何とかく心をさへはつくすらむ我なけきにてくるゝ秋かは  0385:0294  秋のうたよみける中に 吹わたる風も哀をひとしめていつくも凄き秋の夕暮  0386:0295 おほつかな秋はいかなる故のあれはすゝろに物のかなしかるらむ  0387:0296 何ことをいかに思ふとなけれとも袂かわかぬ秋の夕くれ  0388:0297 なにとなく物かなしくそみえ渡る鳥羽田の面のあきの夕暮  0389:0300  山里に人々まかりて秋のうたよみけるに 山さとの外面の岡の高き木にそゝろかましき秋の蝉哉  0390:0473  田家秋夕 なかむれは袖にも露そこほれける外面の小田の秋の夕暮  0391:0474 吹過る風さへことに身に己しむ山田の庵の秋の夕くれ  0392:1054  題しらす 風の音に物思ふ我か色そめて身にしみ渡る秋の夕暮  0393:0298  野の家の秋のよ ねさめつゝなかきよかなといはれのにいく秋まても我身へぬらむ  0394:0452  虫の歌よみ侍けるに  ---- 上二十五 夕されや玉うこく露のこさゝ生に声まつならす蛬かな  0395:0453 秋風にほすゑ波よる苅萱の下葉に虫の声乱る也  0396:0454 蛬なくなるのへはよそなるを思はぬ袖に露そこほるゝ  0397:0455 秋風のふけ行のへの虫のねのはしたなきまてぬるゝ袖哉  0398:0456 むしのねをよそに思ひてあかさねは袂も露はのへにかはらし  0399:0457 のへになく虫もや物はかなしきとこたへましかはとひてきかまし  0400:0458 秋のよに声もをします鳴虫を露まとろますきゝあかす哉  0401:0459 あきのよをひとりやなきてあかさまし友なふ虫の声なかりせは  0402:0460 秋のゝのを花か袖にまねかせていかなる人をまつむしの声  0403:0461 よもすから袂にむしのねをかけてはらひわつらふ袖の白露  0404:0462 ひとりねのねさめの床のさむしろに涙催すきり/\す哉  0405:0463 きり/\す夜寒になるを告かほに枕のもとにきつゝ鳴也  0406:0464 虫のねをよはり行かと聞からに心に秋の日数をそふる  0407:0465 秋ふかみよはるは虫の声のみか聞我とてもたのみやはある  0408:0466 虫のねにさのみぬるへき袂かはあやしや心物おもふらし  0409:0467 物思ふねさめとふらふ蛬人よりもけに露けかるらむ  0410:0468  独聞虫 ひとりねの友にはならて蛬なくねをきけは物思ひそふ  0411:0401  深夜聞蛬 我よとや更行月を思ふらむ声もやすめぬきり/\す哉  0412:0469  故郷虫 草ふかみ分入りてとふ人もあれやふり行宿の鈴むしの声  0413:0470  雨中虫 かへに生る小草に侘る蛬しくるゝ庭の露いとふらし  0414:0471  田家に虫を聞く 小萩咲山田のくろの虫のねに庵もる人や袖ぬらすらむ  ---- 上二十六  0415:0472  夕の道の虫といふことを 打くする人なき道の夕されは声たておくるくつは虫かな  0416:0790  物心ほそう哀なる折しも庵のまくらちかう虫の音聞け  れは そのをりの蓬かもとの枕にもかくこそ虫の音にはむつれめ  0417:0451  年ころ申されたる人の伏見に住と聞て尋まかりたりけるに庭の道も  みえすしけりて虫なきけれは 分て入袖に哀をかけよとて露けき庭にむしさへそなく  0418:0484  秋のすゑに松虫のなくをきゝて さらぬたに声よはりにし松虫の秋のすゑには聞もわかれす  0419:0485 限あれはかれ行のへはいかゝせむむしのねのこせ秋の山さと  0420:0504  十月しめつかた山さとにまかりたりけるに蛬のこゑのわつかに  しけれはよみける 霜うつむ葎か下の蛬あるかなきかに声聞なり  0421:0427  朝に初雁をきく 横雲の風にわかるゝしのゝめに山とひこゆる初雁の声  0422:0426  船中初雁 沖かけて八重のしほちを行船はほのかにそきく初かりのこゑ  0423:0428  夜に入て雁をきく 烏羽にかく玉つさの心ちして雁なき渡る夕やみの空  0424:0429  雁声遠を しら雲を翅にかけて行雁の門田の面の友したふなり  0425:0430  霧中雁 玉つさのつゝきはみえて雁かねの声こそ霧にけたれさりけれ  0426:0431  霧上雁 空色のこなたをうらに立きりの面に雁のかくる玉札 【玉札(ぎょくさつ):手紙の敬語 = 玉梓(章)(たまつさ)】  0427:0973  題しらす つらなりて風に乱て鳴雁のしとろにこゑの聞ゆなる哉  ---- 上二十七  0428:0444  暁の鹿 よを残すねさめに聞そ哀なる夢のゝ鹿にかくや鳴けむ  0429:0445  夕暮に鹿をきく しのはらや霧にまかひて鳴鹿の声かすかなる秋の夕くれ  0430:0447  田庵の鹿 小山田の庵近く鳴鹿のねにをとろかされてをとろかす哉  0431:0446  幽居に鹿をきく となりゐぬはたのかりやにあかすよはしか哀なる物にそ有ける  0432:0448  人を尋て小野にまかりけるに鹿の鳴けれは 鹿のねを聞につけても住人の心しらるゝをのゝ山さと  0433:0443  小倉の麓に住侍けるに鹿の鳴けるをきゝて をしかなく小倉の山のすそちかみたゝひとりすむ我心哉  0434:0436  鹿 したり咲萩のふるえに風かけてすかひ/\にをしか鳴なり  0435:0437 萩かえの露ためす吹秋風にをしかなく也宮城のゝ原  0436:0438 よもすから妻こひかねて鳴鹿の涙やのへのつゆと成らむ  0437:0439 さらぬたに秋は物のみかなしきをなみた催すさをしかの声  0438:0440 山颪に鹿のねたくふ夕くれをものかなしとはいふにや有らむ  0439:0441 鹿もわふ空のけしきもしくるめりかなしかれともなれる秋哉  0440:0442 何となくすまゝほしくそおもほゆる鹿のねたえぬ秋の山さと  0441:0432  霧 鶉なく折にしなれは霧こめて哀さひしき深草の里  0442:0433  霧行客をへたつ 名残多みむつことつきて帰り行人をは霧も立へたてけり  0443:0434  山家霧 立こむる霧の下にも埋れて心はれせぬ深山へのさと  0444:0435 よをこめて竹のあみ戸に立霧の晴はやかてやあけむとすらむ  ---- 上二十八  0445:0974  題しらす 晴かたき山路の雲にうつもれて苔の袂は霧朽にけり  0446:1071  寂然高野に詣て立帰りて大原よりつかはしける へたてこし其年月も有物を名残多かるみねの朝霧  0447:1072  かへし したはれし名残をこそはなかめつれ立帰りにし嶺の朝きり  0448:0261  ときはの里にて初秋月といふことを人々よみけるに 秋立と思ふに空もたゝならてわれて光を分む三日月  0449:1167  松の絶まよりわつかに月のかけろひてみえけるをみて かけうすみ松のたえまをもりきつゝ心ほそくや三日月の空  0450:1170  入日かけかくれけるまゝに月の窓にさし入けれは さしきつる窓の入日をあらためて光をかふる夕月夜かな  0451:0389  久月を待といふことを 出なから雲にかくるゝ月かけをかさねてまつや二むらの山  452:0390  雲間に月を待といふことを 秋の月いさよふ山のはのみかは雲の絶まにまたれやはせぬ  0453:0324  閑に月を待といふことを 月ならてさし入かけもなきまゝにくるゝ嬉しき秋の山さと  0454:0335  八月十五夜 山のはを出る宵よりしるき哉こよひしらする秋のよの月  0455:0336 かそへねとこよひの月のけしきにて秋の半を空にしる哉  0456:0337 天川名になかれたるかひありて今宵の月はことにすみけり  0457:0338 さやかなるかけにてしるし秋の月とよにあまれる五日也けり  0458:0339 打つけに又こむ秋のこよひまて月故をしくなる命かな  0459:0340 秋はたゝこよひ一夜の名也けりをなし雲ゐに月はすめとも  ---- 上二十九  0460:0341 思ひせぬ十五のとしも有物をこよひの月のかゝらましかは  0461:0342  くもれる十五夜を 月みれはかけなく雲につゝまれて今夜ならすは闇にみえまし  0462:0334  終夜月をみる 誰きなむ月の光に誘れてと思によはの明にける哉  0463:0405  霧月を隔つといふことを 立田山月すむみねのかひそなきふもとに霧の晴ぬかきりは  0464:0330  名所の月といふことを 清見かた沖の岩こすしら波に光をかはす秋のよの月  0465:0331 なへてなき所の名をや惜らむ明石は分て月のさやけき  0466:0388  月瀧をてらすといふことを 雲消るなちの高ねに月たけて光をぬける瀧のしらいと  0467:0329  月池の氷に似りといふことを 水なくて氷そしたるかつまたの池あらたむる秋のよの月  0468:0326  池上の月といふことを みさひゐぬ池の面のきよけれは宿れる月もめやすかりけり  0469:0327  同心を遍昭寺にて人々よみけるに 宿しもつ月の光のおほさはゝいかにいつこもひろ沢の池  0470:0328 池にすむ月にかゝれる浮雲は払ひのこせるみさひ也けり  0471:0325  海辺月 清見かた月すむよはの浮くもはふしの高ねの烟也けり  0472:0332  海辺明月 難波かた月の光にうらさえて波の面に氷をそしく  0473:0396  月前草花 月の色を花にかさねて女郎花うはものしたに露をかけたる  0474:0397 宵のまの露にしほれてをみなへし有明の月のかけにたはるゝ  ---- 上三十  0475:0395  月前野花 花の色をかけにうつせは秋のよの月そ野もりのかゝみなりける  0476:0394  月照野花といふことを 月なくは暮れはやとへ帰らましのへには花のさかりなりとも  0477:0393  月前萩 月すむと萩うへさらむやとならは哀すくなき秋にやあらまし  0478:0398  月前女郎花 庭さゆる月也けりなをみなへし霜にあひぬる花とみたれは  0479:0391  月前薄 をしむよの月にならひて有明のいらぬをまねく花すゝき哉  0480:0392 花すゝき月の光にまかはましふかきますをの色にそめすは  0481:0404  月前紅葉 木のまもる有明の月のさやけきに紅葉をそへて詠つる哉  0482:0403  月前鹿 たくひなき心ちこそすれ秋のよの月すむ嶺の棹鹿のこゑ  0483:0399  月前虫 月のすむあさちにすたく蛬露のをくにや秋をしるらむ  0484:0400 露なからこほさてをらむ月影に小萩か枝の松虫のこゑ  0485:0402  田家月 夕露の玉しく小田の稲莚かへすほすゑに月そ宿れる  0486:0995  題しらす わつらはて月にはよるも通ひけり隣へつたふあせの細道  0487:1168  松の木のまよりわつかに月のかけろひけるをみて月をいたゝき  て道を行といふことを 汲てこそ心すむらめ賎の女かいたゝく水にやとる月影  0488:0419  旅宿の月を思ふといふことを 月は猶よな/\ことにやとるへし我むすひ置草の庵に  0489:0423  旅宿の月といへるこゝろをよめる 哀しる人みたらはと思ふ哉旅ねの床にやとる月かけ  0490:0424 月やとるをなしうきねの波にしも袖しほるへき契有けり  0491:0425 都にて月を哀と思ひしは数より外のすさひ也けり  ---- 上三十一  0492:0333  月前に遠くのそむといふことを 隈もなき月の光に誘はれて幾雲ゐまて行心そも  0493:0420  月前に友に逢ふといふことを 嬉しきは君にあふへき契ありて月に心の誘はれにけり  0494:0742  遙なる所にこもりて都なりける人のもとへ月のころつかはしける 月のみやうはの空なるかたみにて思ひもいてはこゝろ通はむ  0495:0415  人々住よしにまいりて月を翫けるに 片そきの行あはぬまよりもる月やさして御袖の霜にをくらむ  0496:0416 波にやとる月を汀にゆりよせて鏡にかくる住よしのきし  0497:0413  春日にまいりたりけるにつねよりも月あかく哀なりけれは ふりさけし人の心そしられけるこよひみかさの山を詠めて  0498:0414  月寺のほとりにあきらかなり 昼とみる月にあくるをしらましや時つく鐘の音なかりせは  0499:0406  月前に古をおもふ いにしへを何につけてか思ひ出む月さへかはる世ならましかは  0500:0407  月によせて思ひをのへけるに 世中のうきをもしらてすむ月のかけは我身の心ちこそすれ  0501:0408 よの中はくもりはてぬる月なれやさりともとみし影も待れす  0502:0409 いとふよも月すむ秋に成ぬれはなからへすはとをもふなる哉  0503:0410 さらぬたにうかれて物を思ふ身の心をさそふ秋のよの月  0504:0411 捨ていにしうきよに月のすまてあれなさらは心のとまらさらまし  0505:0412 あなかちに山にのみすむ心かな誰かは月のいるををしまぬ  ---- 上三十二  0506:0788  月前述懐 月をみていつれの年の秋まてか此よに我か契あるらむ  0507:1056  題しらす こむよにもかゝる月をしみるへくは命ををしむ人なからまし  0508:1057 此よにて詠なれぬる月なれは迷はむやみも照さゝらめや  0509:0311  月 秋のよの空にいつてふ名のみしてかけほのかなる夕月夜哉  0510:0312 天のはら月たけのほる雲路をは分ても風の吹はらはなむ  0511:0313 嬉しとや待つ人ことに思ふらむ山のはいつる秋のよの月  0512:0314 中々に心つくすもくるしきにくもらはいりね秋のよの月  0513:0315 いか斗うれしからまし秋のよの月すむそらに雲なかりせは  0514:0316 はりまかた灘のみ沖に漕いてゝあたり思はぬ月をなかめむ  0515:0317 月すみてなきたる海の面かな雲のなみさへ立もかゝらて  0516:0318 いさよはて出るは月のうれしくて入山のははつらきなりけり  0517:0319 水の面にやとる月さへ入ぬるはなみのそこにも山やあるらむ  0518:0320 したはるゝ心や行と山のはにしはしないりそ秋のよの月  0519:0321 あくるまて宵より空に雲なくて又こそかゝる月みさりけれ  0520:0322 あさち原葉すゑの露の玉ことに光つらぬる秋のよの月  0521:0323 秋のよの月を雪かと詠れはつゆも霰のこゝちこそすれ  0522:0343  月の歌あまたよみけるに 入ぬとや東に人はをしむらむ都にいつる山のはの月  0523:0344 待出てくまなき宵の月みれは雲そ心にまつかゝりける  0524:0345 秋風やあまつ雲井をはらふらむ更行まゝに月のさやけき  0525:0346 いつくとて哀ならすはなけれともあれたるやとそ月はさひしき  0526:0347 蓬分てあれたるやとの月みれはむかし住けむ人そこひしき  ---- 上三十三  0527:0348 身にしみて哀しらする風よりも月にそ秋の色はみえける  0528:0349 むしのねもかれ行のへの草の原に哀をそへてすめる月かけ  0529:0350 人もみぬよしなき山の末まてにすむらむ月のかけをこそ思へ  0530:0351 このまもる有明の月を詠れはさひしさそふる嶺の松風  0531:0352 いかにせむかけをは袖にやとせとも心のすめは月のくもるを  0532:0353 悔くもしつのふせやとをとしめて月のもるをもしらて過ける  0533:0354 あれわたる草の庵にもる月を袖にうつしてなかめつる哉  0534:0355 月をみて心うかれしいにしへの秋にもさらにめくりあひぬる  0535:0356 何こともかはりのみ行よの中にをなしかけにてすめる月かな  0536:0357 よもすから月こそ袖にやとりけれむかしの秋を思ひいつれは  0537:0358 なかむれは外のかけこそゆかしけれかはらしものを秋のよの月  0538:0359 行ゑなく月に心のすみ/\てはてはいかにかならむとすらむ  0539:0360 月かけのかたふく山をなかめつゝをしむしるしや有明の空  0540:0361 詠るもまことしからぬ心ちしてよにあまりたる月の影哉  0541:0362 行末の月をはしらす過きつる秋またかゝる影はなかりき  0542:0363 まことゝも誰か思はむひとりみて後に今宵の月をかたらは  0543:0364 月のため昼と思ふかかひなきにしはしくもりて夜をしらせよ  0544:0365 天のはら朝日山より出れはや月の光の昼にまかへる  0545:0366 有明の月のころにし成ぬれは秋は夜なかき心ちこそすれ  0546:0367 中々にとき/\雲のかゝるこそ月をもてなすかきり也けれ  0547:0368 雲はるゝ嵐の音は松にあれや月もみとりの色にはへつゝ  0548:0369 さためなく鳥やなくらむ秋のよは月の光ををもひまかへて  ---- 上三十四  0549:0370 誰もみなことはりとこそ定むらめ昼をあらそふ秋のよの月  0550:0371 かけさえてまことに月のあかきには心も空にうかれてそすむ  0551:0372 くまもなき月の面に飛かりのかけを雲かと思ひけるかな  0552:0373 詠れはいなや心のくるしきにいたくなすみそ秋のよの月  0553:0374 雲もみゆ風もふくれはあらくなるのとかなりつる月のひかりを  0554:0375 もろともにかけをならふる人もあれや月のもりくるさゝの庵に  0555:0376 中々にくもるとみえてはるゝよの月は光のそふここちする  0556:0377 うき雲の月の面にかゝれともはやく過るはうれしかりけり  0557:0378 過やらて月ちかく行浮雲のたゝよふみれはわひしかりけり  0558:0379 いとへともさすかに雲のうちちりて月のあたりをはなれさりけり  0559:0380 雲はらふあらしに月のみかかれて光えてすむ秋の空かな  0560:0381 くまもなき月のひかりを詠れはまつ姨捨の山そ恋しき  0561:0382 月さゆるあかしのせとに風吹は氷のうへにたゝむしら波  0562:0383 天のはらをなし岩戸を出れとも光ことなる秋のよの月  0563:0384 かきりなく名残をしきは秋のよの月にともなふあけほのゝ空  0564:0982  題しらす みをよとむ天の川きし波かけて月をはみるやさくさみの神  0565:0983 光をはくもらぬ月そみかきけるいなはにかゝるあさひこの玉  0566:0959 あらし吹嶺のこのまを分きつる谷の清水にやとる月影  0567:0960 うつらふす うらつふす苅田のひつち思ひ出てほのかにてらすみか月のかけ  0568:0961 にこるへき岩井の水にあらねともくまはやとれる月やさはかむ  0569:0962 独りすむ庵に月のさしこすは何か山への友とならまし  0570:0963 たつねきてこととふ人もなき宿にこのまの月のかけそさし入  ---- 上三十五  0571:0964 柴の庵はすみうきこともあらましを友なふ月のかけなかりせは  0572:0965 かけきえては山の月はもりもこす谷は梢のゆきとみえつゝ  0573:0966 雲にたゝこよひの月をまかせてむ厭ふとてしも晴れぬものゆゑ  0574:0967 月をみる外もさこそはいとふらめ雲たゝこゝの空にたゝよへ  0575:0968 はれまなく雲こそ空にみちにけれ月みることは思ひたゝなむ  0576:0969 ぬるれとも雨もるやとのうれしきはいりこむ月を思ふなりけり  0577:1491  百首歌の中月十首 にせしまや月の光のさひかうらはあかしには似ぬかけそすみける  0578:1492 池水に底きよくすむ月かけはなみに氷をしきわたす哉  0579:1493 月をみてあかしのうらを出るふねはなみのよるとや思はさるらむ  0580:1494 はなれたるしらゝの浜の沖の石をくたかて洗ふ月のしらなみ  0581:1495 思ひとけはちさとのかけも数ならすいたらぬくまも月はあらせし  0582:1496 大かたの秋をは月につゝませて吹ほころはす風の音かな  0583:1497 何ことか此よにへたる思出をとへかし人に月ををしへむ  0584:1498 思ひしるをよにはくまなきかけならす我めにくもる月の光は  0585:1499 うきことも思ひとをさしをしかへし月のすみける久方の空  0586:1500 月のよやともとをなりていつくにも人しらさらむ栖をしへよ  0587:0385  九月十三夜 こよひはと所えかほにすむ月の光もてなすきくの白露  0588:0386 雲消し秋のなかはの空よりも月はこよひそ名にをへりける  0589:0387  後九月つきをもてあそふといふことを 月みれは秋くはゝれる年はまたあかぬ心もそふにそ有ける  0590:0449  独聞擣衣 ひとりねのよさむになるにかさねはや誰ためにうつ衣なるらむ  ---- 上三十六  0591:0450  隔里擣衣 さよ衣いつこのさとにうつならむ遠く聞ゆるつちの音哉  0592:0476  菊 いく秋に我あひぬらむ長月のこゝぬかにつむ八重の白菊  0593:0477 秋ふかみならふ花なき菊なれは所を霜のをけとこそ思へ  0594:0478  月前菊 ませなくは何をしるしに思はまし月もまかよふしら菊の花  0595:0475  京極太政大臣中納言と申しけるをり菊ををひたゝしきほとにしたてゝ  鳥羽院にまいらせ給たりける鳥羽の南殿のひかしをもての  つほに所なきほとにうへさせ給ひけり公重少将人々すすめて菊  もてなさせけるにくはゝるへきよしあれは 君か住やとのつほには菊そかさる仙の宮といふへかるらむ  0596:1095  高野より出たりけると覚堅阿闍梨きかぬさまなりけれは菊  をつかはすとて 汲てなと心かよはゝとはさらむ出たるものを菊の下水  0597:1096  かへし 谷ふかく住かと思ひてとはぬまにうらみをむすふきくの下水  0598:0481  題しらす いつよはるもみちの色は染へきと時雨にくもる空にとはゝや  0599:0482  紅葉未遍といふことを いとゝ山しくれに色を染させてかつ/\をれる錦也けり  0600:0483  山家紅葉 染めてけりもみちのいろのくれなゐをしくるとみえしみ山へのさと  0601:0489  霧中紅葉 錦はる秋の梢をみせぬかな隔つる霧のやとをつくりて  0602:0487  紅葉色深といふことを 限あれはいかゝは色もまさるへきをあかすしくるゝ小倉山哉  0603:0488 もみちはのちらて時雨の日数へはいか斗なる色かあらまし 【斗:はかり】  0604:0490  賎かりける家に蔦の紅葉面白かりけるをみて  ---- 上三十七 思はすによしある賎のすみか哉蔦のもみちを軒にはゝせて  0605:0486  寂蓮高野に詣てふかき山の紅葉といふことをよみける さま/\に錦ありけるみ山哉花みし嶺を時雨そめつゝ  0606:1457  題しらす 秋の色は風そのもせにしきりたす時雨は音を袂にそきく  0607:1458 時雨初る花その山に秋くれてにしきの色もあらたむる哉  0608:0494  秋の末に法輪寺にこもりてよめる 大井河ゐせきによとむ水の色に秋ふかくなるほとそしらるゝ  0609:0495 小くら山ふもとに秋の色はあれや梢の綿風にたゝれて  0610:0496 我ものと秋の梢を思ふかな小倉の里に家ゐせしより  0611:0497 山さとは秋の末にそ思ひしる悲しかりけりこからしの風  0612:0498 暮果る秋のかたみにしはしみむ紅葉ちらすなこからしの風  0613:0499 秋くるゝ月なみわかぬ山賎の心うらやむ今日の夕暮  0614:0500  終夜秋ををしむ をしめとも鐘の音さへかはる哉霜にや露の結ひかふらむ  0615:1023  題しらす 錦をはいくのへこゆるからひつにおさめて秋は行にか有らむ  0616:1061  秋の末に寂然高野にまいりてくれの秋によせて  おもひをのへけるに なれきにし都もうとく成果て悲しさ添る秋の暮哉  ---- 上三十八  Subtitle  冬歌  0617:0501  長楽寺にて夜紅葉を思ふといふことを人々よみけるに よもすからをしけなく吹嵐かなわさと時雨の染る紅葉を  0618:0514  時雨の歌よみけるに 東屋のあまりにもふる時雨哉誰かはしらぬ神無月とは  0619:0512  山家時雨 宿かこふはゝその柴の色をさへしたひて染る初時雨哉  0620:0513  閑中時雨といふことを おのつから音する人もなかりけり山めくりする時雨ならては  0621:0503  題しらす ねさめする人の心をわひしめてしくるゝ音は悲しかりけり  0622:0509  落葉 あらしはく庭の落はのをしき哉まことのちりに成ぬと思へは  0623:0507  暁落葉 時雨かとねさめのとこに聞ゆるはあらしにたへぬこのは也けり  0624:0510  月前落葉 山颪の月に木葉を吹かけて光にまかふ影をみるかな  0625:0511  瀧上落葉 木枯に峯の紅葉やたくふらむむらこにみゆる瀧の白いと  0626:0508  水上落葉 立田姫染し梢のちるをりは紅あらふ山川の水  0627:0515  落葉あしろにとゝまる 紅葉よるあしろのぬのゝ色そめてひをくるゝとはみゆる也けり  0628:0493  草花野路落葉 紅葉ちる野はらを分て行人は花ならぬまて錦きるへし  0629:0505  山家落葉 道もなし宿は木葉に埋れぬまたきせさする冬籠かな  0630:0506 木葉ちれは月に心そあくかるゝみ山かくれにすまむと思ふに  0631:0502  題しらす 神無月木葉の落るたひことに心うかるゝみ山へのさと  0632:0521  冬のうたよみけるに 難波江の入江の芦に霜さえて浦風寒きあさほらけ哉  ---- 上三十九  0633:0522 玉かけし花のかつらもをとろへて霜をいたゝく女郎花かな  0634:0525  水邊寒草 霜にあひて色あらたむる芦のほの淋くみゆる難波江のうら  0635:0518  枯野の草をよめる 分かねし袖に露をはとめ置て霜に朽ぬるまのゝの萩原  0636:0519 霜かつく枯のゝ草は淋しきにいつくは人の心とむらむ  0637:0520 霜かれてもろくくたくる荻のはをあらく吹なる風の色哉  0638:0516  山家枯草といふことを覚雅僧都の坊にて人々よみけるに かきこめしすそのゝ薄霜枯て淋しさまさる柴の庵哉  0639:0517  野の渡りの枯たる草といふことを双林寺にてよみけるに さま/\に花咲たりとみしのへのをなし色にも霜枯にけり  0640:0567  氷留山水 岩ませく木葉わけこし山水を露もらさぬは氷也けり  0641:0568  瀧上氷 水上に水や氷をむすふらむくるともみえぬ瀧の白糸  0642:0569  氷筏をとつといふことを 氷わる筏のさほのたゆるれはもちやこさましほつの山越  0643:0584  世をのかれてくらまのをくに侍りけるにかけひの氷て水まて  こさりけるに春になるまてはかく侍るなりと申けるを聞て  よめる わりなしやこほるかけひの水故に思ひ捨てし春の待るゝ  0644:0561  千鳥 あはちかた磯わのちとり声しけしせとの塩風さえまさるよは  0645:0562 淡路潟せとの汐ひの夕くれにすまよりかよふ千鳥なく也  0646:0563 さゆれとも心安くそ聞あかす河瀬のちとり友くしてけり  0647:0564 霜さえて汀ふけ行浦風を思ひしりけになく千鳥哉  0648:0565 やせわたる湊の風に月更て汐ひる方にちとり鳴なり  ---- 上四十  0649:0566  題しらす 千鳥なくゑ嶋のうらにすむ月を波にうつしてみる今宵哉  0650:0530  月かれたる草をてらす 花にをく露にやとりし影よりもかれのゝ月は哀なりけり  0651:0531 氷しくぬまのあし原風さえて月も光そさひしかりける  0652:0532  しつかなるよの冬月 霜さゆる庭の木葉をふみ分て月はみるやととふ人もかな  0653:0533  庭上冬月といふことを さゆとみえて冬深くなる月影は水なき庭に氷をそしく  0654:0528  山家冬月 冬枯のすさましけなる山さとに月のすむこそ哀也けれ  0655:0529 月出る嶺の木葉もちりはてゝ麓のさとは嬉しかるらむ  0656:0557  舟中霰 せと渡るたなゝしをふね心せよあられみたるゝしまきよこきる  0657:0558  深山霰 杣人のまきのかりやの下ふしに音する物はあられ也けり  0658:0559  桜木にあられのたはしるをみて たゝはをちて枝をつたへる霰かなつほめる花のちる心ちして  0659:0977  題しらす 音もせて岩またはしる霰こそ蓬の宿の友に成けれ  0660:0978 あられにそ物めかしくは聞えける枯たるならの柴の落はは  0661:0523  冬の歌よみける中に 山さくら初雪ふれは咲にけりよしのはさとに冬こもれとも  0662:0580  題しらす 山桜をもひよそへて詠れは木ことの花は雪まさりけり  0663:0537  夜初雪 月出る軒にもあらぬ山のはのしらむもしるしよはの白雪  0664:0538  庭雪似月 木間もる月のかけともみゆる哉はたらにふれる庭の白雪  0665:0540  枯野に雪のふりたるを  ---- 上四十一 かれはつるかやかうはゝに降雪はさらにお花の心地こそすれ  0666:0543  雪道を埋む 降雪にしをりし柴も埋れて思はぬ山に冬籠する  0667:0548  雪埋竹といふことを 雪埋むそのゝ呉竹折ふしてねくら求るむら雀哉  0668:0581  仁和寺の御室にて山家閑居見雪といふことをよませ給  けるに 降つもる雪を友にて春まては日を送るへきみ山へのさと  0669:0583  山居雪といふことを 年の内はとふ人更にあらしかし雪も山路も深き住家を  0670:0545  雪朝待人といふことを 我やとに庭より外の道もかなとひこむ人の跡つけてみむ  00671:0547  雪朝会友といふことを 跡とむる駒の行ゑはさもあらはあれ嬉く君に行も逢ぬる  0672:0539  雪の朝霊山と申所にて眺望を人々よみけるに たけのほる朝日の影のさすまゝに都の雪はきえみ消すみ  0673:0550  社頭雪 玉かきは朱も緑も埋れて雪をもしろき松尾の山  0674:0549  加茂の臨時の祭かへり立の御神楽土御門内裏にて侍  りけるに竹のつほに雪のふりたりけるをみて うらかへすをみの衣とみゆる哉竹のうらはにふれる白雪  0675:0551  雪のうたともよみけるに 何となくくるゝ雫の音まても山へは雪そ哀なりける  0676:0552 雪降は野ちも山ちも埋れて遠近しらぬ旅のそら哉  0677:0553 あをね山苔のむしろの上にして雪はしとねの心地社すれ 【社:こそ】  ---- 上四十二  0678:0554 卯花の心ち社すれ山子さとの垣ねの柴をうつむ白雪 【社:こそ】  0679:0555 折ならぬめくりの垣の卯花をうれしく雪の咲せつる哉  0680:0556 とへな君夕くれになる庭の雪を跡なきよりは哀ならまし  0681:0541 あらち山さかしく下る谷もなくかしきの道をつくるしら雪  0682:0542 たゆみつゝそりのはやをもつけなくに積りにけりな越の白雪  0683:1448  題しらす 緑なる松にかさなる白雪は柳のきぬを山にをほへる  0684:1449 盛ならぬ木もなく花の咲にけり思へは雪をわくる山みち  0685:1450 波とみゆる雪を分てそこきわたるきそのかけ橋底もみえねは  0686:  百首歌中雪十首 しからきの杣のをほちはとゝめてよ初雪降ぬむこの山人  0687:1502 急すは雪に我身やとゝめられて山への里に春をまたまし  0688:1503 哀しりて誰か分こむ山さとの雪降埋む庭の夕くれ  0689:1504 湊川とまに雪ふく友ふねはむやひつゝ社よをあかしけれ 【社:こそ】  0690:1505 いかたしの浪のしつむとみえつるは雪をつみつゝ下すなりけり  0691:1506 たまりをる梢の雪の春ならは山さといかにもてなされまし  0692:1507 大原はせれうを雪の道にあけてよもには人も通はさりけり  0693:1508 晴やらて二むら山に立雲はひらのふゝきの名残也けり  0694:1509 雪しのく庵のつまをさしそへて跡とめてこむ人をとゝめむ  0695:1510 悔しくも雪のみ山へ分いらて麓にのみもとしをつみける  0696:1172  寂然入道大原にすみけるにつかはしける 大原はひらの高ねの近けれは雪ふるほとを思ひこそやれ  0697:1173  かへし 思へたゝ都にてたに袖さえしひらの高ねの雪のけしきは  ---- 上四十三  0698:0544  秋の頃高野へまいるへきよしたのめてまいらさりける人のもと  へ雪ふりてのち申つかはしける 雪深く埋てけりな君くやと紅葉のにしきしきし山路を  0699:0546  雪に庵うつもれてせむかたなく面白かりけり今もきたらは  とよみけむことを思ひ出てみけるほとに鹿の分て通りけるをみて 人こはと思ひて雪をみる程にしか跡つくることも有けり  0700:0570  冬歌十首よみけるに 花もかれもみちもちらぬ山さとは淋しさを又とふ人もかな  0701:0571 ひとりすむ片山影の友なれやあらしにはるゝ冬のよの月  0702:0572 津の国の芦の丸やの淋しさは冬こそわきてとふへかりけれ  0703:0573 さゆる夜はよその空にそをしもなく氷にけりなこやの池水  0704:0574 よもすから嵐の山に風さえて大井のよとに氷をそしく  0705:0575 さえ渡る浦風いかに寒からむちとりむれゐるゆふさきの浦  0706:0576 山さとは時雨しころの淋しきにあられの音は漸まさりける  0707:0577 風さえてよすれはやかて氷りつゝかへる波なきしかの唐崎  0708:0578 よしの山麓にふらぬ雪ならは花かとみてや尋いらまし  0709:0579 宿ことに淋しからしとはけむへし煙こめたる小野の山里  0710:0534  鷹狩 あはせたる木ゐのはしたかをきとらし犬かひ人の声しきるなり  0711:0535  雪中鷹狩 かきくらす雪にきゝすはみえねとも羽音に鈴をたくへてそやる  0712:0536 降雪にと立もみえす埋れてとり所なきみかりのゝ原  0713:0560  月前炭竃といへることを 限あらむ雲こそあらめ炭かまの烟に月にすゝけぬる哉  ---- 上四十四  0714:0582  山さとに冬深といふことを とふ人も初雪を社分こしか道とちてけりみ山へのさと 【社:こそ】  0715:0526  山さとの冬といふことを人々よみけるに 玉まきし垣ねのまくす霜かれて淋しくみゆる冬の山里  0716:0524  冬の歌よみける中に 淋しさにたへたる人の又もあれな庵ならへむ冬の山さと  0717:0979  題しらす 柴かこふ庵のうちはたひたちてすとをる風もとまらさりけり  0718:0980 谷風は戸を吹あけている物をなにと嵐の窓たゝくらむ  0719:0998 身にしみし荻の音にはかはれとも柴吹風も哀なりけり  0720:0586  山家歳暮 あたらしき柴のあみとをたちかへて年の明るを待わたる哉  0721:0587  東山にて人々としのくれに思ひをのへけるに 年くれしそのいとなみは忘られてあらぬさまなる急をそする  0722:0588  年のくれにあかたより都なる人のもとへ申つかはしける をしなへて同し月日の過行は都もかくや年はくれぬる  0723:0589 山さとに家ゐをせすはみましやは紅ふかき秋のこすゑを  0724:0590  歳暮に人のもとへつかはしける をのつからいはぬをしたふ人やあるとやすらふほとに年の暮ぬる  0725:0591  つねなきことをよせて いつか我昔の人といはるへきかさなる年を送りむかへて  ---- 上四十五  Subtitle  離別歌  0726:1062  あひしりたりける人のみちのくにへまかりけるに別の歌よむとて 君いなは月待とても詠やらむあつまのかたの夕くれの空  0727:1102  とし頃申なれたりける人にとをく修行するよし申て罷たりける  名残をほくて立けるに紅葉のしたりけるをみせまほしくて侍つる  かひなくいかにと申けれは木の本に立よりてよみける 心をは深きもみちの色にそめて別て行やちるに成らむ  0728:1107  遠く修行に思ひ立侍りけるに遠行別といふことを人々まて  きてよみ侍しに 程ふれはをなし都のうちたにもをほつかなさはとはまほしきに  0729:1108  年ひさしくあひたのみたりける同行に放れてとをく修行し  てかへらすもやと思ひけるに何となく哀にてよみける さためなしいくとせ君になれ/\て別をけふは思ふなるらむ  0730:1158  遠く修行することありけるに芥院の前の斎宮にまいりたり  けるに人々別のうたつかふまつりけるに さりともと猶あふことを頼む哉しての山路をこえぬ別(は) 【芥:(サ/サ)「菩薩」抄物書き。六家本系テキストでは菩提院となっている】  0731:1159  同折つほの桜の散けるをみてかくなむをほえ侍と申ける 此春は君に別のをしき哉花の行ゑはおもひわすれて  0732:1160  かへしせよとうけたまはりて扇にかきてさしいてける 女房六角局 君かいなむかたみにすへき桜さへ名残あらせす風さそふ也  ---- 上四十六  Subtitle  羇旅歌  0733:0480  嵯峨に住ける頃となりの坊に申へきことありてまかりけるに  道もなく葎のしけりけれは 立よりて隣とふへき垣にそひて隙なくはへるやへ葎かな  0734:1139  しほ湯にまかりたりけるにくしたりける人九月晦日にさきへのほり  けれはつかはしける人にかはりて 秋は暮君は都へ帰りなは哀なるへき旅のそらかな  0735:1140  かへし             大宮の女房加賀 君をゝきて立出る空の露けさは秋さへくるゝ旅の悲しさ  0736:1141  しほ湯出て京へ帰りまうてきて古郷の花霜かれにける哀なり  けりいそき帰りし人のもとへ又かはりて 露をきし庭の小萩も枯にけりいつち都に秋とまるらむ  0737:1142  かへし                をなし人 したふ秋は露もとまらぬ都へとなとて急し舟出成らむ  0738:1058  八月つきの頃よふけて北白河へまかりけるよしある様なる家の  侍けるにことのをとのしけれは立とまりてきゝけり折哀に秋  風楽と申かくなりけり庭をみいれけれはあさちの露に  月のやとれるけしき哀也垣にそひたる荻の風身にしむらむ  とをほえて申入れてとをりけり 秋風のことに身にしむ今宵哉月さへすめる宿のけしきに  0739:1153  新院さぬきにをはしましけるに便に付て女房のもとより 水茎のかき流すへきかたそなき心のうちは汲てしらなむ  ---- 上四十七  0740:1154  かへし 程遠み通ふ心の行はかり猶かき流せ水茎の跡  0741:1155  又女房つかはしける いとゝしくうきに付ても頼む哉契し道のしるへたかふな  0742:1156 かゝりける涙にしつむ身のうさを君ならて又誰かうかへむ  0743:1157  かへし 頼むらむしるへもいさやひとつよの別にたにもまよふ心は  0744:1162  山さとにまかりて侍けるに竹の風の荻にまかひて聞えれは 竹の音も荻吹風のすくなきにくはへて聞はやさしかりけり  0745:1163  世をのかれてさかに住ける人のもとにまかりて後世のことをこたら  すつとむへきよし申て帰りけるに竹の柱をたてたりけるをみて よゝふとも竹の柱の一筋にたてたるふしはかはらさらなむ  0746:1164  題しらす 哀たゝ草の庵の淋きは風より外にとふ人そなき  0747:1165 哀なりより/\しらぬ野の末にかせきを友になるゝすみかは  0748:1069  海辺重旅宿といへることを 波ちかき磯の松かね枕にてうらかなしきは今宵のみかは  0749:0527  寒夜旅宿 旅ねする草の枕に霜さえて有明の月の影そまたるゝ  0750:1097  たひ(へ)まかりけるに入相をきゝて 思へたゝ暮ぬと聞しかねの音は都にてたに悲しき物を  0751:0417  旅(に)まかりけるにとまりて あかすのみ都にてみし影よりも旅こそ月は哀也けれ  0752:0418 みしまゝにすかたも影もかはらねは月そ都のかたみ也ける  0753:1111  そのかみ心さしつかうまつりけるならひに世をのかれてのちもか  もにまいりけるとしたかくなりて四国のかた修行しけるに  ---- 上四十八  又帰りまいらぬこともやとて仁和二年十月十日のよまい  りて幣まいらせけり内へもまいらぬことなれはたなうの社にとり  つきてまいらせ給へとて心さしけるに木間の月ほの/\と常より  も神さひ哀にをほえてよみける かしこまるしてに涙のかゝる哉又いつかはとをもふこゝに  0754:1456  題しらす ふしみ過ぬをかのやに猶とゝまらし日野まて行てこま心みむ  0755:1409  うちかはをくたりける船のかなつきと申ものをもてこいのくたる  をつきけるをみて 宇治川のはやせをちまふれふ船のかつきにちかふこにのむらまけ  0756:1410 こはへつとふぬまの入江のものしたは人つけをかぬふしにそ有ける  0757:1411 たねつくるつほ井の水のひく末にえふなあつまる落合のはた  0758:1412 しらなはにこあゆひかれてくたるせにもちまふけたるこめのしきあみ  0759:1413 みるもうきはうなはににくるいろくつをのからかさてもしたむもちあみ  0760:1414 秋風にすゝきつり船はしるめりうのひとはしの名残したひて  0761:1113  天王寺へまいりけるにかた野なと申渡り過てみはるかされたる  所の侍けるを問けれはあまの川と申をきゝて宿からむといひけ  むこと思ひ出されてよみける あくかれしあまのかはらと聞からにむかしの波の袖にかゝれる  0762:0767  天王寺にまいりけるに雨のふりけれは江口と申所に宿をかりけ  るにかさゝりけれは 世中をいとふまてこそかたからめかりの宿りを惜む君哉  0763:0768  かへし 家を出る人としきけはかりの宿に心とむなと思ふはかりそ  ---- 上四十九  0764:1094  天王寺へまいりたりけるに松に鷺の居たりけるを月の光に  みて 庭よりも鷺居る松の梢にそ雪は積れる夏のよの月  0765:0878  天王寺へまいりて亀井の水をみてよめる 浅からぬ契の程そくまれぬる亀井の水に影うつしつゝ  0766:0877  六波羅太政入道持經者千人あつめて津の国わたと申所にて  くやう侍けるやかてそのついてに万燈会しけり夜更るまゝに  灯の消けるををの/\ともしつきけるをみて 消ぬへき法の光のともしひをかゝくるわたのみさき也けり  0767:1152  あかしに人をまちて日数へにけるに 何となく都のかたと聞空はむつましくてそ詠められぬる  0768:1112  はりま書写へまいるとて野中の清水をみけること一むかしに  なりにける年へて後修行すとてとをりけるにおなしさ  まにてかはらさりけれは 昔みし野中の清水かはらねは我影をもや思ひ出らむ  0769:1114  四国のかたへ具してまかりたりける同行の都へ帰りけるに かへり行人の心を思ふにもはなれかたきは都なりけり  0770:1115  ひとりみおきて帰りまかりなむするこそ哀にいつか都へは  帰るへきなと申けれは 柴の庵のしはし都へかへらしと思はむたにも哀なるへし  0771:1116  たひのうたよみけるに 草枕たひなる袖にをく露を都の人や夢にみるらむ  0772:1117 聞えつる都へたつる山さへにはては霞にきえにけるかな  ---- 上五十  0773:1118 和田の原はるかに波を隔きて都に出し月をみるかな  0774:1119 わたの原波にも月はかくれけり都の山を何いとひけむ  0775:1422  さぬきの国へまかりてみの津と申津につきて月のあかくて  ひゝのてもかよはぬほとにとをくみえわたりけるにみつと  りのひゝのてにつきてとひわたりけるを しきわたす月の氷をうたかひてひゝのてまはる味のむら鳥  0776:1423 いかて我心の雲にちりすへきみるかひありて月を詠む  0777:1424 詠をりて月の影にそ夜をはみるすむもすまぬもさなりけりとは  0778:1425 雲はれて身に愁へなき人の身そさやかに月の影はみるへき  0779:1426 さのみやは袂に影を宿すへきよはし心に月ななかめそ  0780:1427 月にはちてさし出られぬ心哉詠る袖に影のやとれは  0781:1428 心をはみる人ことにくるしめて何かは月のとり所なる  0782:1429 露けさはうきみの袖のくせなるを月みるとかにをほせつる哉  0783:1430 詠きて月いかはかりしのはれむこのよし雲の外になりなは  0784:1431 いつか我此世の空を隔たらむ哀/\と月を思ひて  0785:1371  さぬきにまうてゝ松山と申所に院をはしましけむ御  御跡尋けれともかたもなかりけれは 松山の波に流てこし舟のやかて空しく成にける哉  0786:1372 まつ山のなみのけしきはかはらしをかたなく君は成ましにけり  0787:1373  しろみねと申所に御はかの侍りけるにまいりて よしや君昔の玉の床とてもかゝらむ後は何にかはせむ  0788:1374  おなし国に大師のをはしましける御あたりの山に庵むす  ---- 上五十一  ひて住けるに月いとあかくて海のかたくもりなくみえ侍けれは くもりなき山にて海の月みれは島そ氷の絶ま也ける  0789:1375  すみけるまゝに庵いとあはれに覚て 今よりはいとはし命あれは社かゝる住居の哀をもしれ 【社:こそ】  0790:1376  庵のまへに松のたてりけるをみて 久にへて我後のよをとへよ松跡したふへき人もなき身そ  0791:1377 こゝを又我住うくてうかれなは松はひとりにならむとすらむ  0792:1378  雪のふりけるに 松の下は雪ふる折の色なれやみな白妙にみゆる山路に  0793:1379 雪つみて木も分かす咲花なれはときはの松もみえぬ也けり  0794:1380 花とみる梢の雪に月さえてたとへむ方もなき心地する  0795:1381 まかふ色は梅とのみみて過行に雪の花には香そなかりける  0796:1382 折しもあれ嬉しく雪の埋む哉きこもりなむと思ふ山路を  0797:1383 中々に谷の細道うつめ雪ありとて人の通ふへきかは  0798:1384 谷の庵に玉の簾をかけましやすかるたるひの軒をとちすは  0799:1385  はなまいらせけるをりしもをしきにあられのふりかかりけれは しきみをくあかのをしきにふちなくは何に霰の玉とまらまし  0800:1386  大師のむまれさせ給ひたる所とてめくりしまはしてそのしるし  の松のたてりけるをみて 哀也をなし野山にたてる木のかゝるしるしの契有けり  0801:1387 岩にせくあか井の水のわりなきは心すめともやとる月かな  又ある本に コレラ後人ノカケル事凡例二云カコトシ  ---- 上五十二  0802:1388  まむたらしの行道ところへのほるはよの大事にて手を  たてたるやうなり大師の御経かきてうつませおはし  ましたる山の嶺なりはうのそとは一丈はかりなるたむつきて  たてられたりそれへ日ことにのほらせおはしまして行道しおは  しましけると申伝たりめくり行道すへきやうにたむも二  重につきまはされたりのほる程のあやうさことに大事なり  かまへてはひまはりつきて めくりあはむことの契そたのもしききひしき山の誓みるにも  0803:1389  やかてそれか上は大師の御師にあひまいらせさせをはしまし  たる嶺なりわかはいしさとその山をは申也その辺の人は  わかいしとそ申ならひたる山もしをはすてゝ申さす又ふての  山ともなつけたりとをくてみれはふてに似てまろ/\  と山の嶺のさきのとかりたるやうなるを申ならはしたる  なめり行道所よりかまへてかきつきのほりて嶺に  まいりたれは師にあはせおはしましたる所のしるしにたう  をたておはしましたりけりたうの石すゑはかりなくを  ほきなり高野の大たうはかりなりけるたうのあとゝ  みゆ苔はふかくうつみたれとも石をほきにしてあらはに  みゆふての山と申名につきて ふての山にかきのほりてもみつる哉苔の下なる岩のけしきを   善通寺の大師の御影にはそはにさしあけて大師の御   師かきくせられたりき大師の御手なともをはしましき   四の門のかく少々われてをほかたはたかはすして侍きすゑに   こそいかゝなりけむすらむとをほつかなくをほえ侍しか  0804:1390  備前国に小島と申島にわたりたりけるにあみと申  物をとる所はおの/\われ/\しめてなかきさほにふくろをつ  けてたてわたすなりそのさほのたてはしめをは一のさほとそ名  付たるなかにとしたかきあま人のたて初るなりたつるとて  申なることはきゝ侍しこそなみたこほれて申はかり  なく覚てよみける たて初るあみとる浦の初さほはつみの中にもすくれたる哉  0805:1391  ひゝしふかはと申方へまかりて四国のかたへ渡らむとしけるに  かせあしくてほとへけりしふかはのうらたと申所におさなきもの  とものあまた物をひろいけるをとひけれはつみと申もの  ひろふなりと申けるを聞て をりたちてうらたに拾ふあまのこはつみよりつみをならふ也けり  0806:1392  まなへと申島に京よりあき人とものくたりてやう/\のつみの物  ともあきなひて又しはくの島にわたりてあきなはむするよ  し申けるを聞て まなへよりしはくへかよふあき人はつみをかひにて渡るなりけり  0807:1393  くしにさしたる物をあきなひけるをなにそととひけれははま  くりをほして侍なりと申けるを聞て をなしくはかきをそさしてほしもすへきはまくりよりはなもたよりあり  0808:1394  うしまとのせとにあまのいていりてさたえと申ものをとりて  ---- 上五十四  船にいれ/\しけるをみて さたえすむせとの岩つほもとめ出ていそきしあまの気色なる哉  0809:1395  沖なるいはにつきてあまとものあはひとりけるところにて 岩のねにかたをもむきも波うきてあはひをかつくあまのむらきみ  0810:1396  題しらす こたいひくあみのかけなはよりめくりうきしわさあるしほさきのうら  0811:1397 霞しく波の初花をりかけてさくら鯛つる沖のあまふね  0812:1398 あま人のいそしく帰るひしきものは小にしはまくりからなしたゝみ  0813:1399 いそなつまむと思ひはしむるわかふのりみるめきはさひしきこゝろふと  0814:1086  国々めくりまはりて春帰りて吉野の方へまからむとしけるに人の  このほとはいつくにか跡とむへきと申けれは 花をみし昔の心あらためて吉野のさとに住むとそ思  0815:1120  西の国のかたへ修行してまかり侍とてみつのと申所にくしな  らひたる同行の侍けるにしたしきものゝ例ならぬこと侍とて  くせさりけれは 山城のみつのみくさにつなかれてこま物うけにみゆる旅哉  0816:1161  西国へ修行してまかりける折小嶋と申所に八幡のいはゝれ  給たりけるにこもりたりけり年へて又その社をみけるに松  とものふる木になりたりけるをみて 昔みし松は老木になりにけり我としへたる程もしられて  0817:0421  心さすことありてあきの一宮へ詣けるにたかとみのうらと申所  に風にふきとめられてほとへけりとまふきたる庵より月の  もるをみて  ---- 上五十五 波の音を心にかけてあかすかな苫もる月のかけを友にて  0818:0422  詣つきて月いとあかくて哀にをほえけれはよみける 諸ともに旅なる空に月も出てすめはやかけの哀なるらむ  0819:1468  つくしにはらかと申いをのつりをは十月一日にをろす也しはすにひき  あけて京へはのほせ侍るそのつりの縄はるかにとをくひきわたしてとをる  船のその縄にあたりぬるをはかこちかゝりてかうけかましく申てむつかしく侍る也その  心をよめる はらかつるおほわたさきのうけ縄に心かけつゝ過むとそをもふ  0820:1469 いせしまやいるゝつきてすまうなみにけことおほゆるいりとりのあま  0821:1470 いそなつみて波かけられて過にける鰐の住ける大磯の根を  0822:1444  りうもむにまいるとて せをはやみみやたき河を渡り行は心の底のすむ心地する  0823:1236  承和元年六月一日院熊野へまいらせ給ひけるついてに住吉に  御幸ありけり修行しめくりて二日の社に詣たりけるにすみの江あたらしく  したてたりけるをみて後三條院の御幸神も思出給ふらむと覚て  よめる 絶たりし君か御幸を待つけて神いかはかりうれしかるらむ  0824:1237  松のしつえをあらひけむ浪いにしへにかはらすやと覚て いにしへの松のしつえをあらひけむ波を心にかけてこそみれ  0825:1092  夏熊野へまいりけるに岩田と申所にすゝみて下向しける人に  つけて京へ同行に侍ける上人のもとへつかはしける 松かねの岩田の岸の夕すゝみ君かあれなとをもほゆるかな  0826:1093  かつらきを尋侍けるに折にもあらぬもみちのみえけるを何そと  問けれは正木なりと申をきゝて  ---- 上五十六 かつらきや正木の色は秋に似てよその梢のみとりなる哉  0827:0101  熊野へまいりけるにやかみの王子の花面白かりけれは社に書  付ける 待きつるやかみの桜咲にけりあらくをろすなみすの山風  0828:0867  那智にこもりて瀧に入堂し侍けるに此上に一二の瀧おはし  ますそれへまいるなりと申住僧の侍けるにくしてまいりけり花  や咲ぬらむと尋まほしかりける折ふしにてたよりある心ちして  分けまいりたり二の瀧のもとへまいりつきたり如意輪の瀧となむ  申と聞てをかみけれはまことにすこしうちかたふきたるやうに  なかれくたりてたうとくをほえけり花山院の御庵室の跡の侍ける  前に年ふりたる桜の木の侍けるをみて栖とすれはとよま  せ給ひけむことをもひ出られて 木のもとに住けむ跡をみつる哉那智の高ねの花を尋て  0829:1421  熊野へまいりけるになゝこしのみねの月をみてよみける 立のほる月のあたりに雲消て光重ぬるなゝこしの嶺  0830:1415  新宮より伊勢のかたへまかりけるにみきしまにふれのさたしけるうら  人のくろきかみはひとすちもなかりけるをよひよせて 年へたる浦のあま人ことゝはむ波をかつきて幾よ過にき  0831:1416 くろかみは過るとみえし白波をかつきはてたる身には知あま  0832:0931  みたけよりさうの岩やへまいりたりけるにもらぬ岩屋もとあり  けむをりおもひ出られて 露もらぬ岩やも袖はぬれけると聞すはいかにあやしからまし  0833:0932  をさゝのとまりと申所に露のしけかりけれは  ---- 上五十七 分きつるをさゝの露にそほちつゝほしそわつらふ墨染の袖  0834:1121  大みねのしむせむと申所にて月をみてよみける 深き山にすみける月をみさりせは思出もなき我身ならまし  0835:1122 嶺の上も同し月こそてらすらめ所からなる哀なるへし  0836:1123 月すめは谷にそ雲はしつむめる嶺吹はらふ風にしかれて  0837:1124  をはすての嶺と申所のみわたされて思ひなしにや月ことにみえけれは をは捨はしなのならねといつくにも月すむ嶺の名にこそ有けれ  0838:1125  こいけと申すくにて いかにして梢のひまをもとめえてこいけに今宵月のすむらむ  0839:1126  さゝのすくにて 庵さす草の枕に友なひてさゝの露にも宿る月かな  0840:1127  へいちと申すくにて月をみけるに梢の露の袂にかゝりけれは 梢なる月も哀を思ふへし光にくして露のこほるゝ  0841:1128  あつまやと申所にて時雨のゝち月をみて 神無月時雨はるれは東やの峰にそ月はむねとすみける  0842:1129 神無月谷にそ雲はしくるめる月すむ嶺は秋にかはらて  0843:1130  ふるやと申すくにて 神無月時雨ふるやにすむ月はくもらぬ影もたのまれぬ哉  0844:1131  平等院の名かゝれたるそとはに紅葉のちりかゝりけるをみて  花より外のとありけむ人そかしとあはれに覚てよみける 哀とも花みし嶺に名をとめて紅葉そけふはともに散ける  0845:1132  ちくさのたけにて 分て行色のみならす梢さへちくさのたけは心そみけり  ---- 上五十八  0846:1133  ありのと渡りと申所にて さゝふかみきりこすくきを朝立てなひきわつらふありのと渡り  0847:1134  行者かへりちこのとまりにつゝきたるすく也春の山伏はひやうふ  たてと申所をたひらかにすきむことをかたく思ひて行者ちこの  とまりにても思ひわつらふなるへし 屏風にや心を立て思ひけむ行者はかへりちこはとまりぬ  0848:1135  三重の瀧をかみけるにことにたうとく覚て三業のつみもすゝ  かるゝ心ちしてけれは 身につもることはの罪もあらはれて心すみぬるみかさねの瀧  0849:1136  てむ法輪のたけと申所にて釈迦の説法の座のいしと申所ををかみて こゝこそは法とかれたる所よと聞さとりをもえつるけふ哉  0850:1022  題しらす 近江路や野ちの旅人急かなむやすかはらとて遠からぬかは  0851:0743  世をのかれていせのかたへまかりけるにすゝか山にて すゝか山うきよをよそにふりすてゝいかになり行我身なるらむ  0852:1241  伊勢にまかりたりけるに太神宮にまいりてよみける 榊葉に心をかけむゆふしてゝ思へは神も仏なりけり  0853:1110  修行して伊勢にまかりたりけるに月の頃都思ひ出られ  てよみける 都にも旅なる月の影をこそをなし雲ゐの空にみるらめ  0854:1459  いせのいそのへちのにしきの嶋にいそわのもみちのちりけるを 浪にしく紅葉の色をあらふ故に錦の嶋といふにや有らむ  0855:1400  伊勢のたうしと申嶋にはこいしのしろのかきり侍浜にて  黒はひとつもましらすむかひてすかしまと申はくろかき  ---- 上五十九  り侍なり すかしまやたうしのこいしわけかへて黒白ませよ浦の浜かせ  0856:1401 さきしまのこいしの白をたかなみのたうしの浜に打寄てける  0857:1402 からすさきの浜のこいしと思ふ哉白もましらぬすかしまの黒  0858:1403 あはせはやさきをからすとこをうたはたふしすかしま黒白の浜  0859:1404  伊勢のふたみのうらにさるやうなるめのわらはとものあつまりてわさ  とのことゝをほしくはまくりをとりあつめけるをいふかひなきあま  人こそあらめうたてきことなりと申けれはかひあはせに  京よりひとの申させ給ひたれはえりつゝとるなりと申けるに 今そしるふたみのうらのはまくりをかひあはせとてをほふなりける  0860:1405  いらこへわたりたりけるにゐかひと申はまくりにあこやのむねと  侍るなりそれをとりたるからをたかくつみおきたりけるを  みて あこやとるゐかひのからをつみをきてたからの跡をみする也けり  0861:1406  沖のかたより風のあしきとてかつをと申いをつりける舟とも  のかへりけるをみて いらこさきにかつをつり舟ならひうきてはかちの浪にうかひてそよる  0862:1047  ふたつありけるたかのいらこわたりすると申けるかひとつのたかは  とゝまりて木のすゑにかゝりて侍と申けるを聞て すたかわたるいらこかさきをうたかひてなほきにかくる山帰かな  0863:1048 はしたかのすゝろかさてもふるさせてすへたる人のありかたのよや  0864:1103  するかの国くのゝ山寺にて月をみてよみける 涙のみかきくらさるゝ旅なれやさやかにみよと月はすめとも  0865:1460  みちのくにゝひらいつみにむかひてたわしのねと申山の侍にこときは  ---- 上六十  すくなきやうにさくらのかきりみえて花の咲たるをみてよめる 聞もせすたわしね山の桜花よしのゝ外にかゝるへしとは  0866:1461 をくに猶人みぬ花のちらぬあれや尋をいらむ山ほとゝきす  0867:0815  みちの国にまかりたりけるに野中に常よりもとをほしきつかのみえ  けるを人にとひけれは中将の御はかと申はこれかこと也と申  けれは中将とは誰かことそと又問けれは実方の御ことなりと  申けるいとかなしかりけりさらぬたに物哀におほえけるに霜  かれの薄ほの/\みえ渡りて後にかたらむ詞なきやうにをほえて 朽もせぬ其名はかりをとゝめ置て桔のゝ薄かたみにそみる  0868:1143  みちのくにへ修行してまかりけるに白川の関にとまりて所か  らにや常よりも月おもしろく哀にて能因か秋風そ吹と  申けむをりいつなりけむと思ひ出られて名残をほくおほえ  けれは関屋のはしらに書付ける 白川の関屋を月のもる影は人の心をとむるなりけり  0869:1144  さきにいりてしのふと申渡りあらぬよのことにをほえて  哀也都出し日数思ひつゝくれは霞とともにと侍ことの  あとたとるまてきにける心ひとつに思ひしられてよみける 都出てあふ坂超し折まては心かすめししら川の関  0870:1145  たけくまの松は昔になりたりけれとも跡をたにとてみに  まかりてよめる 枯れにける松なき宿のたけくまはみきと云てもかひなからまし  0871:0492  あつまへまかりけるにしのふのをくに侍ける社のもみちを  ---- 上六十一 ときはなる松の緑も神さひて紅葉そ秋はあけの玉垣  0872:1146  ふりたるたなはしをもみちのうつみたりける渡りにくゝてやすらは  れて人にたつねけれはをもはくのはしと申はこれなりと申けるを  聞て ふまゝうき紅葉の錦散しきて人も通はぬをもはくのはし   しのふの里よりをくに二日はかりいりてあり  0873:1147  下野の国にて柴の煙をみてよみける 都近き小野大原を思ひ出る柴の烟のあはれなる哉  0874:1148  名とり川をわたりけるにきしの紅葉のかけをみて 名とり川きしの紅葉のうつる影は同し錦を底にさへしく  0875:1149  十月十二日ひらいつみにまかりつきたりけるに雪ふり嵐はけしく  事外にあれたりけりいつしか衣川みまほしくてまかりむかひて  みけり河のきしにつきて衣川の城しまはしたることからやうかは  りてものをみる心ちしけり汀こほりてとり分さひけれは とりわきて心もしみてさえそ渡る衣川みにきたるけふしも  0876:0585  陸奥国にてとしのくれによめる 常よりも心ほそくそをもほゆる旅の空にて年の暮ぬる  0877:1150  又のとしの三月に出羽の国にこえてたきの山と申山寺に侍ける  桜の常よりも薄紅の色こき花にてなみたてりけるを寺の人々  もみけうしけれは たくひなき思ひいてはの桜かな薄紅の花のにほひは  0878:1151  おなしたひにて 風あらき柴のい庵は常よりもね覚そ物はかなしかりける  ---- 上六十二  0879:0100  修行しはへるに花をもしろかりける所にて 詠るに花の名たての身ならすはこの本にてや春をくらさむ  0880:1137  修行して遠くまかりけるをり人の思ひ隔たるやうなる事の侍けれは よしさらは幾へともなく山こえてやかても人に隔られなむ  0881:1098  あき遠く修行し侍けるほとにほとへける所より侍従大納言成道  のもとへつかしける あらし吹峰の木葉に友なひていつちうかるゝ心なるらむ  0882:1099  かへし 何となく落る木葉も吹風に散行かたはしられやはせぬ  0883:1087  みやたてと申けるはした物のとしたかくなりてさまかへなとして  ゆかりにつきてよしのに住侍けりをもひかけぬやうなれとも供養  をのへむれうにとてくた物を高野の御山へつかはしたりけるに  花と申くた物侍けるをみて申つかはしける をりひつに花のくた物つみてけりよしのゝ人のみやたてにして  0884:1088  かへし みやたて 心さし深くはこへるみやたてを悟りひらけむ花にたくへて  0885:0886  常よりも道たとらるるほとに雪ふかゝりけるころ高野へまいる  と聞て中宮大其のもとよりいつか都へはいつへきかゝる雪には  いかにと申たりけれは返ことに 雪分て深き山路にこもりなは年帰りてや君にあふへき  0886:1074  かへし 時忠卿 分て行山路の雪は深くともとく立帰れ年にたくへて  0887:0930  ことの外にあれさむかりける頃宮法印高野にこもらせ給ひ  ---- 上六十三  て此ほとの寒さはいかゝするとて小袖はせたりける又の朝申ける 今宵こそ哀みあつき心ちして嵐の音をよそに聞つれ  0888:1100  宮の法印高野にこもらせ給ておほろけにては出しと思ふに修  行せまほしきよしかたらせ給けり千日果てみたけにまいらせ  給ていひつかはしける あくかれし心を道のしるへにて雲に友なふ身とそ成りぬる  0889:1101  かへし 山のはに月すむましとしられにき心の空になるとみしより  0890:0761  待賢門院の中納言の局世をそむきてをくらのふもとに住  侍ける頃まかりたりけるにことからまことに優に哀なりけ  り風のけしきさへことにかなしかりけれはかきつけゝる 山おろす嵐の音のはけしきをいつならひける君か栖そ  0891:0762  哀なるすみかをとひにまかりたりけるに此うたをみて  かきつけゝる 同院兵衛局 うきよをは嵐の風にさそはれて家を出ぬる栖かとそみる  0892:0763  をくらをすてゝ高野のふもとにあまのと申山にすま  れけりをなし院の帥の局都の外の栖とひ申さてはいかゝ  とて分おはしたりけるありかたくなむかえるさにこかはへまいら  れけるに御山よりいてあひたりけるをしるへせよとありけれは  くし申て粉河へまいりたりけるかゝるついてはいまはあるまし  きことなり吹上みむといふことくせられたりける人々申  出て吹上へおはしけり道より大雨風ふきてけうなくなりにけり  さりとてはとて吹上に行つきたりけれともみ所なきやう  ---- 上六十四  にて社にこしかきすへて思ふにもにさりけり能因かなはし  ろ水にせきくたせとよみていひつたへられたる物をとおもひて  社にかきつけゝる あまくたる名を吹上の神ならは雲晴のきて光あらはせ  0893:0764 苗代にせきくたされし天川とむるも神の心なるへし   かく書たりけれはやかて西の風吹かはりてたちまちに雲はれて   うら/\と日なりにけりすゑの代なれと心さしいたりぬることには   しるしあらたなることを人々申つゝしむおこして吹上若浦おもふ   やうにみてかえられにけり。  0894:0765  待賢門院の女房堀川の局のもとよりいひをくられける 此よにてかたらひをかむ郭公しての山ちのしるへともなれ  0895:0766  かへし 時鳥な